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お金より時間の時代に

何かとコスパ(コストパフォーマンス)とタムパ(タイムパフォーマンス)と両者は並列で語られますが、実際にはタムパの方が優位であると考えられます。

コスパは、コスト分のお金を稼ぐためにあまり楽しくないことや辛いことに時間を費やさなければならないという前提があります。しかし、それゆえに仕事自体が楽しくて、楽しんで稼げている人には当てはまりません。

高いお金をかけて高級品をたくさん買い集めるような顕示的消費のトレンドは下火になり、どれだけ充実した体験ができるかが重要になってきています。これは、人々の価値観が「お金よりも時間が大事だ」という分岐点に到達することを意味しています。

例えば、読書が好きだとして、ある程度の資金があれば、読書における障壁は本を買うお金がないことよりも、本を読む時間がないことの方になります。どんなに大金持ちでも、時間がなければ読書を存分には楽しめません。

住宅費や学費が鰻上りなのは逆風ですが、ブランド品などに手を出さなければ、エンターテイメント自体は随分と安価になってきています。ドラマやアニメ、漫画は、人生をかけても味わい尽くせないほどたくさんあります。

もちろん、趣味によってはお金の比重が高いものもあります。例えば、海外旅行は円安の影響もあり、資金の要求水準が上がり続けています。しかし、海外旅行もお金だけあって時間がなければ行けません。時間リソースもやはり大きな要素です。たとえ高年収でもその代わり休みが取れず、結局は海外旅行においそれと行けない人は少なくありません。

このように個別の事情にムラはあるものの、お金よりも時間が重要視されてきているのはトレンドだと思われます。

特に、時間に比重が置かれる社会では、「お金のための活動」と見なされる仕事も変容し、「働いている時間が楽しい」を目指すようになります。

オフィスのオシャレ化はその象徴でしょう。

また、仕事時間の柔軟性を高めることも進んでいます。フレックスタイムやリモートワークの許可がその一環です。「時間の使い方」について配慮しないと人が好んで働いてくれないからです。

「楽しく稼げる」「好きなことで稼げる」なら仕事はもはや遊びのようなもので、冒頭でも示したようにコスパの呪縛から逃れることができます。(少なくとも緩和はされます)

こうなると、いくら高報酬でも内容がつまらなかったり、拘束時間が長い仕事は嫌がられます。お金があっても充実した楽しい時間が確保されないなら意味がないと。すなわち「たとえお金は良くとも(良い)時間がなくなる仕事」が嫌がられるのです。

江草の主観では社会はおそらくこの分水嶺をタムパサイドに越えつつあると思うのですが、どうでしょう。



※なお、本稿と類似した内容を過去にもちょくちょく書いてるのですが、改めてよりスッキリした形で書いてみました。


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