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オーストリアの雪山にタレルの「skyspace Lech」を求めて -🇦🇹リンツ3ヶ月滞在記 -

オーストリア・リンツ美術工芸大学への3ヶ月交換留学(2023年4月から7月まで)について書いていく。留学先はリンツ美術工芸大学(University of Arts Linz)のInterface Culutres Departmentだ。

今日はレッヒ・アームベルグ編。

Lech(レッヒ)という町へ向かう

オーストリアについた週は思いがけずイースターホリデーで、学校も連休中ということで、急遽オーストリアの雪山を訪れることを計画した。目的地は、あるゲレンデの頂上付近に聳え立つジェームス・タレルの作品「skyspace Lech」だ。その地へと足を運ぶため、Lech(レッヒ)という町へバスで向かった。

リンツを発ち、バスでレッヒへ向かう途中、奥地へと進むにつれて周囲の景色は劇的に変化し、川の色はメロン味の飴のように透き通り、岩肌は藍色の鉄のような質感が静かに叫んでいるかのように見えた。草原はまるで私を無視するかのごとく、ただ広がっていた。
歳月の経過した地平が目に映り、不思議な情景に息を呑む。

歩いてジェームス・タレルの作品を見にいく

レッヒにたどり着いてみると、麓はスキー場で賑わい、レストランやお土産屋さんが立ち並び、音楽パーティーが開かれていた。作品への道のりが分からず、周囲をスキーやスノーボードで滑走する人々の間をスニーカーで登らざるを得なかった。
軽装でいくような場所ではなかったが、足は一歩進むごとに雪に埋もり、びしょ濡れになりながら静かな場所でひっそり佇む作品にたどり着いた。

疲労と期待が混じり合った体のリズムを感じながら、通路を進んで中に入ると自分の音が逆に反響して戻ってくる。そこには完全な別空間が存在し、充満する感覚に圧倒される。円形の空間で天井が楕円で切り抜かれており、空間の奥行きや広さは計り知れない。作品は天井が空を切り取っているだけでありながら、それが本物の空であることに気づくまでに30分もの時間が必要だった。

しばらくするとウェアーとブーツを履いた家族づれが空間の中に入ってきた。そのお父さんは親切に帰り方を教えてくれ、私がきているジャケットを褒めてくれたが、その瞬間、自分の軽装な姿に改めて気づいてじわじわと笑ってしまう。そして、気が付くとびしょ濡れのスニーカーから次第に、身体全体が冷え始める。日が落ちると帰ることすら困難になるから早いところ帰らなくては。

日の沈む前に急いで下山

急いで山を下り、日が沈むにつれて街の雰囲気も変わってくる。麓の音楽パーティーでは皆がお酒を飲みながら踊っており、大自然と都市的な情景が同時に展開される。それは人間的自然だ。
夕ご飯も食べずにただ変わり続ける空の色と、夜の雰囲気に変わっていく街の様子を眺めながらバスを待つ。
疲れ果てた身体を引きずり、日付をまたぐ列車に乗ってモーツァルトの街、ザルツブルクへと向かうのであった。


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