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お金で人生を買う

またまたnoteの年末年始連続投稿企画に沿って書きますよ。

今日選んだお題はこちら、

#買ってよかったもの

です。


「買ってよかったもの」というと、「この便利グッズが良かった」とか「最新のゲーミングPCで俺ツエーできた」のように、物を買う話になるのが一般的かと思います。

でも、今回はそういう実物を買う話はいたしません。もっというと、何かしらのサービスを買う話ですらありません。

江草が買って良かったなと思ってるのは「人生」です

「は?そんなもん買えるの?何言ってんのコイツ?」と思われたかもしれませんが、これから説明するのでまあ落ち着いて聞いてくださいな。


たとえば、働き方改革に関する議論で頻出なコメントとして「働き方改革のせいで年収が下がる(だから嫌だ)」というものがあります。

なぜ働き方改革で年収が下がるかというと、残業時間を抑制されるので残業代がもらえなくなるからですね(あくまでサービス残業がない前提ですが)。働く時間が減ったからその分報酬としての収入が減ったというロジックなわけです。

ここで、このロジックを逆転して見てみると面白いものが見えてきます。

すなわち、これは報酬減を受け入れたら働く時間を減らすことができると言い換えることができますね。さらに換言すれば、逸失利益を受け入れたら労働時間減を得ることができた。そして、本来もらえたはずのお金を諦めて仕事以外の時間を持てた、となるでしょう。

「もらえるはずのお金を諦める」というのは個人視点で見れば支払っているのと同義です。そして、そのお金の対価として労働してない時間を得ている。これは事実上「お金で非労働時間を買った」と言えるわけです。

働いたらそれだけお金がもらえることは知っている、でも、それでもあえて働かないことを選んでる時、それは「お金で働かない時間を買っている」んですね。


別に当たり前のことを言ってるだけではあります。

ただ、先述のような「働き方改革のせいで収入が減る」的コメントが世の中で目立つことからわかるように、往々にして「労働時間」があたかも個々人が支払っているコストではないかのように無視されたまま、ただ総年収ばかりが注目されます。働いてる時間はいくらでも供出していいものであるとみなされ、それで何も失われてないかのように扱われています。

仕事も世の中色々ですし、人も色々ですし、もちろん働いていることが全てダメだとかそういうことはありません。意義深い仕事をしていたり、やりがいのある仕事をしていたりそういうのも人生の彩りとしてふさわしいものでしょう。

とはいえ、やっぱりどうしても仕事という概念の枠内でできない人生の営みはあります。たとえ仕事がどんなに人生の彩りに欠かせない一部であったとしても、仕事だけでは人生という広大なキャンバスで塗りきれない部分が残るのです。

たとえば、それは育児であったり、家族との時間です。


実を言えば、江草は育児をきっかけに時短勤務をしています。いわゆるパピートラックというやつなんですが、別に押し付けられたわけではなく、自ら選択した働き方です。

職業柄、バリバリ残業も辞さずに働けばまあ滅法な稼ぎが得られるのは知っていますし、実際そうしていた時期は長らくありました。

ただ、家族ができて、それなのに家に帰らない生活をしていることに違和感を覚えてしまったんですね。仕事だけの人生ってのも何だかなと。

だから、時短を選び「働いてない時間」を確保することにしました。

つまり、本当は得られたはずの莫大な報酬を捨てて、働いてない部分の人生を買ったわけです。

そしてまあ、子どもは本当かわいいし(育児めちゃくちゃ大変ですけどね)、家族との団欒の時間はかけがえのない日常生活の一ページとなっています。これこそ、真に「買ってよかったもの」だなと思っています。


さて、世の中では転職しようか休職しようか悩んでる人も多いかと思います。休職はそのまま非労働時間が増えるものですし、転職の方もよりやりがいのある仕事を求めてという人が少なくないはずです。

それが労働時間と非労働時間とどちらに意識が向いているかの違いはあるにせよ、結局はどちらもより良い人生を希求した末の選択肢と言えます。そして、これらの選択でだいたいネックになるのは収入の減少でしょう。

これで悩みの完全な解決になるわけではないのはもちろん承知ですが、それでもそれを「逸失利益の対価に人生を買おうとしているのだ」と考えることで少しは選びやすくなるかもしれません。

市場には無限とも言えるほどさまざまで魅力的な商品が並んではいますけれど、「人生」ほどに買う価値のある商品はまずあろうはずもないのですから。


もっとも、「人生」を買おうにも先立つお金がないと収入減に耐えられないという現実的な問題がここにはそびえ立っています。

江草も正直言ってあまりに恵まれた立場であるからこそ、「人生を買う」という最大級の買い物ができたに過ぎないと言われても仕方ないところがあります。これだと、ポルシェを買って自慢しながら「みんなも買いなよ」などとのたまう鼻持ちならない態度と変わりがないかもしれません。

ただ、江草自身もこの状況が良いとは思ってはいません。だからこそ万人が「人生を買う」という選択ができるように、ベーシックインカムが導入されることが必要なんではないかと日々主張している立場なんですね。すなわち、みんなが「人生を買える」社会を目指すのは江草にとって一つのプロジェクトとなっています。

別にこれで罪滅ぼしにしようとかそういうわけではないのですが、せめて多くの人が同じく「良い買い物」ができるようにと願い、ここnoteで細々と書き続けさせていただいてます。今年は、色々と読み書きして考えた経験を経て、これぞせっかく買い戻した人生を改めて費やすに値するプロジェクトだと日に日に実感が増していった一年でもありました。

なにぶん生活時間の隙間にやってるもので、どうしても微力ではありますが、来年もこの個人的プロジェクト「LIFEWORK WORKS」に邁進していきたいなと思っております。

よろしくお願いいたします。

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