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【レポート】クリエイティブ・クッキングバトルに参加した!

競うのは料理力なのか、創造性なのか?

先日、クリエイティブ・クッキングバトル(CCB)というイベントに参加してきた。
これは料理コンテストの一種だが普通とは違うルールがある。食材は主催者が余り物の食材を用意してきて当日披露される。参加はチーム(3人から4人)単位で、それらの食材を使い、決められた時間で料理をするのだが、採点は、おいしさ、見た目、創意工夫、そして出した生ゴミの「少なさ」である。つまり、フードロスという社会課題をテーマとし、クリエイティブな発想で食材の無駄を減らそうというコンテストなのだ。

真面目なテーマをゲーム性を取り入れていて魅力的だなぁ。そう思っていたら、主催者とのご縁で審査員として、先日参加させてもらうことになったのだが、これが想像以上に面白かった。

当日は、大学生による大会の関東予選であった。出場チームは4校で、東京農工大学、相模女子大、国際基督教大学(ICU)、慶應義塾大学。参加者は女性が多いかなと思っていたらそうでもない。相模女子大とICUは女性だけのグループであったが、慶応大学は男女半々、東京農工大に至っては男子だけのグループだ。

イベントでは概要の説明が終わるとチームごとの自己紹介が始まる。
いの一番に登場した農工大チームは、日頃、食品工学を勉強している。科学の力で無駄をなくす料理を作りたいと力強く宣言する理系チーム。相模女子大チームは、一人一人が好きなチーズとともに自己紹介。お揃いのエプロンで決めた仲良しグループだ。慶応チームは、ノリが良く、何か仕掛けてくれそうな予感が満載。ICUチームは、中国から帰国子女、日本人、それにイタリア留学経験のある学生という三人。「和食、中華、洋食」で挑むといかにもICUらしい。いきなり個性が違う4チームのプレゼンから期待は膨らむ。

↑ 乗りのいい慶応チーム。

ゲームはチームによる戦略戦

バトルは食材選びから始まる。主催者が用意した食材から、チームは各々の食材を選ぶのだが、生ゴミが多いと得点が出ないので、材料を見てメニューを決めてほしい食材を吟味しないといけない。材料を見てから5分間のチーム作戦会議。これは重要そうだ!

それから一斉に食材を取り合う。しかもどのチームも選ばなかった食材は、主催者がランダムに各チームに割り振るので、ここで再度メニューを決める作戦会議となる。

料理時間がいよいよスタート。制限時間は45分である。
ここでチームの個性が浮き彫りになる。3人組のICUチームは、いち早く役割分担を決めたようで、三人が淡々と野菜を切り始める。逆に会話が多いのは慶応チームだ。大まかな方針はあるものの、細かな役割分担やメニューは決まっていないようで、食材を手にしながら相談しながら進めている。相模女子大チームは、どんな決め事をしたのかわからなかったのだが、4人が揃って仲良く料理を始めた様子だ。

↑ 仲良く楽しそうに料理する相模女子大チーム

ユニークだったのは、農工大チームだ。キッチンにつくや否や、紙に何かを描き始めた。よく見るとプロジェクトで使われる「ガント・チャート」だ。メニュー毎に料理にかかる時間から逆算して、やるべき手順と工程時間が一目でわかる。おまけに、このチームは4人だが料理の実働部隊は3人。一人は手を動かさず、全体のプロジェクト進行管理に徹するという。限られた時間で料理するとなると一人でも多くの手が欲しいところなのが、あえてこのチームは全体の効率の観点から、この「3人料理人プラス監督」体制をとったのだ。聞くと、事前にこの体制でリハーサルもしてみたという。さすが理系チーム、料理のプロセスに工学的発想を取り入れているのだ。

↑ 農工大チームが作ったガントチャート。

料理時間を半分も過ぎた頃、順調に見えたのはICUチームと農工大チームである。役割分担が明確なICUチームは三人がそれぞれの料理を仕上げつつある。事前に相当計画をしっかり練ったに違いない。実行のみ、小さな意思決定は個々が下す、そんな方針に見える。ガントチャートの農工大チームは、監督が僕ら審査員への広報役も担当していて、残りの三人は職人のように料理に専念している。エンジニアがチームとなってプログラムを書く作業を彷彿させる。

↑ 黙々と料理する農工大チームの料理班3人。

完成が想像しにくかったのが、慶応チームと相模女子大チームだ。慶応チームは大根を丸ごと茹でていたり、お菓子を砕いたり。これが最終的にどういう料理になるのかまるで想像できない。チームの一人に何品作る予定か聞いてみると、「4つかな?」と、そのあたりも曖昧。相模女子大チームはいろんな食材を使い、鍋やフライパンも大忙し。サラダができつつある以外は未だ謎であるが、あまり迷いなく作業しているようにも見える。

