見出し画像

深い青に昇る煙

炭からチロチロと放たれる熱と発光。

すみびをみていると、
おなかがすいてきます。
うなぎ。さんま。やきとり。バーベキュー。マシュマロ。リンゴ。
おとうさんがつれていってくれたキャンプに。
つくってくれたごはん。
ぜんぶ、わたしのおもいでにのこっています。

喪われた蛍火が書いた詩のようなもの。
私はその紙を見ながらコーヒーをゆっくり、そっと飲んでいく。
冬のキャンプ場に人影はなく、その日は貸し切り状態だった。
多忙な中、上司に有休を使うよう指示されて、
行く当てのない私は、
しばらく行くのを止めていた
デイキャンプに来ていた。
今日は珈琲の焙煎も調理も炭火で行い、手間をかけるようにしている。

この日は快晴。どこまでも深い蒼穹(そうきゅう)。
炭火の微かな光の中に、蛍火が思い出される。
見えない煙が高く高くどこまでも昇っていくようで。
河原の石などなくてもいい。
信仰に掌を返すように。
くしゃくしゃの皺だらけの紙。
澄んで乾いた落ち葉風。
汗まみれの靴。
疲れきった服。
それでも。

お題『蛍火』言葉の添え木様
#言葉の添え木 #詩 #散文詩

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?