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疲れた時に読みたくなる本

僕の場合はこれです。

村上春樹さんが17日間限定で、あるサイトにファンからのメールを募集し、それについて答えるという企画本。

寄せられたメールの数は3万7456通というから驚きです。

村上さんはその中から3716通を選び、返信されたとのこと。そしてこの文庫にはそのうちの473通のやりとりが収められています。

今さらっと書いたけれど、ここまでの文字数くらいを1通のメールとして、それが473通、そこにコメントをされているから倍の数になるわけで、文庫本のページにしても約600ページはあります。

本好きの方なら分かって頂けると思うのですが、これは分厚い文庫です。イメージでいくと長編小説。京極夏彦さんや森博嗣さん、東野圭吾さんの長めの小説、吉川英治さんの三国志1冊分と言えば、なんとなく実感できるでしょうか?

でも、でもよ。

メールを集めたものだから、全然しつこくないんです。

何だろう、油のいい唐揚げみたいな。炊きたての新米みたいな。べたつかないお得用洗顔シートみたいな。

あっ、もういいですか。

とにかくどこでもセーブできるRPGみたいな感じで、いつでも中断できちゃいます。このブログのようなしつこさは全くないので二日酔いもしません。

村上さんへの質問ということで作品に対する感想ももちろん多いわけですが、中にはどーでもいい質問もたくさんあり、興奮した闘牛を華麗に交わす村上さんならではのメールさばきにほっこりします。

深夜ラジオのリスナーメールを聞いてるみたいな感覚に近いかな。

さらにさらにこれには電子書籍版がございまして、そこには3716通全てのやりとりが掲載され、実に文庫の9倍にもなる分量の、もう嫌がらせレベルの(失礼)駄文(さらに失礼)があり、読んでも読んでも読みきれないくらいのメールが見れます。

これを1ページからずっと読むのはなかなかの作業ですが、いつでもどこでも読める電子書籍の利点を活かし、何かの折にちょっとだけ読んではクスリと笑う、そんなステキな時間の過ごし方が僕は好きです。

世の中にはいろんな人がいるんだなぁ、いろんな悩みを抱えているんだなぁ、あるいはくだらないこと考えるなぁ、と様々な思いが頭に浮かび、自分の悩みや疲れも大したことではないように思えてくるから不思議です。

僕は村上さんの作品よりエッセイが好きなので、時々出るこういった企画本や村上朝日堂がかなり好きなので余計に愛着があるのかもしれません。

残念なのは朝日堂でイラストを描かれていた安西水丸さんがすでにこの世になく、この本のイラストを描かれているフジモトマサルさんも46歳の若さで亡くなられたとのこと。

でもさ、でもね。だからこそ、作品として楽しむことが何よりの供養なんだと思います。自分にとっての宝物になる本に出合えるって幸せなことですよね。



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