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JKになった幼馴染を不良の所へ行かせてしまった。

高校に入学して2ヶ月が経過する。やっとクラスの子逹の名前を覚えた。
この高校を選んだのには理由がある、それは大好きな幼馴染の希和が行くと聞いていたからだ。
そして高校まで2人で歩いて行けるのも理由の1つだ。
希和は、同じクラスで俺の隣に座っている
これからの高校生活は楽しくなりそうな気がしていた。

希和にお父さんはいない、お母さんが洋裁をしていて毎日忙しそうにしている。
だから小さい頃から二人でよく遊んだ。
希和の家は少し古くて部屋がいくつもあり、その一つの部屋が二人の遊び場だった。
沢山の端切れの布が置いてあって、それを飾って二人で魔法の部屋と呼んで遊んでいた。

JKになった希和は小さめだが、見るとこっちがドキドキするような可愛い子になっている。
サラリとした黒髪は胸の辺りまであり、光沢の天使の輪が眩しく見える。
長い睫毛と大きな瞳は、じっと見られると何も言えなくなるほどだ。
しかし彼女は幼馴染だから、何の屈託もない笑顔で俺に話しかけてくる。
嬉しいが、少しだけ切ない。
俺の意識だけが幼馴染がら好きな人に変わっていたからだ。

「ねえ優斗、今日お母さんが仕事で遅くなるから家に来る?」
「えっ………」
「ラーメン作ってよ、優斗上手じゃん」
「分かった………」
料理はそれほど得意で無い彼女は、よく俺に夕食を作らせた。
「今日の出来は70点かなあ……」などと味には厳しかった。どうやら味覚は敏感なようだ。

俺はあまり社交的ではない、クラブなどもやってないし、ほとんど家で本を読んでるかゲームをしてるくらいだ。
クラスでも当然目立たない、しかし希和と幼馴染で仲がいいと言うだけで他の男子から羨ましがられている。

そんなある日の放課後事件は起こった。
学校でも有名な3年生の不良のボスから体育館の裏に呼び出しがかかった。俺は足が震えた。
仕方なく行ってみると、その不良は厳つい体にいかにも悪そうな目つきで俺を見ている。
「おい、お前相沢と仲がいいらしいな」
相沢とは希和の苗字だ。
「はい……」
「相沢を学校の裏にある城跡公園の東屋まで来るように呼び出してくれよ」
不良はヘラヘラと笑いながら言ってくる。
「えっ………」
「お前、彼女にメールできんだろ?待ってるからすぐきてってメール打てよ」
「えっ……」
「早くしないと痛い目に遭うぜ」そう言ってボクシングのような手つきで俺の顔の鼻先まで何度もパンチを繰り出す。
「はい……」その瞬間俺に選択の余地は無く、すぐに希和に震えながらメールを打つ。
「よーし、帰っていいぜ」不良は裏の城跡公園の方へ歩いて行った。
おれは必死に家まで走って帰って部屋に閉じこもった。
次第に恐怖と罪悪感が津波のように押し寄せてくる。
ベッドの上で布団をかぶって震えた

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「ああ……つまんないなあ、こんな時は優斗を呼んで、ご飯でも作らせるか」そう思った瞬間優斗からメールが来た。
『城跡公園の東屋まで直ぐに来て』
「何だろう?……まあ退屈だからちょうどいいか」そう思って制服のまま出かける。
「何だろう?もしかして告白とか……キャ〜恥ずかしい、あいつも恋したい年頃だろうしなあ」
優斗はそれほどカッコいいわけでもない、でも優しいし何よりも一緒にいて安心できる。告白されたら付き合ってもいいかなと思っている。
東屋に着いたが優斗は見当たらない。
知らない3年生らしき人が1人いるだけだ。キョロキョロとあたりを見回しているとその1人がニヤニヤしながら話しかけてきた。
「相沢ちゃん、俺と付き合ってくれないか」
「えっ?」
「中島は来ないぜ」そう言って近づいてきた。
思わず後退りすると東屋の柱に追い詰められてしまった。
「あなたの事は何も知らないし、まだ彼氏は欲しくありません」そう言ってやんわり断る。
「そうか、残念だな……でも……中島は俺からボコボコにされるだろうな」
「えっ、優斗が?」
優斗から来たメールの意味が分かった、きっと脅されたんだと。
「どうしたら優斗に手を出さないようにしてくれますか?」
「そうだなあ……とりあえずキスさせてくれるとか……」
「えっ!」
「嫌ならいいんだよ別に、あとはどうなったって……ふふふ」
「…………」
「じゃあ帰ろうかなあ」ニヤニヤしている。
「解りました」
「そう、聞き分けいいねえ」
そう言うと直ぐに抱き寄せられた。
そしていきなり唇を押し付けてくる。
タバコと食べ物が混じった嫌な匂いが漂う。
ファーストキスがこんなに最低の事になるなんて唖然とした。
その嫌な不良はキスしながら片手で胸を触ってくる。
そして抱き寄せていた手は下にさがりスカートを捲り上げようとしている。
最悪の状態はさらに悪化していきそうだ。
「やめて!」必死で不良から離れる。
「これ以上なんかしたら警察に訴えてやる」そう言って睨む。
「まあそんなにツンツンしないでこれからも仲良くやろうぜ」またニヤニヤとしている。
私はその場から必死に逃げ出した。
帰るとシャワーで全てを流すように長い時間浴びた。悔しくて涙が止まらない。

翌日は学校を休んだ。そして叔母さんの美容室へ行き髪をバッサリと切る。
母さんは不思議な顔をして「何か有った?」と聞いてきたが話すことは勿論できなかった。

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ベッドの上で一晩一睡もできず、思いっきり後悔した。
どんな目にあっても希和を行かせるべきではなかったのだ。
希和はどんな目にあったのだろうか、もしかしたら何もなかったかもしれない、いやそう願った。
しかし次の日希和は学校には来なかった。
俺は絶望する。
翌日希和は髪を切っていた。
「あのう………」話しかけてみる。
聞こえてはいると思うが一切反応がない。
不良から通達があったらしく、希和と話す人は誰もいなくなった。
希和が不良と付き合っているという噂も流れる。
そしてしばらくすると希和は学校を退学した。
それから俺は希和と会うことは無くなった。
人生にはどんなに怖くても酷い目にあっても、守らないといけない事があるんだとその時思った。
しばらくして原付バイクに乗っている希和を見かけた。
しかし俺に声をかける資格がない事は解っている。
ただ神様に希和が幸せになる事を祈った。

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