現実主義(リアリズム/realism)とは
〈目次〉
1.はじめに
2.現実主義とは
(1)現実主義の概要
(2)現実主義の特徴
3.現実主義への批判とネオリアリズムの登場
4.まとめ
1.はじめに
現実主義(リアリズム)とは、国家間の関係性をとにかく「現実に即して」考える立場です。
国際政治における力を重視し、国家中心主義、国家行動を対立・闘争を中心に考える、国際政治学の立場のことです。
現代の国際政治学において「リベラリズム」と「コンストラクティビズム(構築主義)」と共に、主流派の一つとなっています。
(なお、内容が複雑にならないように、「リベラリズム」と「コンストラクティビズム(構築主義)」については、別の機会に解説したいと思います。)
2.現実主義とは
(1)現実主義の概要
現実主義(リアリズム)とは、国家間の関係性をとにかく「現実に即して」考える立場です。
現実主義が批判する「理想主義(idealism)」を知っておくと理解が深まると思います。
理想主義とは、国際社会における国家間の協力・協調や道義的理念、倫理観などを重視し、すべての国にとって平和が利益であると考える立場です。
(2)現実主義の特徴
現実主義の特徴として、以下の点があげられます。
①国際社会は無政府状態(アナーキー)である
現実主義は、国際社会は無政府状態(アナーキー)であると考えます。
そもそも、近代の国際社会は「主権国家体制」というシステムから成り立っています。
【主権国家体制とは】
最高の権力を持つのが国家であり、国家をコントロールできる上位の権力は存在しない。また、国家間は対等であると考える立場。
国際社会は最高の権力を持つ国家のみによって構成されていることになります。
また、国際社会では、国家を守ってくれる、いかなる存在もないのです。
そのため、国家は自分で自分の身を守らなければなりません(自助)。
この立場は、現実主義のあらゆる思想や理論の前提になっています。
②国際社会の主体はあくまで国家である
現実主義は、あくまで主体は国家であると考えます。
国際社会には、国際機関や多国籍企業、NGOなどが存在し、活動しています。ただし、現実主義は、力(特に軍事力)を重視するため、国際社会で影響力を持つ主体は国家のみと考えます。
国際機関、企業、NGOなどは、あくまで国家の存在を前提として活動していると見なします。
③安全保障を重視する
現実主義は、国家の安全保障を最重要と考えます。
国際社会で国家が自らの身を守るためには、まず第一に安全保障が必要になるからです。
④国家間の関係は権力闘争である
現実主義に置いては、国家間の関係は基本的に権力闘争(パワーポリティクス)であると考えます。
国家は他国から領土や富、自由などを奪われないために、他国よりも大きな力を持てるように競争するからです。
権力闘争の結果、国際秩序は「勢力均衡(バランスオブパワー)」というメカニズムで釣り合いが取れると考えられています。
3.現実主義への批判とネオリアリズムの登場
1970年代ごろから、現実主義の立場だけでは、現実を説明できないと批判されるようになりました。
現実主義への批判は以下のようなものです。
・現代の国際関係は、非国家主体(国際機関やNGO、多国籍企業など)なども登場しており、国家を主体として考えるのは間違っている。
・国際社会では、平和に向かって国家が協調することもあり、必ずしも対立的な関係ばかりではない。
現実主義の国際政治学者の中から、この批判に応えようという動きが生まれました。それが、「ネオリアリズム(Neorealism)」です。
ネオリアリズムは、リアリズムへの批判に対して、「いや、今でも現実主義は有効な思想なのだ」と応えたものです。
ネオリアリズムは以下のような思想です。
・非国家主体(国際機関やNGO、多国籍企業な
ど)の活動も、力を持つ国家が存在すること
を前提としたもので、国際社会における主体は
今でも国家である。
・平和は勢力均衡によって達成されるものであり
現代社会でも、やはり国際関係の本質は権力
闘争(パワーポリティクス)にある。
4.まとめ
現実主義は、国際社会を国家が主体、国家間の関係は権力闘争が基本であり、国家はパワーを求めるもの、と考えました。
この現実主義の批判として、国際社会では、平和に向かって国家が協調することもあると主張しました。
ネオリアリズムでは、現実主義への批判に対して、平和は勢力均衡によって達成されるもので、現代社会でも、やはり国際関係の本質は権力闘争にあると、反論しています。
以上
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