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【ノベルゲーム】レイジングループ【感想】

※この記事はネタバレを含みます※


●あらすじ


旅行者・房石陽明は、バイク旅行中に道に迷う。コンビニ店員の案内で集落への道を進むが、崖で転倒してしまう。そこに現れた芹沢千枝実の助けで藤良村(ふじよしむら)にある休水(やすみず)という集落に身を寄せるが、霧が発生して房石は謎の生物に殺されてしまう。しかし直後にはバイクで道に迷っているところに逆行していた。選択を変えてその場を生き延びた房石だったが、村の伝統であるおおかみ様をくくる為の「黄泉忌みの宴」に巻き込まれることになる。


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●『 レイジングループ 』の登場人物(※ネタバレ注意)


〇房石 陽明(ふさいし はるあき)
本作の主人公。レイジングループにおける怪奇現象やいざこざをすんなり受け入れ、かつ自分はどうするべきかを考える力に秀でているので、基本的な物語の進行を務める面でのストレスは無い。

しかし、根柢の行動原理が「謎の解明、知らないことを知るワクワク感」である部分と、「その行動原理を満たすために利用できるか、できないか」という点で他人を見ている節があり、(本人も自覚していたが)かなり歪んでいる。殺せず、拘束も不可能な人狼役を足止めする方法として、平気で四肢切断を提案するような人間である。

かといって、完全な冷徹人間なわけではなく、変なところで情が出たり、最終的にはほぼ全員生存ルートを選ぶなど、人間として正当な部分も持ち合わせている。
好き嫌いが分かれる主人公だが、個人的には嫌いではない。

しかし、人間性が気持ち悪いキャラランキングがあれば、上位にランクインするであろう。


〇芹沢 千枝実(せりざわ ちえみ)
本作のヒロイン①。活発系陽キャヒロインで、房石陽明にとっての第一村人であり、正ヒロイン。(本筋ルートでは彼女が完全勝利を果たす)

房石陽明と同様、記憶保持で死に戻りができる人間であり、彼が来る前に何百回以上も繰り返しをしていくうちに心が壊れてしまった。

実は「黄泉忌みの宴」の首謀者である「三車家」の子孫であり、本名は三車千枝実。幼少期に見てはいけないものを見てしまったのがきっかけで、「三車家」から勘当されており、それ以来、見えない何かにひどく怯えている。

理由があったとはいえ彼女も歪んでいるが、人間性が気持ち悪い房石陽明に惚れるような女性なので、理由など関係なく元々歪んだ人間なのかもしれない。彼女のキャラクター性は例えるなら、「ひぐらしの×く頃に」に登場できるポテンシャルを持っているといえる。


〇回末 李花子(うえまつ りかこ)
本作のヒロイン②。ミステリアス系ドジっ子ヒロインで、本作のラスボス。負けヒロイン。(本筋ルートでは負けたが、彼女が勝つルートも存在している)

村の有力者である「四家」のひとつ、「回末家」の末裔。村の有力者という立場のため、本作のほとんどの登場人物からはあまり良い目を向けられていない。

彼女の目的は、回末家の悲願を達成すること。
回末家の悲願とは、太古の昔(葦原中国の頃)から国全体の負の感情(けがれ)を受け持つ役割の放棄と、そのような役割を持たせたことによる恨みから日本を滅亡させる。ということ。ずいぶんとスケールの大きな悲願である。

一気にけがれを引き取ることが不可能であったため、村の人々に(エッチな)夢を見させたりして、少しずつ少しずつけがれを引き取りつつ、日本を滅亡させる力をもつ巨大土蜘蛛の復活が叶うエンドに辿り着くまで何度もトライアンドエラーを繰り返していた。ずいぶんと気が遠くなる計画である。

しかしその計画は、記憶保持が可能というイレギュラーな存在である房石陽明(及び、後述のめー子)の手によって砕かれ、回末家の力を失い、呪縛から解き放たれ、普通の人間として生きていけるようになった。27歳独身ポンコツドエロ巫女。


〇巻島 春(まきしま はる)
本作のヒロイン③(?)。学生三人組の一人であり、ひねくれツンデレヒロイン。個別エンドも個別ルートも存在しており優遇はされているものの、芹沢千枝実、回末李花子と比べるとイチャイチャ要素は少ない。

それは、彼女の設定と話の内容の観点から、それどころではなかったという部分に起因する。

彼女は幼少期の事件がきっかけで、もう一つの人格である「かみさま」が登場するようになっている。それが二重人格なのか、はたまた本当の「かみさま」が憑いているのかは、最後まで明確な答えはなかった。(房石陽明は最終的にはそれを中二病だと判断していた)

また、彼女には別の思い人がおり、房石陽明のことを気に入ってはいたものの、本当に恋愛的な感情で気に入っていたのかは不明瞭である。それに彼女はまだ高校生であり、純情を弄ぶにはまだ少し早いお年頃である。
以上のことから、ヒロイン戦争に参加したというよりは、優遇されたサブヒロインというポジションで落ち着いている。


〇織部 泰長(おりべ やすなが)
学生三人組の一人。頭脳担当で、話し合いの基本的な進行役を務めている。

しかしながら、非道な判断ができないという、彼の優しさが甘さにつながってしまう場面が多く、それ故に失敗してしまうこともある。また、仕切りの上手さから、かなり序盤のほうで狙われてしまうこともある。更に、芹沢千枝実に密かな片思いをしていたという、全編通してなんとも不憫な立場のキャラクターである。

