見出し画像

全てのロケット・ミサイルの祖先 V2ロケット

昨今、日本の周辺国がミサイルを打ち上げるなど軍事的な行動をとっています。その国が使う手段は「ミサイル」。特に「大陸間弾道ミサイル(ICBM)」という言葉がニュースで流れると世間は騒然とするイメージがあります。では、歴史上で初のミサイルと呼ばれている兵器はどんなものなのでしょうか。それが今回紹介するV2(A4)ロケットです。

画像1

V2ロケットは、第二次世界大戦時にドイツが開発した世界で初めてのミサイル・ロケットです。これが元になり、現在のアメリカやソ連(ロシア)で使われているロケットが設計されたという宇宙開発史にとって非常に重要な存在です。

<データ>
打ち上げ国:ドイツ
全長:14m
最大直径:1.8m
ペイロード:997kg
推進剤:アルコールと液体酸素
推力:7万2480重量キログラム
運用開始:1944年
運用終了:1945年

<名前の由来>

V2のVとは、ドイツ語でVergeltungswaffe(フェルゲルトゥングスヴァッフェ)と言い、「報復兵器」という意味。
つまり報復兵器2号を意味する。

<歴史>

では、どのようにしてドイツから世界中に広まっていったのでしょうか。

V2ロケットを設計したのはフォン・ブラウン博士。彼は、ドイツ近郊の国ポーランドで育ちました。ドイツには、ロケット好きの集まる同好会「ドイツ宇宙旅行協会」があり、フォンブラウンも所属していました。なんとここでは、ロケットの研究が行われていたのです。

画像7

時は、第一次世界大戦終了後。ベルサイユ条約の発効により、ドイツは戦車や軍艦などの開発や使用に制限がかかっていました。そこでドイツ陸軍は「ドイツ宇宙旅行協会」が開発していたロケットに目を向けたのです。陸軍のドルンベルガー将軍がフォン・ブラウンにロケットの開発をするように命じ、なんと資金まで提供しました。この時、フォン・ブラウンは夢中になってロケットを研究。幾度の失敗を重ね、ようやく1942年10月3日、V2は世界で初めて宇宙空間に到達した初めての人工物となりました。

しかし、V2は今のようなれっきとした宇宙空間へ飛び立つ「ロケット」ではありませんでした。1944年ドイツの領地だったベルギーからフランス・パリに向けて「ミサイル」という<兵器>としてV2は打ち上げられたのです。戦争が終わるまでに、約3200発のV2打ち上げられたと言われていますが、実際には分かりません。他の兵器よりも音を立てずに、前触れもなく落下してくる姿に恐怖を覚えたことでしょう。V2により、イギリスやオランダは攻撃され、凄惨な姿となりました。

ついに第二次世界大戦が終わると、ドイツで培われた技術はアメリカとソ連(ロシア)に引き継がれることになります。その後の両国の様子をちょっと見てみます。

○アメリカ
フォンブラウン率いるグループは、隠してあった設計図を押収しアメリカへ亡命しました。そこでV2をモデルとしてロケット開発を行いました。ゼネラルエレクトリック社(エジソンが設立した電機メーカー)が組み立てと発射を担当。


画像2

次に開発されたのが、形状が似ている「バンパー」ロケット。このロケットは主に上空の温度を測定したり、宇宙線(放射線の一種)を観測したりします。いわば「観測ロケット」です。主に2つのパートに分けられており、第一段はV2を使用、第二段は高度400キロメートルまで飛ぶエンジンが備え付けられています。

○ソ連(ロシア)
ソ連もまた、V2と大量のドイツ技術者を確保しました。第二次世界大戦後のドイツで情報収集を行なったのはロシア宇宙開発のエース、セルゲイ・コロリョフでした。彼は、V2を元にミサイルの開発を行い、開発から10年以内にR-7ミサイルを完成させました。

画像4

R-7ミサイルは、太平洋を飛び越えてアメリカまでも射程距離に入れてしまう勢いがありました。今のソユーズロケットの原型であり、その歴史は長く、安全性も世界一です。


画像4


画像5

画像6

打ち上げは、台車に乗せられて、発射できるように工夫がなされました。

機体の色が白と黒なのは、飛行試験の時に観察しやすくするためだと言われています。実戦で使用された時には「カモフラージュ塗装」されました。

16分25秒くらいからV2が登場します。。

<参考文献>

http://spaceinfo.jaxa.jp/ja/kaihatu_rocket_v_2.html
ロケットの科学(サイエンスアイ・新書)谷合稔

http://www.v2rocket.com
月へ 人類史上最大の冒険 ロッド・パイル 三省堂 P16・17

(写真はNASA、 wikipedia)

20200419 一部改訂
20200423 名称の由来追加
20201225改訂
20201226改訂2






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?