見出し画像

「よわさ」と向き合う

先日、ひさびさに西加奈子さんの文章を読みたいと思い、大学の図書館へ向かった。
高校生の頃の私はいわゆる'エッセイの短編集'が大好きで、毎日放課後に学校の図書館へ通っては読んでいたことを思い出した。

今思うと、私はその頃から「ことば」とか、日常に起きていることを「ちょっと丁寧に見る」ことが好きだったのかな。
現代文の授業で作文を書くことも好きだったし、通っていた学校がミッションスクールだったので、生徒が担当する礼拝の'お話'を書くこともよくあった。
何より私は自分の記録をつけることが好きで、毎晩ノートと向き合って、自分の気持ちや、読んだ本の感想をつけていた。今はその役割がこのnoteになったわけだ。

高校の時は、西さんはもちろん(『あおい』が好きだった)江國香織さん、角田光代さん(なんと、角田さんは母校が同じである。ちょっぴり誇り)、池田晶子さんの哲学っぽい文章も好きだった。



さて、本題。
大学の図書館で西さんを探して、本の背表紙の文章が面白そうだったから『おまじない』という本を読むことにした。(私はいつも背表紙の文章で読みたい本を決める。)

感想としては、なんだか心があったかくなった。
自分に優しく、人にも優しくしようと思える読了感だった。
そんなに長い文章でもないのに、ここまで心をほっとあたたかくしてくれる文章と出会ったのはいつぶりだろう・・・

最近新書ばかり読んでいて、社会への不満が自分の中を占めて、心が荒れていたのかもしれない(笑)


特に好きだったのは、「マタニティ」。

ネタバレになってしまうので詳しく書かないけれど、
「弱さ」と「社会」がキーワードだったと思う。

「マタニティ」は、一人の女性が主人公で、彼女は「このまま一人で人生の終わりを迎えるのは嫌」という気持ちと、周りは結婚出産をしているという社会からの圧力を受けながら、本気で好きでもない相手との子を妊娠してしまう。
私は、人の中に命が宿るということはこの上ない美しいことであるのはなんとなくわかるのだが、十分に理解できないし、もちろん自分も想像もできないし、どこか生々しく感じてしまうことがある。

彼女もそのようだった。
結局、彼女は相手には妊娠を告げていない。
それどころか、本来「喜ぶべき妊娠」なのに、
「ここまできたらもう後には戻れない」
「彼に排卵日を計算して意図して子供を作ったと思われたらどうしよう」
という不安から、ネット検索で夜を明かす。

でも、昼間になれば、どこからか
「大丈夫、彼もきっと喜んでくれる」
「素敵な家族になれそう」
また、「もし彼が躊躇しても自分一人でこの子を育ててみせる!」
とかそういうとんでもなくポジティブな感情が現れてくる。

私じゃん、と思った。妊娠はしてないけど(笑)
これって、強がっているのかなと思った。
社会に適応しようとして、無意識に根拠のない自信が湧いてきて、
「自分もみんなと同じなんだ!」
と脳に思わせようとするような・・・

彼女はどうすべきだったのか。


ちゃんと考えるべきだったのか。
いや、私はちゃんと自分の声を聞くべきだったのではないかと思う。

社会に出ると(私の場合は大学)、
「みんながやっているから自分もやる」
「みんなができているのに自分ができない」
という方程式に左右されている自分に気が付く。

この式から少しでも外れてしまうと、
「自分は異常なのでは?」
「自分にはなんでできないの?」
という自己嫌悪に陥ってなかなか抜け出すことができない。
でも、それって、自分を自分から傷つけてしまっていると思うし、はっきり言って、それでは何も解決しない。

だって、みんな同じ親から生まれてないし、育った環境も全然違う。
だから自分と周りを比べたって意味がない。
でも人ってどうしても「自分」と「それ以外」で考えがちだから、
みんなはみんな同じに見えて、
自分だけ取り残されたように「異質」と感じてしまうのではないか。

そう考えてしまうことは人間として仕方がないとしても、
そのループに陥ってはならないと思う。

悩みの渦中にある時はそんなこと考えられるはずもないのだが、
「なんで自分はあの娘と比べようとしてるんだ?」
と思えるまでこれたら、
涙にのまれる夜を明かすことはないのではないかと思う。


「自分が何をしたいのか」「自分ならどうするのか」
はっきり言える意見を持って、生きていきたい。

それと同時に根拠のない自信だけが空回りするのではなく、
時には他と比べてしまう自分の「弱さ」も全部まとめて、
目の前のことを淡淡とこなし、「生きていく」ことをしたい。

西さんの『マタニティ』。
彼女は最終的に自分は「弱い人間なのだ」と認める。
それまでの「私はきっと大丈夫だ!」という勇敢さを手放した。

そこに残ったのは、
「自分のこのからだで生きていく」
というまぎれもない事実であった。


とても考えさせられる文章でもあって、
大学の授業が始まる前に全部書き留めることができてよかった。(支離滅裂な気がするけど)

西加奈子さんの『おまじない』。
よかったら読んでみてください🌱


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?