真面目で理論的な判断ができる一方で、感情論に弱いという彼のキャラクター性は好ましいものである。残念ながら本作では非道な判断ができる方が活躍しているが、彼が主人公として活躍できる作品がどこかの世界線に存在していたかもしれない。


〇醸田 近望(かもしだ ちかもち)
学生三人組の一人。通称モッチー。作中随一のトリックスターであり、ジョーカー。変な子。

高校生でありながら思考回路が読めず、どこで何をしでかすか、何を言い出すかわからないという、一緒にいると疲れるタイプの人間。さながら幼稚園男児のよう。

何も考えていないように見える彼だが、彼の行動原理の根柢には「巻島春(ここに織部泰長が入ることもある)が幸せかどうか」「自分がそれを楽しいと思うかどうか」が関わっており、巻島春が幸せになるのなら例え自分が死ぬことも許容できる。が、それ以外は本当にどうでも良く、興味がない。という歪な感情を抱いている。陽気でありながらドライである。

非常に勘が鋭く、心情を読みとったり、何の証拠もなく人狼を言い当てたり、ささいなきっかけで寝返ったりするので、なんとも厄介なキャラクターである。


〇室 匠(むろ たくみ)
みんなの頼れる兄貴分的存在。パワー型であり直情型。織部泰長よりも感情論に左右されがちで、扱いやすく、扱われやすい。かといって馬鹿ではなく、時には冷酷な判断もする。

ギスギスしている村の若者と老人を繋ぐ唯一の架け橋ではあるものの、自らで最終的な判断は老人側に委ねている。村の有力者である「四家」を嫌っている。

未亡人である織部かおりに好意を持っている。


〇織部 かおり(おりべ かおり)
ヒステリックママ。織部泰長と織部義次の母親。村の有力者である「四家」の一つ「日口家」に嫁いだが旦那が死去し、「日口家」から追い出された。

村人全員の胃袋を支える食堂の女将で、優しく、慈愛に満ちた母親ではあるが、心が弱く、基本的にどのルートでも彼女は狂う。息子たちを非常に大切に思っているのにも関わらず、どうにもならないと判断した場合、息子を殺して私も死ぬという極端な結論に辿り着きがち。


〇織部 義次(おりべ よしつぐ)
雨の中で捨て犬を拾うタイプのヤンキー。中学生で反抗期真っただ中。学校もサボりがち。

全ての物事に喧嘩腰で口を出してくるが、暴力をするわけではない。また、母親の織部かおりを「ババア」と呼びつつも、手伝いに参加したりするなど、言動の節々から「根は良い子」が滲み出ている。

兄の織部泰長とは正反対で、感情と根性で場を制しがち。その力は時に有益な展開に繋がるきっかけにもなるため、立ち回り方によっては役得なポジションといえる。


〇山脇 多恵(やまわき たえ)
昔から村に住んでいるおばあさん。通称多恵バア。室匠を孫のようにかわいがっている。

頑固老人①。基本優しく、含蓄のある存在ではあるものの、柔軟性がなく、昔からの言い伝えを遵守することに縛られている。そのため、村の若者たちとはあまりそりが合わない。

また、村の外からの人間を異様に嫌っており、何かにつけては引き合いに出し、批判しがちである。


〇巻島 寛造(まきしま かんぞう)
巻島春の祖父であり、唯一の家族だが、巻島春の事件をきっかけに、お互いに距離ができてしまう。

頑固老人②。自分が決めたことは絶対で、理論然とした結論を提示したとしても、言うことを聞かずに自分の決めたことを強行する。という独裁体制をとりがち。実際のゲームとしての人狼ゲームで同じようなことをすれば他ユーザから顰蹙を買い、BANされていることだろう。
場の最終的な決定権を持っているため、織部泰長同様、人狼に狙われることが多い。


〇能里 清之介(のさと きよのすけ)
村の有力者である「四家」の一つ「能里家」の次男。村の人からはボンクラと呼ばれている。村の一員ではないが、たまたま村の上層にある能里屋敷に訪れた際に巻き込まれてしまった不遇な人物。

普段から鼻につく物言いをしており、高慢ちきで性格が悪いと思われがちだが、作中では一律してまっとうなことを口にしており、基本的には話せばわかってくれる。
幼少期に回末李花子に助けられた(けがれを引き取った)ことを覚えており、それ以来、回末李花子を慕っている。

クローズドサークルでは真っ先に死ぬようなキャラクター性をしているが、「四家」関連の情報や、「回末家」に関係した人物であることから、登場する機会は多め。


〇狼じじい(おおかみじじい)
村一番のお年寄りで、本名不明。「おおかみがくるぞ」と嘘を吐くことから狼少年ならぬ狼じじいと呼ばれている。ボーっとしているかと思いきや、脈絡のない言葉を急に発するなど、一見ただの痴呆老人だが、もしかしたら演技なのかもしれないとされていた。

その正体は、戦後の時代、多くの世帯を殺した殺人鬼。
実際には困っている村人をそそのかし、住民を殺させ、その間に金品を横取りしていた、正真正銘の外道。痴呆老人は演技であった。金品横取りの最中に「黄泉忌みの宴」を管理している「三車家」の秘密を知り、見逃す代わりにルール違反者を殺すという役割を得ていた。


