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コスパとは何だろうか?

最近、コスパとかタイパという言葉を耳にすることが多い。

日々情報に囲まれながら育ったいわゆるZ世代の若者が、最小限の努力で必要な情報を得ようと生まれたのが、まとめサイトや動画の早送り視聴だという。


令和生まれの自称イケメンの僕だけど、中身は昭和な僕もいつしか動画を早送りで見るようになった。

そして、現代ではそうやって効率良く得たものが教養と呼ばれるようにもなっているらしい。

ファスト教養とは、著者が名づけたネーミングだが、これはファストフードで手取り早くカロリー摂取をするように情報を得るという意味と、ダニエル・カーネマンの『ファスト&スロー』から来ている。

ここで言うファストとは、人間の思考形態を二分した

システム1=ファスト
システム2=スロー

の事で、

簡潔に言えば、

直感的なファスト思考とじっくりと考えて答えを出すスロー思考の事だ。

膨大な情報の中から素早く取捨選択を強いられる日常。

何が流行っていて、どうすれば稼げるのか?

ともすれば、そういう思考になりがちな現代人。

殊に社会人になったばかりの若者なら、余計にそういうファスト思考を仕事に持ち込むのは当たり前の事だろう。

しかし、最近の僕はふと思うのだ。

それって教養なんだろうか?と。

教養の定義というのは難しい。

僕も正直良くは分からないし、まぁ人それぞれでいいとは思う。

ただ、僕はファスト思考やファスト教養に危なさを感じている。

なぜなら改めて我が身を振り返れば、僕は極めて直感的な人間だからだ。

僕は基本的に何でも早く決めたがる性格である。簡単に言えば、せっかちでありファスト思考だ。

ただ少なくとも仕事面では、優先順位を決めた上で、どんどん片付けていく方がいいと思っているし、それで後悔した事はほとんど無い。

なぜなら仮に失敗したとしても、早く結果が出ればリカバリーがしやすいからだ。

しかしそれは、僕が長い経験の中から身についた経験知(経験値よりあえて蓄積された知識と表したい)があってこそ習慣化したものだと思う。

たとえ何かの問題が起きたとしても、過去の経験から大体の解決策の方向性が見えたり、あるいはズバリ同じ経験から最適解が分かっていたりするものだ。

もちろんそれに胡座をかいていてはいけないし、自分が絶対的に正しいとは思っていない。その時点で最良だと思えるベストやベターな意見を提案しているという謙虚な姿勢は忘れていないつもりだ。

歳を重ねると否定されることが減ってくる。

確かにそれは最適解なのかもしれないが、実は周りが遠慮しているだけかもしれない。

有体に言えば無自覚に作用するパワハラの一種だ。

歳を重ねるとは怖いことだと思う。若い人と働くと明らかに体力が落ちていることが分かる。気づかれないようにはしているつもりだけど、悲しいかな腰痛は生涯の友だ。ただその分、近くのことより遠くは見える。老眼だ。

巨人の肩の上に乗るという表現がある。

岡田斗司夫さんの動画になぜ歴史を学ぶのかという解説があって、なるほどと思ったので、簡単に紹介すると、

小人と巨人では視野の範囲が違う。

小人は足元がよく見えるけど、遠くは見えない。だから目の前の情報や自分に関係することには関心があるけれども、大局的な見方ができない。

巨人はその逆だ、と。

巨人の弱さは直近のことに疎いことだ。

けれども巨人は背が高い分、その視野範囲は前後に及ぶ。つまり、未来と過去だ。巨人はその視野の広さにより、歴史から未来を予測し、修正する。

ここで言う背の高さの違いとは、経験知を指している。歳を重ねているから経験があるとは限らないし、職場歴が長いからと言って問題意識が無ければただ年齢カウントが上がっているだけだ。

そして、会社から一歩離れた途端、何も無い自分がいたりして、若い時にはない焦りを感じたりするものだ。

そこで自分の思考の糧となっているのが教養と呼べるのかもしれない。

この身長を伸ばす一つの方法として歴史を学ぼうというのが岡田さんの結論であった。

よく言われることだが、歴史は人間の失敗の積み重ねから出たものである。

職場のマニュアルだって、あくまでルール化できる部分という限定はあるものの、誰かの失敗から生まれたものだ。

そして歴史はーもっと言えば、読書はどこかの誰かが自分が悩んだことに気づきを与えてくれる。読むペースは自分で調節できるし、ただ漫然と流れる動画よりもスロー思考に向いている。

けれども本というものはある人にとって良書であっても、ある人には心に響かないものでもある。

話が長い。悪い癖だ。

短い文章の方が読みやすいのは分かっている。しかし、もう少しだけお付き合い頂きたい。

何年間も続けている毎日の投稿をつぶやきで済ましている分、反動でたまに長く書きたくなるのだ。

うむ、やっぱり年寄りが話し好きなのは認めざるを得ない。令和生まれの設定ではないのか(苦笑)

かつて大ベストセラーとなった養老孟司さんの『バカの壁』という本がある。

僕は関西人なので、アホと言われるのは笑って流せるが、バカと言われるとキツく感じてしまい、好きな言葉ではない。

しかし、この2冊は別である。

ふと、西野亮廣さんが音声配信で、単語脳と文脈脳と言っていたことを思い出す。

例えば、堀江貴文さんがTwitterでよく炎上するような過激な発言をする。

お前はバカだ!

