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音楽系サブスクリプションが生んだ輪廻と苦行にさようなら

すごいですよ、月わずか1000円足らずのお金を払うだけで膨大な音楽のアーカイブにアクセスできるっていうのは。

AppleMusicとかSpotifyとかの音楽系サブスクリプションという革命的なサービスの登場には目をランランと輝かせたものだったけど、結果からいうと私にはダメだった。


私はもともと気に入った曲だけを繰り返し聴くタイプで、観測範囲も広くはなく、音楽好きの度合いでいえば超ライトなほうに属していたし、今もそう。

DJやってたときが一番聴いてたし深堀りもできてたな。やっぱりアウトプットの目的があると吸収の度合いが違うから、あの頃聴いてた曲のことはよく覚えている。

いずれにせよ以前は手に入れた音楽をちゃんと味わって、身の丈にあった楽しみ方ができてたんだなと感じている。

今みたいに「曲が聴けてない」って悩むことなんて、なかったのだから。


今は大変よ。アプリの通知やSNSで新譜情報がガンガン来るし、それらに追いつこうとして聴けば聴くほどじっくり聴くことができなくなって、数日後にはどんなアルバムだったか忘れている。自分の中に何も残っていない。

ジッとしているのが苦手で落ち着きがなく、シングルタスク型で「ながら聴き」ができない自分の性格も大いに影響している気がする。音楽聴きながら本を読むということすらできませんからね私。

「積ん読」ならぬ「積ん聴」が、こういう自分の性格を考慮しても消化できそうな量ならいいんだけど、日々更新されていく音楽の巨人は、あっという間にそのキャパをぶっ壊していく。

積ん聴を片付ける前に他の新譜が出て……ってのが続くと、「アレまだ聴けてないなあ」と喉奥に魚の骨がつっかえたまんま日々を過ごす羽目になる。

それが苦しくて、自分の性格に抵抗して音楽に集中しようと無理をする。そしたらもっと苦しくなる。

これはもう苦行……しかもその苦行の果てに悟りの境地が待つわけでもない、シンプルに苦行ですよ。


そういえば最近、そのへんの飲食店に行くと流れている曲が重複していることが多いなと気づく。こだわりがない店はアルゴリズムで決められたプレイリストの中から選んでるんだろうけど、飲食店のBGMっぽいプレイリストとなると選択肢は実際そんなに広くないので、画一的になってしまう。

それがイヤで「音楽を消費的に利用しおってからに」とかってディスってたけど、残念ながら自分も同じようなもんだった。

苦行の輪廻に飲み込まれた私は、音楽をぜんぜん楽しめず消化もできない、単に消費してるだけの存在になっちゃった。


このままではアカンと輪廻から解脱するべくアレコレ考えた結果、私の場合、やっぱりちゃんと聴くためにはフィジカル(CDとかレコードとか)で買ったほうがいいという結論に至った。

買ったら繰り返し聴く。んで歌詞カード見て、対訳とかライナーノーツ見て、関連する雑誌記事も見て。それでようやく身に沁みてくる。「あの作品はこうだった」って、5年後10年後でも自分の言葉で語れるはず。

1000曲を聴いてほとんど覚えてないよりも、10曲を聴いてちゃんと自分に染み込んでるほうがいい。いやもちろん1000曲聴いてそれらを完全に消化できるのがベストなんだけど、自分にはそんなポテンシャルは無かった。

サブスク使い始めて3年以上もこの悩みから抜け出せないままズルズルと来ちゃったのは、多分だけど詳しくなりたかったんだろうな、音楽に。

というわけで、私は音楽を表面だけ消費するのをやめるために音楽を所有するという、ちょっとアンビバレントな方針で行くことにした。その姿勢をもって音楽に敬意を払っているってことにしてくれ〜と誰にともなく懇願しているような気がするけど、しばらくすればそんな自分を赦すこともできるだろう。

まあ、こんなん書いときながらサブスクを解約するってわけではないんだけどね。便利は便利なので。ただ、私がメインで使っていくにはあまりに上等すぎて、使いこなすことはできなかった。それだけのお話です。

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