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不健康なあの人

いつも笑顔が素敵なあの人。
翳りがあることを私は知っている。

他人と比較することで己の価値を確かにするのではなく、皆それぞれの苦しみを抱えて生きているのだと想像し共感することができれば比較対象という概念がなくなるのにと。
貴女にとっても私にとってももっと気楽に生きられるのにと思う。
その想像の中、綴るストーリー。

今日も帰らないあの人。
家庭を顧みない姿を、悪い考えなしで受け止めることなんてできない。

一見外から見ると理想の家族に見えることが私をより一層疲れさせる。

タワーマンションに住んでいて、会社だって順調で、子供だって自慢の子供で。

それなのに私は今日も誰かを探して、夜を彷徨う。
別の人と一緒になる瞬間は、愛を感じる。その度に一夜限りで生まれる愛を信じたくなる。
情を交わした後は何も無かったかのように二人別々に部屋を出る。
部屋を出ると、自分がより惨めに映る。

家に戻ってもあの人の靴はまだない。
また惨めになる。
実像のない愛を、一人で追いかけ続ける孤独な自分に嫌気が差すのはもういつものこと。

手に入れたいものは全て手にした。
仕事だって、役職だって、資産だって全て。

それでも常に不足していて。
あの人の愛はとっくに尽きていると知りながらも、待ってる自分がいて。

時間は過ぎていく。カレンダーを手に取って明日を想像する。
明日は笑顔で出社する。何事もなかったかのように。
何事も起こっていないかのように。

一体どこからが過ちだったのだろう。
一体何が不足しているんだろう。
それでも足を止めずに生きる意味を、ずっと探している。


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