Post-Rockなんて名前つけたもんだから
ロックの袋小路
ポストロックとは、あまり意味のないカテゴリーである。ロック的な感じがほぼない音楽にも当てはめられているし、適当だ。
ざっくり言えば、シカゴのトータス周辺を中心とするアメリカで始まり、カナダはモントリオールを中心とした流れでGodspeed You! Black Emperorなどのバンドが変異させ、北欧・西欧でシガーロスやモグワイなどに受け継がれた音楽だと言える。その後はそこに影響を大きく受けた音楽性のバンドがカテゴライズされて、現在は廃れた言葉になった、という感じだろう。
ジャンルが散らかっているのが特徴なので、今回はその元祖たるトータスと、それをはじめとするアメリカのバンドだけ紹介していこうと思う。ちなみに、MONOなどの日本のバンドもこのジャンルに振り分けられて国際的に評価を受けている。
FishmansのLong Season を通しで聴いて楽しめる人、プログレやセッション系の音楽が好きだという人はぜひ聴いてみてほしい。
①Tortoise
シカゴのバンド。1枚目から3枚目まではどれも評論家筋から傑作とされているが、私もそう思う。歴史的観点では、『TNT』(1998年) は全編Pro Toolsを使用して作られており、それが画期的だったらしい。個人的には3rdである『TNT』から遡ると、こういった表現を音楽に対して使うのはいつも変な感じがするが、脱落しないですむと思う。
トータスは、なぜか洗練できてしまった無国籍料理、という感じがするのだが共感してもらえるだろうか。
緊張感のあるツインドラムとのアンサンブルがシビれる。ギターの演奏なんかを聴いていると、曲がりなりにもロックとつけられている理由が理解できるのではないか。
パソコンで作られたアルバムを生演奏で全曲再現しているライブ映像。音も映像も2019年の公式のものなので良質だ。
②American Analog Set
テキサス州オースティンのバンド。
やっぱり長い音楽は苦手なんだよな、という人は多い。私もその口の人間だ。そんな人におすすめなのがこのバンドである。American Analog Setは、一般的な尺の長さで、その名の通りアナログな手触りのあるポップな音楽を提供してくれる。ボーカルもあるし、ベルベットアンダーグラウンドとか、それに影響を受けたバンドが好きならハマれると思う。
このバンドで大正義なのがこの曲。素敵やん。
別アルバムからのこの曲も、私ごときがこのワードを使うのには抵抗があるが、グルーヴが大変いい。
③Isotope 217
シカゴの、トータスとシカゴアンダーグラウンドオーケストラのメンバーがやっていたバンド。ロックとジャズとファンクとエレクトロニクスが混ざっている。トランペットなどの管楽器がしっかり入ってるのと、ミニマルでファンクを意識しているところがトータスとは異なる特徴だ。ジャズファンクやジャズフュージョンが好きな人は、その延長線上にあるのでいけると思う。一般的なロックファンは厳しいかも。そしてSpotifyには名盤の『The Unstable Molecule』(1997年)が無い。大変惜しい。
ヒップホップジャズという形容が正しい気がするこのトラックは、超かっこいい。
騙されたと思って聴いてみてほしい。ここまで読んでくれている好奇心旺盛なあなたに。
④Gastr del Sol
ジムオルークという、実はくるりやチャットモンチーと絡みのあったソニックユースの元メンバーが昔やっていたバンド。だが、その経歴とはあんまり関係ない音楽性だ。トータスのメンバーも関与していた。
ここまでついてこれるあなたに言うことはもうない。力試し、という表現にも引っ掛かる自分がいるが、聴いてみてほしい。
アコースティックな楽器がいい感じのアルバム。一番聴きやすいし一番いいと感じると思う。
ジャケットが超かっこいい。これを真面目に通しで聴けたなら、現代音楽の深淵に潜っていける才能があなたにはあると思う。
⑤The Sea and Cake
またまたシカゴのバンド。ドラマーはトータスのジョン・マッケンタイアだ。先述のAmerican Analog Set が好きな人は必ず気に入ると思う。聴きやすい。ガスター・デル・ソルの後に置いたのは、そのバンド名が彼らの曲からきているためだ。あなたのストリーミングサービスで検索して人気曲を上から順に聴いていき、気に入ったものが入っているアルバムを深堀りすれば間違いない。
デヴィッド・ボウイのカバー。とてもいい再解釈。
ライブに行って見たいものである。特にAn Echo In とかが自分は好き。