〇めー子(めーこ)
どこからか迷い込んできた謎の少女。彼女の存在に至っては物語の最後まで明確な答えがなく、考察要素である。
同制作会社の他ゲームに、大人になっためー子が登場しているらしい……。


〇馬宮 久子(まみや ひさこ)
元オカルトライター、現B級グルメライターの女性。クローズドサークルによくいる記者ポジションキャラクター。

大体の記者ポジションキャラクターは、野次馬根性で現場を訪れ、序盤で見せしめのために殺されるのが常であり、彼女も一番最初のルートではその末路を辿る。
別のルートではヒステリック要員になったり、また別のルートでは神話伝承解説役としてプレイヤー及び房石陽明に情報を与える要員になったりする。なんとも忙しいキャラだ。

個人的に神話伝承やオカルト話、そしてそれを心理学や科学と結び付けたりするのは大変好きなので、彼女の話はとても興味深く感じた。


〇橋本 雄大(はしもと ゆうだい)
馬宮久子と共に村を訪れた有名カメラマン。縦にも横にも身体が大きく、巨漢。彼は一番最初のルートで馬宮久子同様見せしめ要員として殺され、次に迎えるルートでも再序盤で死亡しており、存在感がない…かと思いきや、彼は終盤でがっつり活躍する。

頭がよく、理論派さんにも感情派さんにも納得のいく形で話に折り合いをつけたり、食堂で積極的にいろいろな人に話しかけたり、死体を見ても動じない。(戦場での撮影もあったことから慣れている)。もう彼一人でいいんじゃないかな。と言えるほど、非常に有能である。

また、持ち前の巨漢でタックルして暴走した相手をひるませるなど、パワー面でも頼りになる。味方にしたら超頼もしく、敵にしたら非常に厄介なキャラクターである。


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●『 レイジングループ 』の内容(※ネタバレ注意)


