葛城ユキヒロ

創作ができる人になりたいなあと言っているだけの口だけ星人です。うまいものだけ食べて生き…

葛城ユキヒロ

創作ができる人になりたいなあと言っているだけの口だけ星人です。うまいものだけ食べて生きていきたい。

マガジン

  • スズキ氏の聞いた話【不定期更新】

    一話完結ホラー短篇集。どの話から読んでも大丈夫です。不定期に少しずつ増えます。

最近の記事

小説 きみに食べられたいぼくの話

 昼休みの教室の喧騒の中で、ぼくは彼女のことばかり見ている。  正確には、食事をしている彼女のことばかりを、だ。  ぼくたち猫獣人族の食性は肉食に近い雑食だから、わりあい何でも食べられる。彼女やその友人たちは、おそらく彼らの親がこしらえているのだろう、色とりどりのおかずの入ったお弁当を食べていることが多い。  けれど、今日の彼女が食べているのは、購買の焼きそばパンだった。  ソースで炒めた太めの麺が、切れ目の入った大きなコッペパンがはち切れそうなほどに詰まっている。濃厚なソ

    • 小説 スズキ氏の聞いた話(2)

       スズキ氏の知人に、仁進氏という男がいる。彼がいつだったか、スズキ氏に語った話。  仁進氏の育ったところというのは山奥の寒村で、学校といったら小さな分校がたったひとつ、それも通うのは四年生まで、五年生からは遠くの町の本校までバスで一時間以上かけて通学する、そんな場所だったのだと言う。分校に通う生徒の数も、一年生から四年生まで全員合わせても二十人を超えなかった。少なくとも、仁進氏の通っていた四年間はそうだった。  そんな学校だったから、年下の子も年上の子もなく、まるで全校生徒

      • #Twitter300字ss 投稿作品まとめ【再録】

        ※Twitter内企画「Twitter300字ss」に投稿していた作品のまとめです。回ごとに設定されたお題で、300字以内の掌篇を作成して投稿する企画でした。 ※第八十八回から第九十二回(最終回)まで参加。 ※全8作品。 ※「#Twitter300字ss」の概要はこちら ※企画主さまTwitterはこちら ・Twitter300字ss 第八十八回「洗う」「ハイスペックパーツ」  いや、不景気だね。最近は良いパーツが入らなくて。でもお兄さん、良いときに来たよ。ちょうど今

        • 小説 穏やかな目 【再録】

          ※10年以上前に書いて、当時存在した(今はおそらくすでにサービス終了しているであろう)小規模な小説投稿SNSに同ペンネームで発表したものの再録になります ※夏にまつわる画像をお題に小説を書くというSNS内企画に寄せた作品でした ※お題にした画像は以下の2点  ああ今年も、この季節がやってくる。  今は軒先に風鈴を下げている家なんてめっきり見なくなってしまったけれど、古い日本家屋であるこの家では、セミがかまびすしく鳴く声に混じって、その透き通った音が当たり前のように夏の空気

        小説 きみに食べられたいぼくの話

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        • スズキ氏の聞いた話【不定期更新】
          2本

        記事

          小説 Siren 【再録】

          ※10年以上前に「水の城」というお題で書いたものです。 ※同ペンネームで「小説家になろう」に投稿したものの再録になります。 ※前記事の小説「スズキ氏の聞いた話」にやや構造が似ている気がします。  ある意味、原型になっている話かもしれません。  面白いものを手に入れたんだ。  ひさしぶりに再会した彼が、そう言って見せてくれたものは、信じられないくらいきれいなさかなでした。  部屋の中は電球ひとつ点いていないというのに、そのさかなの全身はぼんやりと銀色に光っていました。  大

          小説 Siren 【再録】

          小説 スズキ氏の聞いた話

           スズキ氏の知人に、濱地氏という男がいる。彼がいつだったか、スズキ氏に語った話。  夢を見るのだと言う。それも、かなり頻繁に、同じような夢を繰り返し見るのだと。もしかしたら今夜にも同じ夢を見るのかもしれない、と言う。  夢の中で濱地氏は、どことも知らない暗闇のなかにいる。目の前の自分の手もわからぬような濃い闇で、自分が立っているのか座っているのか、それどころか目を開いているのか閉じているのかも判然としない。上も下も右も左も前も後も存在しない、ひたすら暗いだけのその場所は、し

          小説 スズキ氏の聞いた話

          小説 アダマの塵を、【再録】

          ※この作品は日本SF作家クラブの小さな小説コンテストの共通書き出しから創作したものです。  https://www.pixiv.net/contest/sanacon pixivに同ペンネームで投稿したものの再録になります。 締切に間に合わなかったので結局コンテストには出品しませんでした。  朝テレビのスイッチを入れると、ニュースキャスターが「おはようございます。世界の終わりまであと七日になりました」と言う。  七日あれば充分だ。神は六日で天地を創造し、残りの一日を休む余

          小説 アダマの塵を、【再録】

          このnoteについて

          筆者・葛城ユキヒロ(かずらき・ゆきひろ)が書いた文章を置いておくところです。twitter以外で長めの文章をまとめておける場所があれば良いなという思いでアカウント作成しました。 メインコンテンツは一次創作小説(よそで発表したものの再録、または書き下ろし)を考えています。最近知った禍話リライトというものもやってみたい。 その他、読んだ本や観た映画などの感想、日記やエッセイのようなもの、twitterで呟くには長い文章、あるいは物語の形にまとまらなかった創作ネタの覚書など、他

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