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新型コロナと国内市場~サーキットブレイカー中のシンガポールで思うこと【2】

こんにちは。在シンガポールの中村です。日本では昨日、「緊急事態宣言」が5月31日までに延長されましたが、シンガポールではサーキットブレイカーの段階的な緩和が発表されました。6月1日までという期間自体に変更は無く、いったん禁止にしていた「ヘアサロン」「お菓子等、必需品では無い食べ物屋さん」等の営業を再び可能にするというものです。シンガポールでは毎日、政府から詳細なアップデートがありますが、コミュニティ感染が半減していることから、皆が一丸となって取り組んできた結果が出始めている証だと思います。この新型コロナ対策に関しては、ニュージーランド等と並んで成功していると言われるシンガポールですが、国内で一定以上の封じ込め成果があがったとしても、同国ならではの特徴から、ビジネス的にかなり深刻な打撃があると思われます。

1.人口564万人の国内市場とは

東南アジアはシンガポール以外にも封じ込めに成功しつつある国が多く、例えばベトナム、タイ、マレーシアは、続々と正常化に向けて動きだしています。今回の新型コロナで大打撃を受けている業界の筆頭である「航空業界」も、ベトナムやタイでは国内線が飛び始めています。一方、ベストエアポートとして名高いチャンギ国際空港を擁するシンガポールは、国の端から端まで、電車でも車でも約1時間で移動できる国土の狭さゆえ、「国内線」は存在しません。シンガがポールの戦略はあくまでも「アジアのハブ空港」ですので、この状況は大変深刻です。

いつも大変動きの早いシンガポール政府は、ターミナル2を18カ月閉鎖することを早期に決断しました。この期間に改装を行うとのことですが、一見効率的な時間の使い方に見えるものの、同時期に失われる雇用とビジネス的な利益を考えると、苦渋の選択だったでしょう。写真は、直近のターミナル2の様子ですが、こんなに誰もいないチャンギを誰が予想したでしょうか?

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2.シンガポールの航空&旅行業界

航空業界と密接に関わる「観光業界」ですが、同国の観光収入は約280億シンガポールドル(約2兆円)で、中国等からのインバウンドに大きく依存しています。ユニバーサルスタジオ、カジノ、オーチャードエリアに代表されるショッピング等、常に観光客で賑わっている同国ですが、新型コロナが深刻化した3月中旬以降、外国人の入国を原則禁止にしたため、街は信じられないほど閑散としています。

アメリカや日本等、国内に多くの都市・観光地がある国とは異なるため、シンガポール人がいわゆる観光スポットに行くことは、カジノ以外は殆んど無いと思います。しかしながら、この新型コロナの影響がどの程度の期間に及ぶのか現段階では予想が非常に困難なことから、まずサーキットブレイカー後の観光業の第一歩としては、「シンガポール国民」にシンガポール国内を再発見してもらうことになるのが現実的でしょう。

シンガポールツーリズムボード(観光庁相当の政府機関)CEOのKeith Tan氏によると、今後の観光業のキーワードの一つに「コンタクトレス」があり、ホテルのチェックインや様々な支払いにおいて、非接触化が加速。再びインバウンドの観光客が戻ってくるタイミングまでに、この点での準備を進めていくものと思われます。

3.”ウィズコロナ”時代のツーリズムとは

本来、旅行の意味合いとは、映像や活字からでは無く「実際に経験」することが最大の魅力です。これは家族や友達同士でのグループであれ、1人旅であれ同じでしょう。もし今後の世の中がポストコロナでは無く、「ウィズコロナ」になる場合、飛行機等で現地に移動する過程と目的地に着いてからの行動の両面で、今までとは非常に異なる世界になります。

この変貌の中で、革新的なイノベーションも期待できると思いますが、その一方で、「消滅してしまう業界や仕事」もあるでしょう。5月1日メーデーでリー首相がスピーチ(以下映像)をされていましたが、国としては、この現実を冷静に受け止め、無くなる仕事に関しては、それが無くなることを阻止することはせず、そういった仕事に就いていた方が今後の世の中で必要とされる仕事へのシフトすることに応援を惜しまないという明確な方針を示されました。

大変困難な時期であるものの、今までなかなか無くならなかったレガシーが消失する機会ともとらえられます。この過程で起こっていくであろうイノベーションを注視していきたいと思います。


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