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太陽

終戦付近の昭和天皇を描いた作品。
まず断っておかなければならないのが、昭和天皇を描いているといっても、モチーフに過ぎないということだ。これに関しては追って話すことになる。
驚いたのがこの作品、まだ公開されてから10年程度しか経ってない。そもそも戦争に負けてからまだ100年と経っていないんだものなぁ。健忘的にも程があるかもしれない。
これが10年前に作られた意図はなんだろうと思う作品だった。世相を反映し風刺的に描いた、という感じでもないような。

最初の感想としては、正直、いやいや天皇って絶対こんなじゃないだろ!もっと重くて息詰まるような話かと思ってたけど、どうやらそうでもなかった?というものだった。

わたしは、例えば、西郷隆盛がメンヘラでおセンチでも、卑弥呼がアメリカ人になっていても、クレオパトラがニューハーフでも、まあそれはそれでありじゃない?と思える。その人物への理想や思い入れが薄く、すでにその存在自体がフィクション化してしまっているからだ。
だが、どうしても天皇には先入観がある。この天皇はナシだろ、と思ってしまう。わたしが日本人故だからなのだろうが、このイッセー尾形が演じる昭和天皇のコミカルさにとてもシニシズムを感じる。
話が重たくなりすぎていないのも、天皇が神だなんて話がそもそも…と言われているような気がする。
思わず外国から見たら日本人ってこんな感じなの?と思ってしまった。

この映画の中の昭和天皇には、自分に役が見合ってない、という意識を感じる。
もともと天皇として存在するのではなく、ひとりの人間として、天皇という役を懸命にこなしている。
間抜けに見えたり子供っぽく見えるのはそういう印象にする為なのかもしれない。

まず日本人なら天皇をこのようなキャラクターで描くことはないだろう。貴族や権力者、神のモチーフならたくさんあるし、天皇という立場を引用するのは勇気がいる。

しかし、それが面白い。
天皇がやるからどこか受け入れ難くて面白いのだ。ドッと笑ったりできないような。こそばゆいとでも言えばいいのだろうか。

まだ見たことのない人には是非見てほしい。

個人的に好きな場面は指揮官と食事するシーンだ。
あとチョコレートのくだり。あれだけ部屋の内装が洋物なのに、チョコレートを大歓迎できないところなど、新しいもの好きな小市民とは画すものを持っていないといけないのかもしれないなあ。

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