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トレイルデザイン-The Rolling Contour Trail

サスティナブルなトレイルとは?

トレイルを作る際に求められるのは「サスティナブルなトレイル」であることです。サスティナブルという言葉は「持続可能な」と訳されますが、ではサスティナブルなトレイルとは具体的にどの様なトレイルでしょうか?

Trail Construction and Maintenance Notebook 2007」によるとそれは、長い年月が経っても失われることなく、水や人による侵食にも強く、また訪れた人に素晴らしい体験を提供できるトレイルと書かれています。そして、サスティナブルトレイルの解として次の8つが上げられています。

The Sustainable Solution
Outsloped tread
Sustainable grade
Frequent grade reversals
Erosion resistance
Path that traverses along the side slope
Provision for sheet flow of runoff
Positive user experience
Low maintenance

これを意訳すると次の様な感じでしょうか?

アウトスロープ
ハーフルール等によるサスティナブルな傾斜
③点在するグレードリバーサル
④侵食への抵抗力
⑤斜面をトラバースする道
⑥雨水などの流水対策(ウォーターバーチェックダムニック等)
⑦利用者へのポジティブな体験
⑧少ないメンテナンス

各項目の詳しい内容についてはここでは触れませんが、これらを一言に集約して「The Rolling Contour Trail」と言い表しています。意訳すると「等高線に沿ってゆるやかな起伏を描いたトレイル」とでも言いましょうか。


Steep Fall-Line Trail

「Rolling Contour Trail」の反対は「Steep Fall-Line Trail」と呼ばれます。これはつまり「急な直登する道」という意味で、沢を詰めていく道や、斜面に対して垂直に登っていくような道です。日本の登山道の多くがこれにあたるのではないでしょうか。

日本の登山道は、最初は沢を詰めてどこかで尾根に登って山頂に向かう、という形が多いです。それは、登山の目的や日本の地形や植生などからすると、それが最も合理的なルートだからだと思われます。歩きやすく距離も短くなります。距離が短いということは、つまり自然の改変・生態系の撹乱も少なく、経済的にも安く済みます。

しかし、”Steep Fall-Line Trail”は流水による侵食を受けやすいため、長い目で見た場合、より多く周りの自然に影響を与える可能性があるため注意が必要です。施工や維持には高度な技術が要求され、結果的にコストも高くつくかもしれません。そのため”Rolling Contour Trail”であることが求められているのです。


美しいトレイルとは?

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これは世界中のハイカーが憧れるJMTのトレイルです。シエラネバダ山脈の雄大で綺麗な風景。人間社会から離れた、人の手がほとんど入っていないウィルダネス(原生自然)の世界。当初、JMTに対してそのような印象を持っていましたが、アメリカのトレイル造りについて調べているうちに、その印象は変わってきました。

何も知らずに歩いたJMTですが、そのトレイルにはサスティナブルであるための多くの知恵や技術が詰まっていました。つまりそれは「ウィルダネス」というよりは「人と自然の調和美」と言った方が正しいのかもしれません。

自然そのものはもちろん魅力的なものであることに違いはありません。しかし、そこに一本のトレイルがあるからこそ多くの人が「ここへ行ってみたい!」、「あのトレイルの先にはどんな景色があるんだろう?」とワクワクさせられ、引きつけられるのではないでしょうか。JMT(John Muir Trail )の一番の魅力は文字通りそのトレイルそのものにあるのだと感じます。

人と自然が調和したトレイルがあることによって、よりその自然の魅力が高まる。そのようなトレイルこそが「美しいトレイル」と言えるのではないでしょうか。



参考

Trail Construction and Maintenance Notebook 2007


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