【黄泉ルート】

房石陽明は、彼女に振られて自棄になり、趣味のバイクで山道を走っていた。

夢中でバイクを走らせていると、すっかり夜になってしまい、道がわからなくなってしまう。

困った房石陽明は、途中で見つけたコンビニに寄り、地図を見せてもらうことにした。

ガラの悪いコンビニ店員は地図を見せながら、帰り道を辿るよりも、近くの集落を訪れて一泊した方が良いと勧める。

怪訝に思いながらもその提案を信じ、房石陽明はその集落への道を進む。

しかし、その道中に道を外してしまい、バイクごと斜面を滑り落ちてしまう。

余計に困った房石陽明は壊れてしまったバイクを置き、スマホのライトを頼りに歩き出す。

すると、川の近辺で若い女性を見かけた。

彼女の名前は芹沢千枝実。最近になって、故郷であるこの集落に帰ってきた女性である。

房石陽明の経緯を聞き、不憫に思った芹沢千枝実は、彼を自室に一泊させることを決める。

翌日、芹沢千枝実は、休水というこの集落の人々に、房石陽明を紹介する。

事情を聞いた巻島寛造と室匠は、房石陽明のバイクを村まで運び込んだ。

休水の住人は基本的に余所者を快く思っておらず、多くの住人から、バイクを直したらすぐ帰るように忠告される。

記者の馬宮久子、カメラマンの橋本雄大という余所者もいたため、昔からの住人である山脇多恵は特に神経質になっていた。

能里清之介から道具を借り、なんとかバイクを修理し終えた頃には、日が暮れ始めていた。

すると突然、とても濃い霧が休水を埋め尽くす。

住人たちは大慌てで何やら支度を始めている。

芹沢千枝実は、何もわからない房石陽明に対して、今夜は絶対外に出ないように伝え、房石陽明は無理やり簡易便所に押し込まれてしまう。

なんとか生き残った房石陽明は、変わり果てた姿で発見された馬宮久子と橋本雄大の死体を発見する。

そして芹沢千枝実は、この村に昔からある『黄泉忌みの宴』や、夜の過ごし方についてを房石陽明に説明した。

『黄泉忌みの宴』は村人全員参加の話し合いであり、岩に示された模様の数と同数のおおかみが、村人の中に紛れている。

『黄泉忌みの宴』で疑わしきものを吊るし、おおかみを排除していくというのが最終目標だ。

おおかみ側は話し合いに参加しながら、村人たちに見つからないように振る舞い、夜の間に村人を殺していかなければならない。

村人側にはへび、くも、からす、さるという加護を持った人間がいる。

へびは一晩に一人、誰がおおかみかを知ることができる。

くもは一晩に一人、おおかみから守ることができる。

からすは一晩に一人、吊られた者がおおかみかどうかを知ることができる。

さるは二人おり、お互いがさるであるということがわかる。

村人たちは夜になると風呂に入るなどして身体を清潔にし、一人一つの部屋に閉じこもり、睡眠しなければならない。

また、これらの決まり事を守らない人や、休水から出ようとすると、『けがれ』という現象を起こし、見るも無残な姿で死んでしまうという。

そんな決まりを知る由もない馬宮久子と橋本雄大は、『けがれ』によって殺されたのだろうと推測された。

しかし、それを聞いたところで、村人ではない房石陽明には『黄泉忌みの宴』の参加権利がない。

『黄泉忌みの宴』の最中は村人たちから蔵に閉じ込められてしまい、唯一、芹沢千枝実から得る情報だけで、状況を把握していた。

話し合いの内容や参加者の様子などを知り、色々なことを考えても、部外者である房石陽明にはどうすることもできなかった。

次々に犠牲者が増えていき、『黄泉忌みの宴』が終盤に差し迫っているとき。

房石陽明は意を決して、『黄泉忌みの宴』が開催しているお堂に乱入する。

するとそこには、織部泰長と山脇多恵、そして巻島春、芹沢千枝実の姿があった。

今回の『黄泉忌みの宴』はおおかみが二人存在し、織部泰長と山脇多恵の二人が、おおかみとして村人たちを殺していた。

そして巻島春は、おおかみである織部泰長に陶酔しており、三人はまるで人の心を失ってしまったかのような狂気を浮かべていた。

混乱する芹沢千枝実と、何もわかっていないめー子を連れ、房石陽明は休水を飛び出した。

霧で何も見えない道を、ただひたすらに走っていく房石陽明、芹沢千枝実、めー子。

手を繋いで走っていたが、突然、芹沢千枝実の様子がおかしくなっていく。

身体や顔がボロボロに崩れ始め、人間としての原型が壊れてきているようだった。

房石陽明はそんな彼女にキスをして、何としても絶対にここを脱出し、二人でバイクに乗ってツーリングすることを誓った。

そして、また進み出すと、繋いでいたはずの芹沢千枝実手が崩れ落ち、跡形もなくなってしまった。

房石陽明もまた意識が薄れ始め、死を覚悟する。

自分が『黄泉忌みの宴』に参加していれば……

彼は薄れゆく意識の中、そう思った。

【機知ルート】

房石陽明は、彼女に振られて自棄になり、趣味のバイクで山道を走っていた。

夢中でバイクを走らせていると、すっかり夜になってしまい、道がわからなくなってしまう。

……彼は、この流れにデジャヴを感じた。

房石陽明は、『黄泉忌みの宴』の一連の出来事を、確かに記憶していたのだった。

記憶を保持していたため『黄泉忌みの宴』の参加権利を得るチャンスができた房石陽明は、コンビニで色々な道具を集め、早速、休水を管轄している藤良という村を訪れた。

何度か死に戻りをしつつ、お得意の口八丁手八丁を繰り出し、『黄泉忌みの宴』が始まる前の段階で、休水の住人となることができた。

そして房石陽明は、恐らく『けがれ』で死んでしまったであろう、馬宮久子と橋本雄大を救うため、彼女らに夜の過ごし方について説明した。

すると前回と同様の時間帯に、また前回と同じような濃い霧が休水を埋め尽くした。

翌日、橋本雄大が変わり果てた姿で発見された。彼はまた、『けがれ』で亡くなってしまった。

彼が留置した場所にはトイレがなかったため、房石陽明は、彼がトイレをしに外に出てしまい、『けがれ』を受けたのだろうと推察した。

前回の房石陽明のような立ち位置になってしまい、ひどく取り乱す馬宮久子を落ち着かせ、『黄泉忌みの宴』が始まる。

今回の『黄泉忌みの宴』にはおおかみが三人おり、房石陽明は村人。そして、へびの加護を司っていた。

『一晩に一人、誰がおおかみかを知ることができる』というへびの加護を駆使し、着実におおかみ側を追い詰めていく房石陽明。

『黄泉忌みの宴』が終盤に差し迫っているなか、村の有力者である「四家」のひとつ、「回末家」の末裔・回末李花子が彼の部屋を訪れた。

今回は芹沢千枝実ではなく、回末李花子と良い関係を結べている房石陽明は、死に戻り能力と回末李花子を使い、最後の不安材料を取り除く。

