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トレイルデザイン-Outsloping

登山道は川である

  例えば、日本では近自然登山道工法においても「登山道は川である」という言葉があるほど、水の流れをいかにコントロールするか、がトレイルを作る上で重要なポイントになります。ただし、サスティナルブルトレイルにおいては「トレイルは川である」という考えは成り立ちません。なぜなら、「トレイルを川にしない」ことを前提につくられているからです。

トレイルを川にしない

 降った雨や雪解け水は、植物に覆われた場所では植物が障害となり分散されて表面を流れ、また全部ではありませんが水が地下に浸透していくので侵食の力は強くありません。しかし、植物がなくなった場所(=登山道やトレイル)は水が流れやすく、また踏み固められることによって地下に浸透しずらくなっています。そのため登山道に水が集中します。その水が流れていく時に地面を削り、侵食が起こります。サスティナブルトレイルでは、水をトレイル外に排出することを徹底的に考えて作られています。

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Figure 10(Trail Construction and Maintenance Notebook 2007より)

Outsloping

 水をトレイル外に排出する方法として、「アウトスローピング」という方法があります。アウトスローピングとは、トレイルの路面を谷側へ傾斜するように(最低でも5%、約2.8度)することです。また斜面へ水が流れるように、谷側には法面ができないようします。かといってあまり傾斜を高くすると歩きづらくなるので注意が必要です。立った時に足首が曲がる感覚があるとしたら、そこは傾斜が高すぎでしょう。

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Figure 29(Trail Construction and Maintenance Notebook 2007より)

Backslope

 また、トレイルの山側の法面の部分(backslope)にも注意が必要です。基本的には1:1(45度)の角度で良いのですが、地面が弱いような場所では1:2.6(約21度)にする必要があります。 逆に岩などの硬いところであれば2:1(約63度)でも良いです。

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Figure 28(Trail Construction and Maintenance Notebook 2007より)

Tread Maintenance

 ただし、このようにトレイルを設計したとしても、人が歩いたり水が流れると、土が削られたり土が溜まる箇所が出来てきます。そういった箇所はこまめにメンテナンスしていかないと、せっかくの仕組みも機能しなくなってしまいます。自然と調和した歩きやすくて美しく見えるトレイルも、実は人の緻密な設計とこまめま維持管理の賜物なのかもしれません。

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Figure 30(Trail Construction and Maintenance Notebook 2007より)

参考

Trail Construction and Maintenance Notebook 2007


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