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連絡がこない理由

試験期間中、野呂亮君がサヤちゃんのことを考えなかった訳でもない。
いきなり、
「チャーミー。サヤ分が欲しい」とぬかす。
「ごめん。ちょっと何言っているか分からない」
「人間に必要な4大要素。知らん?水分、鉄分、忘れた、サヤ分」
テキトーなこと言ってるのだけは分かった。

あのラブレターと称したLINEのIDを書いたメモ紙を渡したが、試験期間中もまったく連絡はこなかった。
「連絡が来ない……ってことは、そう言うことなんだろ?」
「どう言うことなんだよ?」まぁ、認めたくない気持ちは100歩譲って分からんでもない。
「野呂亮くんとそう言う関係に進展はしたくない。興味がないということだよ」ハッキリ言う事も必要だ。
「それはおかしい」自信にあふれた口調で。
まぁ、リコピン教布教の為に近寄ってきても変ではないか?
「僕はこんなに魅力に溢れているのに」そう断定しやがった。
暑さでなんか溶けちゃいけない部分が溶けてしまったんだろう。その特定は俺の領分ではない。

「わかった。わかった。普通に渡しただけなんだろうね?」
この言動を抜きに普通の人に見られれば、勧誘くらいはされるだろうと思い直すことにした。
「もちろんだ……と言っても、ただ渡すだけではインパクトに欠ける。それでは、そこら辺の軽い男と変わらない」
そこら辺の男が軽いかどうかは知らんけど、君は充分軽いと思うよ?
「僕の誠実さと、一途さと本気をアピールするべきだ。僕はそう思った」
あー……間違いなくそれです。その考えを起こしたところから失敗なんです。何をしたか聞く前から結論は出た。興味はなくなった。
よし!聞かないで寝よう!
「おやすみ」
身を乗り出して、まだ聞いて欲しそうな野呂亮君を無視して部屋から出ようとした。
今日はここにいたら、聞きたくないことを聞かされる。その判断は間違っていないはずだった。
「待て」
俺の体を傷つけない程度に、しかし普段より俊敏な動きを見せて、抵抗を許さぬよう掴む。
「ぐえっ」変な声が出た。
「僕は手紙に一言添えることにした。『君に恋焦がれてハニー暴風雨』と」
こいつ日増しにセンスがワンダーになってないか?
「渡す際は身体で表現にも努めた。芸術は言葉によるだけのものではない。時に肉体が言葉を凌駕する。感性が理解を超えるんだ」
それっぽいこと言っているけど、その言葉を発するべきは今ではない。
「僕の心のアガペー・コスモ。それを、体現するように回転という表現を加えることにした。躍動する僕の身体は、彼女の生命への賛美だと僕はそう伝えたかった」
要はクルクル回りながら、あのやべー奴が考えた一文添えて、連絡先渡したってことだろ?
マスターもとめろよ!マスター!そうだよ!
「そうだ!その時、マスターとか他のお客さんはいたのか?」
「僕の心の内なる2人の秘密宇宙を見られるなんて、秘め事を見られるようで恥ずかしいじゃないか。もちろん、誰もいないタイミングをはかったよ」
「他は恥ずかしくねぇのかよ!?
ちくしょう!そりゃ、連絡も来ないだろう!
連絡くるのは警察からじゃなかっただけ感謝しろよ!」とストレートに毒づいた。

一晩口論になった。

2024年文披31題 day10 散った

後書き
それっぽいことを書いてみました。ただのヤバい人になって、作者もボギャブラリーなくなり「やべー」しか書けていません。
よく見たらお題は「そりゃ、散るわ」でも「散ってしまえ」でもありませんでした。
ひとまず、サヤちゃん片想い編おしまい。
サヤちゃん自体はあと2日分くらい登場予定。
行き当たりばったりで書いているので、思っているよりでるかもだけど。

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