同じ頃、房石陽明の部屋を訪れた芹沢千枝実は、部屋の外で泣き喚きながら彼に本心をぶつけた。

その内容は、房石陽明が回末李花子と良い関係になったことに対しての不満だった。

しかし、今回は芹沢千枝実との仲はそれほど深まっていなかった。それなのに、そんな不満をぶつけたのだ。

まるで、芹沢千枝実も前回の記憶を持っていて、今回の流れに納得がいっていないかのようだった。

『黄泉忌みの宴』の最終日。おおかみの正体は芹沢千枝実と醸田近望、そして馬宮久子であった。

最終日まで残っていたおおかみは、芹沢千枝実と醸田近望の二名。

彼女たちはおおかみであることが判明した瞬間、隠し持っていた猟銃を村人たちに突きつける。

決まりを守らずに残った村人たちを追いかけまわし、次々と殺していくおおかみたち。

これにより房石陽明は命を落とした……

……しかし、彼には死に戻りの能力がある。

おおかみの悪足掻きが発生する前に、回末李花子協力のもと、猟銃に細工をし、凶器を使えないようにしていた。

困惑する芹沢千枝実と醸田近望をよそに、残った村人たちが彼女たちを取り押さえる。

しかし、『黄泉忌みの宴』で人を吊るせるのは一人のみ。もう一人のおおかみをどう処置するか考えているなか、房石陽明は四肢切断を提案。

残った村人たちはドン引きし、芹沢千枝実は笑いながら、房石陽明を頭がおかしいと称した。

そして、醸田近望は村人たちに吊られて殺され、芹沢千枝実は自ら崖から飛び降り、命を絶った。

数日後、房石陽明は改めて、この休水という地で暮らしていくことを決意した。

それは、お互いに思いを寄せ合っている回末李花子と共に人生を過ごしていくためだった。

『黄泉忌みの宴』の功績のおかげで村人からも良い目を向けられており、房石陽明はこの地で幸せになる準備段階にあった。

本格的な移住のため、房石陽明は一度自分が元居た場所へと帰った。めー子も連れて行き、その地で保護してもらった。

回末李花子へ送る指輪を持ち、休水へ帰る房石陽明。

そこで目にしたものは、生き残った村人たちが全員頭から血を流し倒れている様子であった。

『黄泉忌みの宴』は終わったのではないのか?何故、こんなことが起きているのか。

房石陽明は困惑しながらも、お堂へと足を踏み入れた。

そこには、首をくくり、息絶えた回末李花子の姿が。

お堂で首を吊って死んでいる彼女を見て、房石陽明は絶望の表情を浮かべる。

同じくお堂にいた能里清之介が、血塗れの斧を持ち、彼自身もまた血まみれになりながら、取り乱した様子で回末李花子を見上げている。

意気消沈のなか、房石陽明は能里清之介を殺害した。

今回もうまくいかなかった。房石陽明は自ら息を引き取った。



【暗黒ルート】

房石陽明は、前回と同じ流れで道を迷い、前回と同じ流れですべてを思い出し、前回と同じ流れで村人となった。

房石陽明は、恐らく『けがれ』で死んでしまったであろう、馬宮久子と橋本雄大を救うため、彼女らに夜の過ごし方について説明した。

すると前々回、前回と同様の時間帯に、また前々回、前回と同じような濃い霧が休水を埋め尽くした。

前回は橋本雄大がトイレのないプレハブに泊まったことが原因で、彼は『けがれ』を受けてしまった。

そのため今回は房石陽明がプレハブで一晩を過ごすこととなった。

翌日、『けがれ』により変わり果てた姿で発見された者はいなかった。全員が『黄泉忌みの宴』に参加できる状態になった。

橋本雄大がいるおかげで、馬宮久子も落ち着いた様子で宴に参加することができていた。

今回の『黄泉忌みの宴』にはおおかみが三人おり、房石陽明は……おおかみだった。

前々回も、前回も、おおかみは何やら洗脳されたような状態になっており、村人を殺すことが正しいと思い込んで行動している様子だった。

房石陽明もそれは薄々感じていた。そのため、自分はその考えに取り込まれないように、尚且つおおかみとして行動しなければならなかった。

おおかみは房石陽明の他に、巻島春、織部かおりが選ばれていた。

巻島春は比較的落ち着いた様子で、おおかみ同士の話し合いに参加していたが、織部かおりはひどくやつれていた。

それもそのはず、彼女は愛する息子二人を殺さなければならなくなってしまったのだ。

織部かおりは度々ヒステリーを起こすので扱いが難しい。そのため、房石陽明はお得意の口八丁手八丁で彼女を言いくるめた。

それは、織部泰長と織部義次を優先的に殺害し、その後で織部かおりも殺害するという内容だった。

織部かおりはそれに同意をし、なんとか彼女の手綱を引くことができた。

おおかみとしての任務は主に、房石陽明と巻島春が率先してアイデアを出し、実行に至った。

彼らはそんな狂った環境のなかで、次第に仲を育んていった。

しかし、お互いに恋愛的な感情はあまりなく、何とも奇妙な関係で留まっていた。

巻島春は過去に『けがれ』の影響をわずかに受けてしまい、『かみさま』という二重人格のような存在に成り代わることがあった。

そのため房石陽明は、巻島春と『かみさま』という二人と絆を深めていったのだった。

前回、まるで自分も記憶を保持したまま巻き戻っているかのような口ぶりを見せた芹沢千枝実。

房石陽明は今回で彼女にいろいろなことを聞こうとしていたが、芹沢千枝実は早々に自殺をしてしまう。

意図がわからず困惑する房石陽明だったが、『黄泉忌みの宴』は滞りなく催されていた。

今回の『黄泉忌みの宴』で村人側に救いの手を差し伸べたのは、カメラマンの橋本雄大だった。

彼は仕事で戦場に赴くこともあったため、無残な死体への態勢を心得ており、一人一人にしっかりとしたコンタクトを取っていた。

また分析力や適応力、判断力も高く、村人側にとっては彼はかなり信頼できる立ち位置として活躍した。

織部かおりは村人側の混乱を招くため。そして、巻島春は房石陽明を庇うため、既に吊られてしまっており、

残るおおかみは房石陽明だけとなった。

橋本雄大がメインとなる村人側の活躍も虚しく、『黄泉忌みの宴』はおおかみ側……房石陽明が勝利を果たしたのだった。

おおかみ側の勝利という新しい世界線を辿った房石陽明は、めー子と共に食堂から外へ出た。

すると突然、轟音と共に、非常に大きな化け物が、休水の村を覆いかぶさっていた。

突如として現れた巨大怪物を見て混乱する房石陽明。

おおかみが勝利すると、巨大怪物が現れ、地球滅亡エンド?意味が分からない。

そんな中、またしても突然、時が止まり、房石陽明の前にぬいぐるみのような『ひつじ』が現れた。

(ゲーム中、死亡エンドを見た後にヒントコーナーで『ひつじ』がヒントをくれるのだが、その『ひつじ』と同じ『ひつじ』が突然現れたのだ)

