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新型コロナ後の「ニューノーマル」~各界イノベーターの視点【1】

こんにちは。在シンガポールの中村です。サーキットブレイカー後、シンガポールでは6月2日から「ニューノーマル」に向けたフェーズ1に入りました。小中学校の部分的な再開や極めて限られた数での非同居家族への訪問が可能になる等、若干出来ることが増えましたが、殆んどの社会人にとってはサーキッドブレイカー中と殆んど変わらない生活が続いています。市中感染の状況次第で、早めにフェーズ2に入り、レストラン・カフェの店内飲食等が解禁になる可能性もありますが、まだ予断を許さない状況です。

今月から、各業界をリードするイノベーター陣への取材を開始。新型コロナ後、シンガポール・東南アジアの社会がどのように変化していくか「ニューノーマル」に関する視点・論点を展開していきたいと思います。

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1.序文

製造業、クラウドコンピューティング、人工知能の分野におけるIOT(モノのインターネット)は飛躍的な進歩を遂げており、ここ数年、政府やエコノミストは「第4次産業革命(インダストリー4.0)」を専ら話題にしていた。こういった変化が本格化するのは5年は先と考えられていたが、新型コロナの世界的なパンデミックにより、今や来年中にも実現可能なものへと変革が加速している。多くのメディアでは新型コロナ関連の情報が溢れており、にわかにオンラインセミナーが活況を呈しているが、これらの殆んどが「新型コロナ禍における目下のビジネス」に焦点を当てており、「その後」に何が起きるか、またその変化にどのように準備していくかに関しては殆んど触れられていない。現在の状況と今後に関して、弊社のエグゼクティブエキスパートの一人で、NTUitive (南洋工科大学内イノベーション機関。スタートアップ支援・大学発の技術商用化等をリード)の暫定CEOであるアレックス・リン氏にお話を伺った。

2.ニューノーマル

同氏は、「ニューノーマル」は多くのエコノミストが既に予測をしていた「インダストリー4.0」がもたらす変化と非常によく似ていると考えているが、幾つかの重要な違いがあると言う。
• 「持続可能性(サステナビリティ)」がより焦点となる
• 「搾取的な働き方」を変えようという意識が高まる
• 習慣の変化により消費者の行動に非常に大きな変化が起きる
• 大規模な失業、人員削減やデジタル化の加速で、「消滅する仕事」が発生

例えば、石油・ガスに代表されるエネルギー産業では、我々消費者は、代替エネルギーや他の方法で使用量を減らすことに慣れていくため、従来のエネルギー消費が、新型コロナ前のレベルに戻ることは、まずないだろう。
また、旅行業界は、新型コロナによるパンデミックで顕在化した問題、例えば「ソーシャルディスタンス」等に対して適切に対応するための新しい法律や規制が導入されれば、今後、数年間にわたって深刻な影響を受ける可能性がある。と同時にプライバシーに関する議論も起こるだろう。

不動産業界も大きな影響を受けるだろう。多くの企業が「在宅勤務」とそれに伴うデジタル化を余儀なくされている。新型コロナ後に、全く同じワークスタイルに戻る見込みは非常に少ない。結果として「オフィス」や商業ビルの需要は減少。大きな打撃を受けるだろう。

幅広い業界で間違い無く大規模な失業が発生するが、企業は人員の削減とそれに伴うデジタル化を余儀なくされているため、どの業界でも職種によっては以前と同じ仕事が復活しないことが見込まれ、結果として、多くの失業者が取り残される可能性がある。

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3. 次には何が?

新型コロナ後の時代に備えるにあたり、注目すべき重要な分野が幾つかある。先ず何よりも、「デジタル化」された社会に対応できるようスキルを高めること。業界を問わず、チームやプロジェクトの「リモート」マネジメントは非常に重要である。

特定業界で言えば、製造業では、IOTによって可能になった完全自動化工場や多くの機能で自動化が進むため、一部の仕事が無くなっていく一方で、新しい仕事が生まれるだろう。こういった変化への適応は、全て私たち次第だ。これはあらゆる業界に当てはまる。

例えば、不動産業界の打撃(商業・オフィス)は先に述べた通りだが、在宅勤務者が増える分、より大きな住宅スペースへの需要が高まる可能性が高く、そこから生まれる新しいビジネス機会もあるからだ。

特に注目すべき新規産業と生じる変化を以下に幾つかあげる。
• フードテック
− 新型コロナで使われなくなったオフィススペースの都市農業への活用
− 食品の準備から配送までのプロセスで生じる大きな変化

• eコマース
− ネットショッピングは着実に成長を続けているが、今後より一層、基幹産業としての地位を固めるだろう
− 一方、改善の余地も多い。支払い、オンデマンドでのコントラクト・マニュファクチャリング(製造委託)、JIT物流、オペレーション最適化、ラストワンマイル(商品の受け渡し接点)、バーチャルカスタマーサービス等の分野は、大いに改善の余地があり、すなわち大きなビジネスチャンスになる可能性を持っている

• ヘルステック
− 新型コロナのパンデミックにより、既存のヘルスケアシステムの不備が露呈した。病気の検出、予防、手頃な価格での治療の提供など、改善の余地は多い
− 主だった医療機器や消耗品の製造および価格設定は数社が独占していることが明らかになり、それ以外の会社は3Dプリンティング等、他に活路を見出すこととなった
− 現在、壊滅的な打撃を受けている「旅行」業界では、新型コロナ後の旅行者に対する「信頼性が高く迅速な検査」が極めて重要である

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以上のように、新型コロナ後の「ニューノーマル」時代に成功を望む全ての人が今までのビジネスモデルを真剣に再考し、変化に備え、適応することを学んでいく必要がある。新しいチャンスを逃さないためには、今後数カ月の事態の変化とそれに伴う「兆候」を素早く読みとり、社会・業界の傾向を注視していく必要がある。

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ExpertConnect Asiaは、東南アジアを中心に「各界専門家」ネットワークを組織化しています。それぞれの業界に精通した「C-Suite(CEOやCOO等の幹部経験者)」や経験豊かなオピニオンリーダーが、新型コロナ後のニューノーマル時代に生じる変局とビジネスチャンスに関して、1時間単位でアドバイスいたします。詳しくはwww.expertconnect.asiaからお気軽にお問合せ下さい。

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