プロセスにも、仕上がりにもチームの個性が出る

残り時間5分。そろそろ各チームの料理が見え始めてきた。ダントツで順調に進んだのがICUチームだ。料理もほぼ完成しており、メニューボードへの記入も始めている。盛り付けも綺麗にし、手の空いたメンバーは台所のかたずけも始めている。ガントチャートの農工大チームも完成が見えてきた。計画外だったのか、監督が余った野菜をスムージーにしているが、その他の料理は姿を見せ始めた。

↑ 終始順調に進んだように見えたICUチーム。

慶応チームは追い込みのはずだが、ジャガイモの皮を剥くなど間に合うか?相模女子大チームもまだ先は見えない。大きな鍋やフライパンがフル回転している。

タイムアップ。出来上がった料理をチームごとに並べる。大体3品から5品。各チームごとのプレゼンの後、僕ら審査委員を含め一斉に試食。予想通り、ICUチームの食事はどれも美味しい。完成度と安定感が素晴らしい。慶応チームはアミノ酸を使用しただけあって味は個性的だ。やや企画倒れに終わったメニューもあったが、「クリエイティブ」への挑戦という点では最も果敢なチームだったと言える。農工大チームはいかにも男子料理の見た目なのだが、これが優しい味で意外と美味しい。やるな、理系男子!そして相模女子大チームは品数もボリュームも満点。どの料理も使われている素材が多く、色鮮やか。食べてみるとどれも複合的な味が広がるし食感も楽しい。

↑ 慶応チームが作った料理。盛り付けが個性的!

↑ICUチームが作った料理。和洋中のバランスと料理の完成度が素晴らしい!

↑ 相模女子大チームが作った料理。品数、食材、組み合わせともビッグ!

↑ 農工大チームが作った食事。見た目は男子飯だが、優しい味でヘルシー。

結果から先に言うと、優勝はICUチームを僅差で破った相模女子大チームだった。リーダー的な存在の人が見当たらないのだが、まとまりがいい。作業分担も相談も、そしてサポートも実に自然にできている素晴らしいチームだった。企業では仲良しグループが良い成果につながるか疑問視されることがあるが、このチームは、お互いの仲の良さがチームの成果に結び付くことを見事に証明した。

バトル形式のイベントながら、勝敗を超えた醍醐味

「バトル」と名のつくのだが、このイベントのクライマックスは勝敗の前にあったように思える。料理を終えたチームはその出来栄えを問わず、どこもとても満足そうであった。食材の制約、生ごみを出さないように工夫して創造的で美味しい料理を作る。しかも制限時間内で。この状況をチームで乗り切ったと言う満足感がどのチームからもひしひしと漂う。お互いに労をねぎらい感想を語り合う笑顔が実にいい。そしてチームを超えて参加者同士が繋がり始めている。それは競い合ったライバルという意識より、困難な同じ課題に取り組んだ同士という意識ではないか。正々堂々と戦いあったアスリートの試合のあとをみているような清々しさだ。

審査発表前の各チームからのコメントは揃って「楽しかった」と言う言葉が出た。これはよくわかる。踊る阿呆にみる阿呆。僕の感想を一言に要約すると、「審査するより出たかった」。あのドキドキ感と緊迫感、その中でどんな工夫を自分が生み出せるのか、そしてそれを一緒に乗り越えたチームメンバーとの一体感を経験したくなったのだ。

CCBは、フードロスをテーマに掲げるイベントであり、クリエイティブを発揮して工夫すれば生ゴミが減らせることを体験できる。同時に、参加者を夢中にさせるプロセスが内在している。料理中、僕ら審査員は彼らの間を覗いていたが、審査される緊張感は皆無でありそんな余裕もなさそう。チームメンバーと一緒になって目の前の食材と料理に集中する、あたかもフロー状態のようではなかったか。この45分は彼らにとってとても短いと感じたに違いないが、忘れがたい体験になっただろう。その記憶が「いかに食材ロスを減らすか」という社会課題の解決に繋がるのが素晴らしい。

↑ 料理後の農工大チームの生ゴミ。4チームのなかでもっとも少なかった。

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フリーランス/編集者。ダイヤモンド社にてビジネス書編集者、DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー編集長などを歴任し2017年に独立。2018年3月からハノイに3か月在住し、6月よりラオスのビエンチャンに3か月滞在。現在は東京。
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