『ひつじ』は房石陽明と口論した挙句、なにやら焦った様子で彼をまたループの軌道に戻したのだった。

『ひつじ』は、もう二度とここには戻ってくるなと言い残した。

今まで残った謎を全て知る必要があると推察した房石陽明は、何度も繰り返して情報を得ることに専念することにしたのだった。



【神話ルート】

房石陽明は、何度も何度も『黄泉忌みの宴』を繰り返し、死に戻り、今までに行っていなかったことを行ったりして、手がかりを得た。

一つ目は、『黄泉忌みの宴』の謎。

房石陽明は、休水の有力者である「四家」の一つ「能里家」の次男であり、藤良村に最も近い存在である、能里清之介のもとを訪ねた。

そして房石陽明は、どうせ死ねばなかったことになるだけだと思い、今までにあったことを全て暴露する。

非常に困惑する能里清之介だったが、余所者が知り得ない情報を持っていたことと、元々オタク気質がだったことが功を奏し、彼の先祖が残した調査記録を閲覧することができた。

実は『黄泉忌みの宴』は、全て人為的な行いであった。

今もその名残があるが、元々、休水は藤良村で行き場を失ってしまった者を追放するための場所であった。

その休水の人々の増加を防止しつつ、犯罪に引っかからないような処置をするために行われていたのが、『黄泉忌みの宴』だったのだ。

まず手始めに「四家」は、おおかみ、へび、くも、からす、さるにまつわる昔話や、『けがれ』などといった伝承を、休水に広めていった。

これらの言い伝えが根付き始めると、『黄泉忌みの宴』という行事を実施。休水の人々はまんまと代々それを受け継いできていたのだ。

『黄泉忌みの宴』前に発生する濃い霧は、有害なガス。

おおかみが村人を襲う際に鍵が勝手に開くのは、遠隔キー。

『黄泉忌みの宴』の流れを把握することができるのは、監視カメラと盗聴器。

休水の人々に気づかれずに行動できるのは、皿永という川の下に隠し通路があるから。

まさに、「藤良の人は、休水にこんな大掛かりなことをするほど暇ではないだろう」という固定概念を逆手に取った行いであった。

二つ目は、芹沢千枝実の謎。

芹沢千枝実もまた、房石陽明と同様に、記憶を保持したまま死に戻りを経験していたのだった。

ようやく同じ境遇の人物に会えたことが嬉しく、彼女は散々泣き喚いたあと、今までの経緯を説明した。

芹沢千枝実は房石陽明が休水を訪れる前から、四ケタ近い回数も、死に戻りに巻き込まれてしまっていた。

途中からその流れに乱入してきためー子、及び房石陽明のおかげで、ループの開始日がズレたりなど、いつもの同じ流れに違いが生まれたのだという。

しかし、『黄泉忌みの宴』を何度も繰り返すうちに、彼女からは、このループから脱出するという気力が失われてしまっていた。

さらに、『どのように人を殺すか』という暇の潰し方をして楽しむしかないような精神状態にまでなっていたのだった。

だが、ここで一つ疑問が浮上する。二人がお互いに『死に戻り』をしているのはおかしい。

房石陽明が死んでも『黄泉忌みの宴』は最後まで完遂されたし、芹沢千枝実が死んでも『黄泉忌みの宴』は最後まで完遂された。

では、どういった起点でループが発生しているのだろうか?

房石陽明は、とある一つの結論へと辿り着いたのだった。

霧が発生する前、芹沢千枝実は房石陽明の命令に従い、休水の人々を集めさせた。

そしてそこに、おおかみが襲撃する際に用いる装束を身にまとった、房石陽明が登場する。

房石陽明は自らを、休水の人々が信仰している『おおかみさま』であると名乗る。

村人たちは混乱するが、今までのループで得た知り得ない情報を提示することで、それを信じ込ませた。

房石陽明は、『おおかみさま』の言葉を通して村人たちの苦悩を開放していく。

そして『黄泉忌みの宴』が発生する前に、彼らを別の場所へ逃がしたのだった。

更に房石陽明は、『黄泉忌みの宴』の首謀者である「三車家」とも対峙する。

過去のしがらみや、根付いてしまった神話。そして、休水への対処に対して、お得意の口八丁手八丁で述べていく。

実は「三車家」の長も、『黄泉忌みの宴』の引き際に関して思案していたため、房石陽明が用意したストーリーに賛同した。

(後日、房石陽明は、「三車家」が解体されたというニュースが小さく報道されたの見かけるのだが、それはまた別の話。)

