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「こうのとり」:宇宙と次世代の架け橋 最終フライト迫る

小さい時「ボク、ワタシは、どうやって生まれたの?」そう聞いたことはあるでしょうか。そんな時、日本人は決まってこう答えます。「こうのとりが運んできたのよ。」

日本が誇る国際宇宙ステーション(ISS)補給船<HTV>「こうのとり」とその打ち上げに使われる「H-ⅡBロケット」がラストフライトを迎えます!!打ち上げ時間は5月21日午前2:30(日本時間・予定)です。これまでの成功率は100%。日本と世界の信頼を誇る技術です。しかし、まだ「こうのとり」が開発され始めた頃、NASAでは「HTVが来ないことがISSの安全」と言われたそうです。それでは、今日は、ラストフライトを迎えてしまう「こうのとり」についてどこがどうすごいのか、説明していきます。

①「こうのとり」の役割

宇宙空間で地球を周回する国際宇宙ステーション(ISS)に荷物を運びます。ISSには常に6人の宇宙飛行士(クルー)が滞在しています。そのため、食べ物や生活必需品を運ぶ必要があります。具体的に説明すると、クルーの食料や衣服、飲料水、実験器具などの船内で使われるものに加えて宇宙空間で実施される実験器具や機器なども積んでいます。

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②「こうのとり」のデータ・構成

全長:約10m
直径:約4.4m
総重量(中身あり):最大16.5t

この大きさは、大体観光バスが一台丸々入るぐらいの大きさ(?)です。

「こうのとり」は全部で4つの部分に分かれます。

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上の写真と解説は、NASAから引用したものです。

赤い四角で囲んだ部分に荷物を入れます。主に2カ所あります。
上の「補給キャリア与圧部」には、船内で必要な物資を載せます。ISSとドッキングする事でクルーが直接船内に入ることができ、物資に積み下ろしを行います。気圧も地球と同じ数値(1気圧)になっています。

下の「補給キャリア非与圧部」は、曝露パレットと呼ばれる引き出しのようなものを格納します。曝露パレットに必要な物品を乗せ、到着後はISSのロボットアームを使い、これを引き出します。物品の輸送が終了すると、再び曝露パレットは元の位置に戻されます。

「こうのとり」の構造は、見ていただくとわかるように真ん中に空洞の構造があります。そのため、負荷がかかり、設計が難しいそうです。

③「こうのとり」開発の経緯

1997年 「こうのとり」の開発に着手
2009年 初号機打ち上げ
2020年 最終機打ち上げ(9号)

当初、NASAからは「HTV(こうのとり)が来ないことがISSの安全」とまで言われるほど心配されたそうです。しかしながら、運用中は緊急時にNASAと緊密な連携を取り、ISSの運用に支障が出ないように協力しているようです。

※「ようです」「みたいです」という文末は、筆者が当事者ではなく、あくまで一般人であるという観点から考えそのような表記にしております。

④「こうのとり」のココがすごい!!

ここからは、なぜ「こうのとり」が世界から認められる宇宙機なのか解説していきます。

※宇宙機 : ロケットや人工衛星、探査機などを総称して言います。

1. 世界最大級の搭載能力

「こうのとり」は世界最大級の補給能力を持つ補給船です。補給船とは、ISSに荷物を運ぶ宇宙船のことを指します。今世界には「こうのとり」を含めて、4機の補給船があります。その中でも、物資補給能力(運ぶことができる荷物の大きさ)は「こうのとり」が最大です。参考までにデータを示しておきます。

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(詳しく知りたい方は「こうのとり」プレスキット 付録1−18をお読みください)

2. 圧倒的な成功率

「こうのとり」はこれまでに8回打ち上げられていますが、すべての打ち上げに成功し、ミッションを達成しています。成功率は100%。NASAやアメリカの企業からも認められる技術となりました。

3. 世界標準になったドッキング方式

「こうのとり」は世界で初めてロボットアームを使ったドッキング方式を採用しました。従来は、補給船がISSに近づき、ぶつけるような形でドッキングをします。しかし、「こうのとり」ではISSと同じ速度で飛行し(ランデブー)、相対的に停止(外から見ると止まっているように見える)する事で、ロボットアームを使いキャッチします。

これは、従来のぶつけてドッキングする方式よりも安全です。それに加えて、大型の荷物を乗せることができます。安全性・効率性を高める事になりました。

その後もSpaceX社の「ドラゴン」補給船でも使われるなどスタンダードな方式になったのです。

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4. ISSを支えるバッテリー

ISSで必要な電力は、太陽光パネルで取り込まれます。しかし、地球を周回する90分のうち35分は地球の影に隠れるため、太陽光が当たりません。ですので、この間はバッテリーから電力が供給されます。

「こうのとり」では6号から9号までバッテリーを運び、交換を行ってきました。日本製のリチウムイオン電池を使用したバッテリーを使うことでさらに効率を高め、バッテリーの数が半分になるということです。

さらにこれらバッテリーと大型の機械を運べるのは、「こうのとり」だけです!!


5. 新鮮な食品を届けることができる

ISSに滞在しているクルーは宇宙食を食べますが、長期期間滞在していると新鮮な食べ物を食べたいということもあると思います。「こうのとり」にはレイトアクセスというサービスがあります。これは、打ち上げ直前に各地から厳正な審査を経て、決められた新鮮な野菜や飲料水などを「こうのとり」内に積むサービスです。一番最後に入れるので、到着してからも一番最初に開くことができます。

⑤ 「こうのとり」の引退後

今回の打ち上げで「こうのとり」が引退します。後継機として、「HTVーX」の開発が進められています。今後NASAが国際協力で開発を進める「月ゲートウェイステーション」の組み立てなど今よりもさらに幅広く使われる見通しです。

(これについては今後、また記事を書きます。)


今日も熱く語ってしまいました。。。

HTVの「こうのとり」という名前は、この補給機の役割を2つの意味で表していると思います。一つが「荷物」を運ぶこと。2つが「技術」を次世代に運ぶこと。

今後の後継機もさらに技術や安全が良くなって、世界に貢献することになると、日本人の1人として誇りに思います。

GOOD LUCK!!! HTV9!

GO HTV9!!!

(写真)すべてNASA
(参考文献・ページ)

ミッションプレスキットは、本当に分かりやすいです。ボクも参考にさせていただきました。(これまで難しいものだと思ってた。。。。)

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