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便器だってアーティストが芸術作品だと言えばそれはアートになる

間違いなく、20世紀美術に最も影響を与えた作品の一つは、マルセル・デュシャンの「泉」と言う作品だと思う。
この衝撃的の作品は、便器にサインを書いただけ。
20世紀の初め頃、1917年にニューヨークのアンデパンダン展という誰でも参加できる展展覧会に出展されました。
デュシャン自身が作っていない。既製品(レディメイド)。
自分の本名ではなく、架空の人のサインR.MATTが入っている。

美術作品と言う概念を考え直すという意図があった。
美術作品というのは、アーティストがサインを入れれば・・・これが作品だと言ってしまえば、それは作品として成立するという、新しい定義を世の中に提示したってこと。
それまでの美術作品というのは、目に前にある美しい絵だったり、彫刻だったりした。
常識的に考えると美とは真逆な「便器」、それも工業生産品を美術作品だと考えた。
その考え方そのものが、美術作品。

デュシャンはこの展覧会の審査員でもありました。
当時これは他の審査員がみんな反対して展示はされませんでしたその経緯も含めてアートだと言うこと。

「芸術はアーティストが生み出す作品だけで完結するのではなく、鑑賞者が創造的行為に加わることによって作品が完成する」

デュシャンが後年こんなことを言っています。
まさに、コンセプチュアルアートの誕生と言っても良い。

コンセプチュアルアートと言うのは1960年代以降に世界的に広まったアート
アイディアやコンセプト(概念)が作品の中心であり具体的な見た目よりも制作意図や意味、行為などを重視するそれがコンセプチュアルアートです。
目の前にある作品と言う具体的なものではなく、その裏側にある思想や背景そういうのを感じ取っていくと言うというのがコンセプチュアルアートの楽しみ。

見た目はただの便器ですが、それが答えではない。
しかし、便器にサインされたものが美術館という権威のある場所に展示されたとき、果たしてそれは便器なのか?それともアート作品なのか?
その当時の時代背景や他のアーティストとの関係、それをどういう意図で作ってどういう風に展示をしたか。
それを知ると、難解と言われている現代アートも面白いですよね。

これは後年の美術界に大きな影響をもたらす作品になるわけです。

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