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赤と黒・スタンダールのウンチク

『赤と黒』は、19世紀フランスの作家スタンダール(1783-1842)の代表作の1つ。この作品は「世界文学名作集」などにも必ず顔を出す「名作中の名作」と言える。

この小説は、美貌の青年ジュリアン・ソレルが、貴族の婦人や令嬢を踏み台にして出世の階段を上っていく様子と、その心理を書いた作品。ちなみに、このジュリアン・ソレルは21世紀現在も「美しき野心家」「汚れた英雄」の代名詞としても使われている。つまり「ジュリアン・ソレルのようなやつ」といえば、「一見おとなしそうだけど、じつは激しい野心と燃えるような情熱を内に秘めた悪いやつ」といった意味になる。このような人物像を確立したスタンダールの小説上の功績は偉大といっていいだろう。

ジュリアン・ソレルのような人物を「スタンダール的人物」と呼ぶ人もいるが、スタンダール自身は決してハンサムでもなく、体型も、ジュリアンは「少女のように華奢」と描写されているが、スタンダールは太鼓腹のずんぐりむっくりで、若ハゲと短足にコンプレックスを持っていたという。

また、ジュリアンは狙った女性は必ずモノにするが、スタンダール自身は、決して恋愛の達人ではなかった記録も残っている。

また、ジュリアンは性的には禁欲的な人物になっているが、この点に関してもスタンダールは真逆。人並み以上に性欲が強くて、娼婦を買いまくって、梅毒や淋病に苦しんでいたという。ジュリアンとスタンダールの共通点を無理に探すとしたら「人妻好き」というところか。

『赤と黒』というタイトルは、一般には、この作品が発表された1830年当時の支配階級を象徴的にあらわしたものとされ、「赤」は軍隊の軍服の色、「黒」は聖職者の着る僧衣の色とされている。ただ、主人公の運命が二転三転することから「ルーレットの赤黒」という解釈もある。

スタンダールの作品としては、他にも『パルムの僧院』『恋愛論』などが現在でも読まれ続けているが、スタンダールが文学者としての名声を得るのは彼の死後のことだったようだ。

彼の死後19世紀末になって彼の作品はようやく理解されたのが現実で、『赤と黒』出版当時は、「背徳的だ」と非難を浴びただけで殆ど売れなかったという。

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