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嫌われる勇気の青年ってヤバくない?

空前絶後のベストセラー

は、衝撃的な内容でこれからも読み継がれる良書として語り継がれていくに違いない。特に初めて読んだ時は、トラウマなど存在しない、「原因論」ではなく「目的論」である、にはガツンとやられました。

これは、いつまでたっても記事が書けないというのは、書きたくないという理由を作るための言い訳だとする考え方ですね。

ところでこの本を語るには、すでに素晴らしい書評や書籍紹介が山のようにあります。

だから今更そんな事を書いても仕方がない。

そこで、今回は僕が初めてこの本を読んだ時に抱いた違和感について語ろうと思います。きっと皆さんの中にも同じような感想を持つ人はいるはずと信じて。

それは何か?

と言えば、

登場人物の「青年」です。

この青年は劣等感にまみれた激情型の人間です。

そして、ものすごく危ない人間です。

1000年の都とされた京都のはずれに住み、世俗の競争とは無縁の人生を送る在野の哲学者である「哲人」をわざわざ訪ね、青年はこう言います。

まずわたしがここを訪れた第一の理由は、先生と存分に納得のいくまで議論を交わすことです。

ここまではまぁいい。

問題はその次。

そして、できうることなら先生にご持論を撤回していただきたいと思っています。

えっ?アンだって!?

青年はさらに続けます。

というのも、風の噂に先生の評判を聞きましてね。なんでもこの地に一風変わった哲学者が住んでいて、看過しがたい理想論を唱えているらしい。曰く、人は変われる、世界はシンプルである、誰もが幸福になれる、だのと。わたしにとっては、いずれも到底受け入れられない議論です。

あなたも十分変わっていると思うけど、だから?

それで実際に自分の目で確かめて、少しでもおかしな点があればその誤りを正してさしあげよう、というわけです。

何様なんだチミは。なぜそこまでマウントを取りたがるのだ!?

マコなり社長なら、間違いなく絶対に関わってはダメな人間だと言うことでしょう。

これってユーチューバーの家に押しかけて喧嘩をふっかける人と変わりないですよね。普通じゃないよ、この人。

正直、目がいっちゃってるだろうな。

一応、ぶしつけな初対面のセリフに悪いと思ったのか、「ご迷惑でしょうか?」と聞きます。

そうしたら、そうしたらよ、哲人は何と答えたと思いますか?

いいえ、大いに歓迎します。わたし自身、あなたのような若者の声に耳を傾け、学びを多くしていきたいと願っていたところです。

こわっ。

自分ら、こわいわっ。

僕だったら、速攻でGet out,here!と言いますね。あっ、ごめんなさい。つい育ちが出てしまって。

その後の青年のセリフがまた恐ろしい。

ありがとうございます。わたしは別に、先生を頭ごなしに否定しようとは思いません。

オイオイオイオイおーーーーーいっ!!

どの口が言うんだ!

この後、チミはめちゃめちゃキレて激昂していくやん!

何言うとんねん!!!

僕は感情の激しい人が一番苦手やねんっ!!他人の揚げ足ばかり取るようなアンチな人も。

議論って、やっぱり僕のように穏やかに語るものですよね。

それを言うに事欠いて、看過しがたい?誤りを正すだとぉ?

何様じゃ!!

かかってこいやっ!!


・・・

・・・・・・・。


あっ、ごめんなさい。もっと冷静にならないとダメですよね。

簡単に言えば、どっちも僕以上に変態です。

読む方は大変です。

何、この二人?

哲人は一見、落ち着いた大人のように思えますが、この時彼は内心こう思っていたに違いありません。

イヒヒヒ、またおかしな若者が来たわい。実験サンプルとしては好都合ぢゃのぅ。どれ、アドラー心理学に洗脳させて、帰る頃にはワシのことを友人と思うようにしてやろう。ワシの言う友とはどういうものか思い知るがいい!お前もロウ人形にしてやろうか!

そうです。すでにこの時、青年は哲人の掌の上で転がされ始めていたのです。

ボイスレコーダーを回して、あわよくば本にしてベストセラーを虎視眈々と狙っている老人に。

そうでなければ、こんな狂気じみた若者の相手などするはずがありません。世俗から離れて、本に囲まれた自由な暮らしをするにはユーチューバーだけでは食ってはいけないのです。やってるのかYouTube?

世界は我々が思ってる以上に複雑です。若者の承認欲求を適度に満たしつつ、彼の課題の境界線を混乱させていきます。

ところが、本の最後では青年はこうまで変わります。

わたしも先生を信じます。歩きましょう、ともに!そして、長い間どうもありがとうございました。
それからまた、きっとこのお部屋を訪ねさせてください!そう、かけがえのない友人のひとりとして。もはや論破などとは申しませんから!

すっかり骨抜きにされてもうてるやん。ヤバイな青年。

でもね、この青年をなめちゃいけませんよ。

三年後、青年は大学の図書職員を辞め、母校の中学教師となって再び哲人を訪ねます。

そう、続編です。

子ども達にアドラー心理学を伝えようという熱意を元に頑張った結果、うまくいかず、青年は哲人にこう語ります。

誤解しないでください。生徒たちに失望したのではありません。ましてや教育そのものに失望し、あきらめたわけでもない。

ふむふむ、では何に失望したの?

わたしはただ、アドラーに失望し、つまりはあなたに失望したのです。

あかん、マインドコントロールが解けてもうてる。

ヤバイよ、これはまるで、

哲人ピンチ!当然ながら、哲人はWHY JAPANESE PEOPLE?と問いかけます。あっ、また出ちゃった、ごめんよ。

すると青年の返答は、

はっ、そんなものご自分の胸に手をあてて聞いてみることですね!アドラーの思想は現実社会ではなんの役にも立たない、机上の空論でしかないのですよ!