のような発言は、語気の強い単語にファスト思考してしまう単語脳人間には過敏に反応しやすい。

なんでお前にバカと言われなきゃいけないんだ!何様だよッ!

こうして彼の発言は炎上し、拡散されていく。

しかし、よく聞いてみると、真意は別であったり、それなりの理屈があることに気づく。もちろんそれを受け入れるかどうかは人それぞれだけど、少なくとも多くの人に何らかの影響を与える。

良きにつけ、悪しきにつけ、影響を受けた人はじっくり考えるスロー思考、文脈脳の人である。

少なくとも直感的に自分に合わないからと言って、すぐに否定するファスト思考の持ち主ではない。

ファスト思考は読解力にも影響する。

日本人の3人に1人は日本語の読解力が無いという。

以下は『バカと無知』で紹介されていた能力テストの結果から引用させて頂く。

問題はレベル1から5まであり、レベル3は「小学校5年生程度」の難易度とされている。
「読解力」のレベル3の問題例では、図書館のホームページの検索結果を見て、「『エコ神話』の著者は誰ですか」という問いに答える。あまりに簡単だと思うだろうが、正解するためには、問題文を正しく読めるだけでなく、「検索結果をスクロールし、そこに該当するものがなければ『次へ』の表示をクリックする」というルールに気づかなくてはならない。  

この問題に正答できない成人は日本では 27・ 7%で、 3~4人に1人になる。 

レベル 4の問題では、 150字程度の本の概要を読んで、質問に当てはまる本を選ぶが、日本では 8割近い( 76・ 3%)成人がこのレベルの読解力をもっていない。

ツイッターの文字数の上限は 140字なので、 5人のうち4人は書いてあることを正しく理解していない可能性がある。

結果をまとめると、次のようになる。
(中略)

①日本人のおよそ 3分の1は「日本語」が読めない。
②日本人の 3分の1以上が小学校3 ~ 4年生以下の数的思考力しかない。
③パソコンを使った基本的な仕事ができる日本人は 1割以下しかいない。  

だが驚くのはこれだけではない。この惨憺たる結果にもかかわらず、日本人の成績は先進国で1位だったのだ。


注:平均偏差値 50から1標準偏差離れた、偏差値 40 ~ 60の範囲に 68・3%の事象が収まる。
2標準偏差離れた偏差値 60 ~ 70と 30 ~ 40はそれぞれ 13·6%、 3標準偏差離れた偏差値 70 ~ 80と 20 ~ 30はそれぞれ 2・15%だ。  

日本では高い偏差値ばかりが注目されるが、人口のおよそ 6人に1人は偏差値 40以下だ。
だがこのひとたちは、高度化する知識社会のなかで「見えない存在」にされている。
問題は、知識社会が(無意識のうちに)ひとびとの知能を高く見積もっていることだろう。

税務申告書から生活保護の申請まで、説明を読んで役所の書類を正しく記入するためには、偏差値 60( MARCHや関関同立)程度の能力が必要になる。

そうなると、自力で申請できるのはせいぜい 5人に 1人で、残りは(お金を払って)誰かに頼るか、あきらめるしかない。  

この現実に気づかないのは、社会を動かしているのが高学歴のエリートで、自分のまわりにも同じような高学歴しかいないからだ。(以上、『バカと無知』より)

また『バカの壁』の冒頭では、学生の話が出てくる。

薬学部の男女に、ある夫婦の妊娠から出産までを詳細に追ったドキュメンタリー番組を見せて感想を聞くと、男性はただの医学情報として認識するので特に変わった意見は出ない。

しかし、女性は違う。自分の身に置き換えて、多様な意見が生まれる。

つまり、人は同じ動画を見ても置かれた立場や境遇によって受け取り方が違うのだ。

例えば、同じドラマや映画を見て人と話した時に、全く思いもしなかった感想になる経験は誰しもあるだろう。

『バカの壁』とは、そういう認知差の話であり、人をバカ呼ばわりしている話ではない。

ないのだが、インパクトの強いタイトルから誤解されやすい。

果たしてブームに乗っかって買った人が文脈脳で読んでいたかは疑わしい。

まぁ、それはともかく。

ファスト思考に慣れた現代人にはスロー思考も必要だから、たまにはじっくり本を読んで自分のペースで考えてみよう、という話だ。

なんだ、それだけのありきたりな意見に僕は1時間半もかけて、出勤前のスマホに向かって言葉をこねくりましていたのか。

ここまでもし読まれた方がいたら、ぜひここに挙げた本を読んで欲しい。

拙いながら僕なりに解説した音声配信を聞いてきっかけにしてもらえれば幸いです。

お読み下さって、ありがとうございました。

AI技術の思考はどこまで来てるのかについて話したのはこちら↓

最近出た本でスロー思考をトレーニングできるのがこちらの本↓

歴史が楽しく学べる大人気のポッドキャストならコテンラジオ↓


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