「音楽で響き合う楽しさを共に」—ワークショップ講師丸芽志悟さんからのメッセージ
11月17日開催の「映像に音をつけよう」ワークショップでは、講師として丸芽志悟さんをお迎えします。
1950年代以降のポピュラー音楽の魅力を執筆やフェス運営を通じて発信している丸芽志悟さんは、「自然発生音楽」と呼ばれる即興演奏スタイルで、人と人が音楽を通じてつながる楽しさを追求してきました。
そんな丸芽さんがこのワークショップに込めた思いをこの記事でご紹介します。
はじめまして。来る11月17日開催される「映像に音をつけよう」ワークショップにて、「講師」の役を務めさせていただきます、丸芽志悟と申します。
普段は、1950年代以降のポピュラー音楽を中心に、幅広くその魅力を啓蒙すべく執筆活動に勤しんだり、時にロックフェスの運営に関わったりしつつ、2011年以降はRacco-1000という、形態的には軟体動物的な即興演奏ユニットでライブ活動もしたりしております。
その流れで、その場に集まった人間達の思い思いの感情に任せて発される音が融合することにより発生する音楽を、「自然発生音楽」として定義し、それを実践する集いを何度か企画したりもしており、その結果としてExGalapagoの活動に帯同することが、特にコロナ以降増えてまいりました。
「映像に音をつける」というコンセプトは、それこそ磁気記録方式で映画にサウンドトラックが付くことが可能になる前から、映画上映に帯同する生演奏という形で実践されており、その後はテクノロジーや楽器の性能の進化により、サウンドの選択肢もよりカラフルに、記録の仕方もよりヴィヴィッドになり、総合エンターテインメントの一部として欠かせないものになりました。
今回の試みのコンセプトは、むしろ「原点に戻ってみる」ことと言えましょう。それを説明する前に、過去の自分たちの活動に於ける「自然発生音楽」の成り立ちに関して、少しばかり語らせて下さい。
このコンセプトが大きく前に進んだのは、2013年辺りのことで、当時つるんでいた音楽仲間とちょっと遊んでみようという目的で、ある場所に手軽な楽器を持って集まった時でした。次第に仲間の輪が広がり、遂にはその場所から「出禁処置」を食らう程スケールが高まるに至りましたが、初めて顔を合わせる人達と音楽を通してコミュニケーションをとることが、いかに楽しかったか。その楽しみを、あらゆる場所に持っていこうと試みました。とある「花見の会」では、近くで花見を楽しんでいた別のグループに楽器を渡して、共に楽しんだり、三味線の練習をしていた別のグループを巻き込んだり。
そんな楽しみが、2020年に新型コロナショックで奪われてしまうのですが、その時までにはコンセプトそのものもほぼ熟した形になり、とある「導き役」の女性との出会いがそれを大きく後押ししてくれました。2017年から3年間、彼女の主導により、さいたま市主催の「アートフルゆめまつり」の一角で開催したワークショップ「フエフケール」では、道行く人達がシンプルな楽器の持つポテンシャルに開眼し、形式に囚われず音を出すことを大いに楽しんで下さいました。それによって発生する「新しい友情」が、なんと魅力的だったことか。
ここ数年ExGalapagoと組んで伝えていることは、この「フエフケール」の成功が土台となっていると言えます。つまり、リコーダーをはじめとした最も初歩的な方法で奏でることができる楽器にさえ、人の心を輝かせる力がある、ということ。実際に教育の現場でその楽器を使っている世代ならまだしも、そこから離れてから相当時間が経っている世代でさえ、実際楽器を持ってみるとやめられなくなったり。そして、そんな無邪気な音のかけらが群れになった時生まれる「音楽」は、たまらなく魅力的なのです。流行りの流行歌こそが「いい音楽」なんだという概念も、どこかに行ってしまうのです。一旦音を出しはじめたら。
今回のワークショップでは、そんな風に「自然に音を出す」ことの魅力に目覚めてもらいつつ、実際に既に完成している映像を見ていただき、そこに「生きた感覚」を与える音を追加するという行為を、参加者の皆様の感情に委ねます。それを自分一人でやるのではなく、第三者との意見交換や、共に音を出すことも通して、自然な「仲間意識」の発生をも意図しています。
貴方の家に眠っているリコーダーや鍵盤ハーモニカでも構いませんし、使い方がわからず放置されていたおもちゃでも構いません。あまり騒がしくならない程度であれば(一部民族楽器に顕著ですが)、どんなものでも大歓迎します。美術や体育に特化して学んでいる学生さんや、「バンドなんてやる勇気ないし」とお悩みの貴方も、安心してお越しください。もしかしたら、素敵なバンド結成が待っているかもしれませんよ。
この度のワークショップでは、映像と音楽の融合をテーマに、参加者の皆様が自由に音を出し合い、共に楽しむことを目指しています。上のコメントにもあったように、音楽は特別なスキルがなくても、皆さんが持っている身近な楽器や音を使って、誰でも楽しむことができるものです。
興味を持たれた方は以下のリンクから詳細をご確認ください!
皆さんと一緒に音を楽しめることを心から楽しみにしています。