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業務改善のキーワード"ECRS"が狂おしいほど好きなわけ

業務改善のキーワード「ECRS」をご存じだろうか?
業務改善を実現するキーワードには、「なぜなぜ分析」「QCサークル」「トヨタ生産方式」などなど様々なものがある。
ECRSもその一つであり、業務改善の視点と順番を示している。

ではなぜ、数あるキーワードの中でもECRSが狂おしいほど好きなのか、その理由はひとえにE→C→R→Sの順番である。

そもそも「ECRS」とは?

ECRSは、業務改善の基本要素である4つの英単語、Eliminate(排除)、Combine(結合)、Rearrange(入れ替え)、Simplify(簡素化)の頭文字を取った造語である。それぞれの意図は以下の通り。

Eliminate(排除) 不必要な作業や業務手順を削除すること
Combine(結合) 類似の業務を集中化したり統合すること
Rearrange(入れ替え) 業務手順や担当者を入れ替えて最適化すること
Simplify(簡素化) 同じ作業でもより簡単にできる工夫を加えること

どれも業務改善を行う際の超がつく基本要素であり、そんなこと今さら言われなくたって分かってると思ったのではないだろうか。
その通り、これらはごく当たり前のことで、誰だって真っ先に思い浮かぶ。
ではこのEliminate(排除)、Combine(結合)、Rearrange(入れ替え)、Simplify(簡素化)という順番を真剣に考えたことはあるだろうか。

ECRSの示すもう一つの意味

ECRSの考え方では、これら4つの改善行動をこのキーワードの並びの通り、E→C→R→Sの順番で行うこととしている。
つまり、まずは改善対象の業務そのものをEliminate(排除)する可能性を検討し、それが不可能であれば類似業務とのCombine(結合)を検討、次にRearrange(入れ替え)を検討し、最後にSimplify(簡素化)を行う。

ECRSが狂おしいほど好きな理由は、ECRSの順番、特にEliminate(排除)が業務改善を検討するうえでの一番最初のアクションとして規定されていることである。

このE→C→R→Sの順番を常に意識してビジネスに取り組む方がどれだけいるだろうか。この順番がバラバラになっていることが多々見受けられる。むしろ、一番最後に検討すべきSimplify(簡素化)から取り組むケースが多いのではないだろうか。
もちろんECRSすべての要素が業務改善には大切だが、改善効果は順番が後になるほど小さいことが多く、実はSimplify(簡素化)の効果はたいしたことない、なんてことはザラである。

Eliminate(排除)から始めることの重要性

Eliminate(排除)とは具体的には、報告を無くす、会議を無くす、メリットの少ない顧客との付き合いを無くす、商品サービスを無くす、作業工程を無くす、などなど、その業務やビジネス自体を排除することを意味する。

これらを実施すれば確実に業務量や作業負荷は減る。しかもコストや時間をかけずに。一方で、何が不要で何が必要か的確に選別できなければEliminate(排除)を達成することはできない。Eliminate(排除)とは単に面倒な手間を省くのではない。つまり、物事の本質を的確にとらえることができなければ、本来は必要な要素を排除してしまい、仕事が回らず、意思決定の精度も落ち、顧客も失い、利益は減少する。
そう、Eliminate(排除)はECRSの中で最も重要かつ難しいアクションなのである。だからこそ、初めに取り組む意義は大きく、効果も絶大なのである。

Simplify(簡素化)に偏りすぎてはいないか?

近年は「時短術」や「仕事術」、「パフォーマンス向上」をテーマにしたさまざまな書籍が出版されている。
中にはエクセルのショートカットキーの使いこなし方だったり、プレゼン資料の短時間での作成ノウハウだったり、Simplify(簡素化)のスキルに特化したものも数多く存在する。

もちろんSimplify(簡素化)のスキルは非常に重要で、確実に効率化をもたらしてくれる。とはいえ、一度立ち止まって物事の本質を見直してほしい。
例えば、ショートカットキーや資料作成スキルを駆使して、これまでより短時間で資料を作成できたとしよう。そもそもその資料は必要なのだろうか、誰がどれだけ真剣に見て、意思決定にどれだけ反映されて、利益にどれだけ貢献しているのだろうか?

繰り返しになるがEliminate(排除)は単に面倒な仕事を排除することとは違う。本当に利益に貢献する、費用対効果に見合う取り組みに全力集中し、それ以外のものを抽出・選別して排除することである。Eliminate(排除)とは単純なようで、実は仕事の本質が見えていないとできない、非常に高度なテクニックと勇気を伴う行動であると思う。

小手先のテクニックでSimplify(簡素化)を繰り返しても限界がある。そもそも、Simplify(簡素化)の先に破壊的なイノベーションは生まれない。言葉は悪いが貧乏臭ささえ感じることがある。
生活習慣を改善したい時、日々の業務を改善したい時、事業を成長させたい時、会社経営を進化させたい時、どんなシチュエーションにおいても、まずはECRSの順番を常に意識してみてはどうだろうか。

いま目の前にあるものは本質だろうか?
Eliminate(排除)の対象ではないだろうか?

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