残るは、ループ問題のみ。

この不思議な繰り返しは、回末李花子によって引き起こされていたものだった。

「回末家」は代々、太古の昔(葦原中国の頃)から国全体の『けがれ』を引き取る役割として存在していた。

『けがれ』には様々なものが取り上げられ、病気や怪我、心の病、負の感情、欲望など、多岐にわたっていた。

そのため昔は寝屋の端女として、人々を悦ばせるような行為をしており、『けがれ』を引き取る際も、魅惑的なアプローチを行うのだという。

そして、回末李花子は「回末家」の悲願を達成させるために、何度も何度も『黄泉忌みの宴』を繰り返していたのだ。

「回末家」の悲願とは、『けがれ』を引き取るという役割の放棄と、そのような役割を持たせたことによる恨みから日本を滅亡させること。

しかし、唯一の末裔である回末李花子は『けがれ』を少量しか引き取れず、悲願を達成することが難しかった。

そのため、『黄泉忌みの宴』を繰り返し、休水の住人から『けがれ』を少しずつ引き取り、悲願達成のために力を蓄えていた。

そして巨大怪物…土蜘蛛へと変貌を遂げ、日本を滅亡させるのに最適なルートを模索していたのだという。

つまり、巻き戻りが発生するのは ” 回末李花子が死んだとき ” だったのだ。

芹沢千枝実が記憶を保持したままループに捉われていたのは恐らく、過去のトラウマがきっかけなのだろう。

房石陽明が記憶を保持したままループに捉われていたのは、『ひつじ』の力である。

『ひつじ』の力に関してはあまり情報がないが、正体については判明している。

本名は美辻といって、正真正銘、房石陽明の元カノである。

なんと、房石陽明がバイクで山道を彷徨う原因となった、あの元カノである。

(何故、美辻がそのような能力を持ち、何のために房石陽明にこのようなことをさせたのかは、最後まで不明瞭だった。)

房石陽明の仕業で、自らの行いの秘密を明かされた回末李花子だったが、房石陽明は以前(機知ルートの際)、彼女とある契約を交わしていた。

その契約とは、房石陽明は回末李花子の手籠めになる。といった概要の契約であった。

「回末家」の力を使って、契約を成立させようとする回末李花子。しかし、その契約を成立することができなかった。

困惑する彼女に対して、房石陽明は告げる。

契約の際に用いた名前…房石陽明は本名ではない、と。

なんと彼は、最初から偽名を使い続けていたのだ。

契約が叶わず、自棄になった回末李花子は、徐に包丁を取り出し、自らの首元に近づけた。

回末李花子が死ねば、またループの起点に戻ってしまう。そして、次は、きっとすぐにでも土蜘蛛になって悲願を達成させるだろう。

するとそのとき、突然停電が発生。暗闇の中、回末李花子の悲鳴が響いた。

電気はすぐに復旧し、回末李花子はその場に倒れこんでいた。しかし、ループは起こっていない…。

そして、目覚めた彼女の身体からは、「回末家」の能力が欠落していた。

停電の間に、何者かによって、取り除かれてしまったのだろうか。

謎は謎のまま、もう二度と土蜘蛛にもなれず、『けがれ』も引き取れず、死に戻りもできない。

回末李花子は、普通の女性になってしまった。

それは、彼女が密かに望んでいたことでもあった。

回末李花子は契約に関して騙されていたことを恨み、房石陽明に対し、小学生のような悪口を残す。

休水を巡る全ての出来事は、これにて収まったのだった。

後日、芹沢千枝実は房石陽明のもとを訪れる。

そして彼女は、謎に包まれていた房石陽明の素性を知ることとなる。

彼の職業は、小説家。

お得意の口八丁手八丁や、「三車家」に伝えたストーリーも、その職業故にできた所業だったのだろう。

近況報告が一通り終わると、芹沢千枝実は彼をツーリングに誘う。

それは、房石陽明が一番最初に休水を訪れた際、二人で交わした約束だ。

これからは、死んでもやり直しが効かない、普通の人生が再び始まる。

二人とバイクが映った一枚絵を最後に、この物語は幕を閉じた。


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●『 レイジングループ 』をプレイした感想(※ネタバレ注意)


本作の良かった点、気になった点を箇条書きしていく。

【良かった点】

ストーリーが良い
個性豊かなキャラクター
物語を何重にも楽しめるシステム


【気になった点】

声優が素人っぽい
ギャグ、ノリ、ネタがキツい部分がある


次に、良かった点から順に述べていく。


【良かった点】

〇ストーリーが良い

本作が評価されている部分のほとんどは、この点であろう。

物語の内容も良いがそれ以上に、情報の提示や登場人物の理解度などの塩梅が上手い。

プレイヤーに推理させる余地を与えつつ、かといって全ての情報がすぐにわかるわけではない。

また、主人公の房石陽明を含むキャラクターたちは、変な行動をすることはあっても、それを行うに値する意思を持っているため、キャラクターに嫌な気持ちを抱く機会が少ない。その辺の力の入れ具合が非常に上手いのだ。

そのため、ストレスフリーで物語をサクサク進行していくことができるのは、読み物としての質が高いといえる。

 

さらに、本作に登場する「黄泉忌みの宴」の内容はほとんど人狼ゲームのルールそのままなので、とっつきやすさもある。

文章にも難しい言葉はそれほど使用していない点も、読みやすさの一因として挙げられるだろう。

全てのルートを攻略するまでのプレイ時間はそれほど長くはないが、ずっと「続きが気になる」展開が続くので、中断するタイミングを逃してしまうと、徹夜することになってしまうので要注意。

もちろん、物語の内容もしっかり面白い。

まず、「黄泉忌みの宴」によって住人たちの心情や関係性に亀裂が生まれ、疑心暗鬼になっていく様子は、人狼ゲーム、デスゲームを題材とした作品には欠かせない要素だが、ここの描写の生々しさと手に汗握る展開が面白い。

