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ベランダに出ると下には大きな木が見える。

僕の仕事場は6階でベランダに出ると下には大きな木が見える。

その木は春になると桜が咲き、仕事の合間に上から眺めることもしばしば。
ある日ベランダに出てその木を何気なく見てみると、
木の枝にハンガーが10本ほど束で刺さっている。
ハンガーを投げたり、上から落としたりして刺さる距離に
木より大きな建物はない。
もちろん近くに陸上競技場もなく、ハンマー投げをハンガー投げと勘違いしてハンガーを投げる選手がいるはずもないし、若い男女が大きな木にハンガーを交互に刺していき、刺せなくなった時点で「アウトー!罰ゲーム!イェーイ!」みたいなそのゲーム自体が罰ゲームのようなゲームは、毎朝ワイドショーでヤングのトレンドをチェックしている僕でも聞いたことはない。
謎は深まるばかりだが、僕はベランダから部屋に入り仕事に戻った。

数日後、またベランダからその木を見たがハンガーはなかった。
どこか居心地の良い、別の木を見つけに遠くへ飛び立って行ったのだろう。
ハンガーたちの長い旅は続く。

もうすぐ10月だ。

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