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水の生まれる夜に 75 ポンカンさん

日曜日になり、先輩と留美さんがレンタカーで天空カフェにやってきた。

「お久しぶり、綾乃ちゃん」瑠美さんは手をあげて綾乃ちゃんとハイタッチしている。

俺も先輩と拳を合わせて「高崎以来だな」と笑った。

そこへ、一台の可愛いオープンカーがやって来る。
見ると松本君がショートカットの可愛い子を一緒に連れてきた。

「松本君お久しぶり!……君の彼女さんかい?」先輩が声をかける。

「いえ、今度会社に入った小林美由紀《こばやしみゆき》さんです、新さんの大切な方だと聞いていたのでお誘いしました」

「どうも、小林美由紀です、お久しぶりです」俺に微笑んでお辞儀をした。

「ええ……小林さん?……」

「何、新さん忘れたの?ひどい人ね……ねえ美由紀ちゃん」綾乃ちゃんは美由紀ちゃんの隣に立って俺をにらんだ。俺は固まったまま恐縮した。

「なんだよ新、失礼だろう、早く思い出せよ!」先輩まで美由紀ちゃんの横に立って俺を見ている。留美さんは綾乃ちゃんに声を出さず口だけ動かして何か言っている。綾乃は笑いをこらえながら頷いた。

俺は本気で申し訳ない顔になってしまう。
あまりに恐縮している俺をみて、美由紀ちゃんは綾乃ちゃんを見た、綾乃ちゃんが頷いてOKを出した。

「初めましてポンカンさん、(心結)ミユです」

俺は顔をゆっくり上げて心結ちゃんの顔を見るとそのままフリーズした。

「なんだよ新、思い出したのかよ」先輩が肩をつっつく。

「はい…………」

「で……?」俺は不安そうに美由紀ちゃんを見る。

「あのう……ポケキャバのミユさんですか?」

「はい、思い出して頂けましたか?」

俺は目が点になった。

「えっ!ポケキャバ?」先輩は飲み始めたビールを思いっきり吹き出す。

留美さんが笑いながら「本当に女子高生だったんだ」と頷いた。

「はい、やっと卒業してマサキに入れていただきました、今松本さんの部下です」

俺は困惑して目をパチパチする事しか出来ないでいる。

「ポンカンさん、いえ新さんの武勇伝はいつも松本さんから聞いていますよ、綾乃さんが好きになるのもわかります。ただ…………綾乃さんより先に新さんに会いたかったです、だって綾乃さんが私より先に出会ってたら、新さんが私のことを好きになったかもって言ってくれたので」上目遣いになった。

「さすが、新さんはモテモテなんですね」松本君はひとしきり頷く。

「オレの知ってる新はそんなヤツじゃ無かったけどなあ」先輩は困惑する。

「あら、私も新君は魅力的だと思うわよ」留美さんが笑った。

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