あかんやつや。完全に元に戻っとる。

もしも教育者であり続けるのだとすれば、わたしはここでアドラーを捨てなきゃならんのです!さもなくば、教育者の責任を放棄して生徒たちを見捨てることになる。さぁ、これはあなたの喉元にも突きつけられた刃だ。どうお答えになります!?

完全に論破しようと思ってるやん!

「もはや論破などとは申しませんから!」と子犬のようなつぶらな瞳で別れを告げた騙されやすい若者はどこへ行ったの?帰ってきておくれ。

こんな教師に子どもを預ける親の身にもなって欲しいよな。

大体「はっ、」って何よ。「はっ、」って。アッコさんか!?

上から目線でケンカ腰やん!自分そういうとこやで!

他にも彼の言動を前作も含めて抜粋してみましょうか?

ある意味名ゼリフ集です。これを見ると読みたくなるに違いありませんよ(笑)

・先生、あなたはわたしをペテンにかけようとしている!認めるものですか、そんな哲学、わたしはぜったいに認めませんよ!

・手短に!手短にお願いします!

・ええい。このサディストめ!!あなたは悪魔のような御方だ!

・ふっふふっ、嫌らしい御方だ。いまのはわたしへのあてこすりですね?

・くっ・・・・・・!!

・ええい、偽善だ偽善だ!そんなもの偽善者のたわごとでしかありません!

・はっはっはっ、これはお笑いだ!

・ぺっ!!どうせ説教じみた隣人愛を語るのでしょう。聞きたくもありませんね!(カトちゃんかっ)

・典型的な詐欺の手口です!

・ええい、そんな言葉でわかるか!抽象に逃げないでください!!

・いいでしょう。これは論駁(ろんばく)しがいがありそうだ。

・へっへっへ。その答えもまた哲学的ですね。

・じゃあ、答えも知りもしない、無知なるあなたが、いったいわたしになにを授けるというのです!?

・大した自信ですね、もう詭弁は通用しないというのに。いいでしょう。揺さぶり落としてさしあげますよ!

・はっ、なんだか苦し紛れの言い換えに聞こえますがね!

・遠いのですよ、先生の話は。いつも遠くの風景ばかりを語って、足元のぬかるみを見ようとしていない!

・言葉遊びはいい加減にしていただきたい!

・ちぇ、いったいなんの寓話だ!

・撤回してください!あなたにわたしのなにがわかる!

・ええい、腹立たしい!右から左に穴だらけの虚言を並べ立てて、それで煙に巻いたつもりか!!望むところだ、穴という穴を、ほじくり返してやる!!

・いい加減にしろ、この鉄面皮め!なにが悲劇の安酒だ!あなたの言っていることは、すべてが強者の論理、勝者の論理にすぎない!あなたには虐げられた人間の痛みがわからない。虐げられた人間を侮辱している!

注:鉄面皮とは恥知らずであつかましい人のこと

・相変わらずややこしい人だな。

・面白い。そちらから戦いを挑んでくるとはね!(まるでガンダム)

・ええい、腹立たしい。次っ!

・こ、この忌々しい毒虫め!興奮して声を荒げるわたしを、未熟な人間だとあざわらっているのですか!

・いまどき幼稚園でもそんな絵空事は通用しませんよ!

・ええい、この・・・・・・!!

・不毛だと!?この議論が不毛だと!?

・おもしろい。それだけ自信がおありなのですね?

・ううう、無理だ!そんな言葉、到底信じられません!

・へっ!やっぱりあなたの言ってることは宗教だ!!

・くっくっく、これは傑作だ。

・そんな思想など、汚水をすするドブネズミにでも食わせておくがいい!!

・ふっふっふ。わたしがなにひとつ納得していないことは、おわかりですよね?


面倒くさい。超絶面倒臭い男やな。

どうでもいいけど、3年後やからまだ若そうやのに、いちいち芝居じみてるよね。

哲人からあなたの短所は?と聞かれ、青年はこう答えます。

まず挙げられるのは、この性格ですよ。自分に自信が持てず、すべてに対して悲観的になっている。それに自意識過剰なのでしょう、他者の視線が気になって、いつも他者を疑いながら生きている。自然に振る舞うことができず、どこか芝居じみた言動になってしまう。そして性格だけならまだしも、自分の顔も、背格好も、どれひとつとして好きになれません。

よく分析してるやん。

こんなひねくれた男となんて、誰も付き合いたくないでしょう。わたしだって、身近にこんなに卑屈で面倒くさい男がいたら御免こうむります。

他にも

見てくれはこんな具合で、女性を前にすると顔を赤らめ、声はうわずり目は泳ぐ。社会的地位もなければ、財力も持たない。しかも困ったことに、このひねくれた性格だ。ははっ、わたしを愛してくれる人間が、どこにいますか!

どこまで(笑)

マコなり社長だったら、こう言いますよ。

あっ、もういいですか。

最後に、哲人はあれだけ激昂している青年をいつもながらおさめていきます。例の「あなたはかけがえのない友人のひとりだ」というキラーワードを巧みに利用して、彼の心を中和するのではなく、侵食するのです。

ところで、アドラー心理学を学ぼうと定期的に読み返している僕は?と言えば、こういうところばかりが気になって一向に頭に入ってこないのであった・・・。

ちなみに岸見先生は京都の生まれです。


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