キャラクターのほとんどが昔馴染みだったり、親戚同士だったりするため、キャラクター同士の好き嫌いやバックグラウンドが、「黄泉忌みの宴」で悪い展開に向かうため、人間ドラマに非常に深みが出ていて見応えがある。

そして、ストーリーの根柢に関わる部分。「黄泉忌みの宴」は何故行われているのか?首謀者は誰か?何故世界はループしているのか?という部分に関しても、日本神話や伝承、オカルト的要素を組み込みつつ、ある程度は納得のいく形で落ち着いてくれる。

 

ただ、上記で挙げた、ストーリーの根柢に関わる部分が、気に食わない。もしくは、納得がいかない。と思う人がいる可能性もある。

答えに繋がるための情報がガバガバだったり、こじつけっぽく思える部分が多少なりともあるからである。

あくまで創作の物語の事柄なので、リアリティを持ち込んで突っ込みすぎるのではなく、「そういうもんか」と、ある程度なあなあで済ませるというのも、物語を楽しむうえで必要なスキルなのではないだろうか。


【良かった点】

〇個性豊かなキャラクター

本作ではキャラクター全員に、明確な長所と短所が存在している。

また、キャラクターの境遇はもちろん、個人個人で年齢、性別、体格、感性、意思などなどに大きな違いがあったため、「黄泉忌みの宴」での人間模様が生々しく感じられた。

色々なルートでキャラクターの色々な面を見ることができるため、キャラクターたちの人間性や考え方をより深く知ることができる。という点の良さもかなり大きい。

それら要素のおかげで、それぞれのキャラクターに人間性が付与され、実際に生きているかのような動きをしてくれる。(房石陽明を除く)そういった点は物語に入り込むうえで欠かせない要素であり、本作ではそれが顕著であったように思う。


【良かった点】

〇物語を何重にも楽しめるシステム

本作は大きく分けて3つのルートがあり、それぞれに向かうための分岐点や、死亡エンドが多数存在する。

房石陽明が死亡エンドを迎えると、全部で1~20のKEYの中から特定でいずれかのKEYを手に入れることができる。

手に入れたKEYの組み合わせによって、分岐点が増えたり、今まで選べなかった選択肢を選ぶことができる。

また、ストーリー全体がチャプターとして細かく分かれており、いつどのタイミングでも選択肢を変更することができる。

そのため、選択肢の前でいちいちセーブする必要がなく、気になるところや見返したいところをすぐに読み返すことが可能になっている。

死亡エンドを踏んでしまった際の救済措置として、ヒントコーナーを見ることができたりもする。

更に、隠しエンディングや、後日談といったおまけコンテンツも多数存在するので、本編とは違った彼らの結末を覗き見することができる。

この時点でノベルゲームとしてはかなり楽しめるシステムが実装されているといえるが、本作にはもう一つ、良い特徴のシステムがある。

それは、暴露モードという機能である。

暴露モードは、3つ全てのルートをクリアした際に登場するシステムで、その名の通り、キャラクターの心情がわかる。

これは今までプレイした全てのストーリーに組み込まれており、このときにこのキャラクターがどう思っていたのか?という、なかなか知りえない

キャラクターの本心を知ることができるので、物語を何重にも楽しむことができる。今までにない斬新なシステムである。

しかしながら、3つ全てのルートをクリアするまでそれなりに時間を要し、内容も濃厚なので、暴露モードありで2週目をプレイするのは少々根気がいる。そういう人には、気になるチャプターのみ暴露モードをONにしてみるという手もある。

もしこれからプレイする人や、暴露モードを一度もONにしていない人がいれば、神話ルートで回末家の陰謀を阻止したチャプターだけでも、ぜひ暴露モードで読み返してみてほしい。謎の少女であるめー子に関する情報を得ることができるので、めー子に対する考察を深めることができる。

次に、気になった点について述べていく。


【気になった点】

〇声優が素人っぽい

本作はドワンゴとのコラボレーション作品と銘打たれており、ドワンゴクリエイティブスクールに所属する声優を起用している。

いわゆるアマチュアの声優であるため、若干棒読みのように感じる部分もある。

しかし、その中でもかなり上手な声優もいるため、全員が全員下手なわけではなく、少し気になるといった程度である。

恐らく多くのプレイヤーはプレイしていくうちに慣れてくるため、そこまで非難するようなことでもない。


【気になった点】

〇ギャグ、ノリ、ネタがキツい部分がある

あまりこういうことを言うようなものではないが、ギャグ、ノリ、ネタが少しおじさんっぽいなと感じた。

クスリと笑えるギャグ展開もあるのだが、基本的に多くのギャグは「若干キツい」。

昔のFLASHネタや、う〇こ、おし〇こ、などの低レベルな下ネタなど、生理的に受け付けないほどではないが、どこか滑っている。

上記の気になった点とも関連するが、声優の演技がそこまで上手ではないから、滑った感じに聞こえるという可能性もある。

3つのルートとは別に、2つの隠しエンディングがあるのだが、その2つの隠しエンディングのノリが一番キツかったかもしれない。

しかし、物語の面白さが非常に勝っているので、目をつぶれる程度の許容範囲ではあるとは思う。

これからプレイする人は、その点を少しだけ覚悟してプレイしてみてほしい。


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●今回レビューした映画の詳細


題名:レイジングループ

発売元:ケムコ(KEMCO)

発売日:2015年12月3日(スマホ版)

     2017年1月11日(コンシューマー版)

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