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『SECOND BRAIN』読んだよ

ティアゴ・フォーテ『SECOND BRAIN』読みました。

個人的には久しぶりのPersonal Knowledge ManagementPKM本。「知的生産技術」(本書では「知的生産術」)とも呼ばれるジャンルのノウハウ本です。

最近思うことがあり、個人的に愛用してるPKMツールのObsidianを大幅にいじってるタイミングでもあって、たまたま見かけて買いました。

「SECOND BRAIN(第2の脳)」とは知的生産技術クラスタでは言わずとしれたミームです。Obsidianも以前これを宣伝文句にアピールをしていたような気がします(今見たらなくなってるようですが)。Obsidian部の端くれとしては、これをタイトルに付けられちゃったならつい手に取っちゃいますよね。

「SECOND BRAIN」の定義に明確なものはなくそれぞれ異なる意見や議論はあるようですが、最近格段に発達したデジタルツールを駆使して、昨今の世の中の情報の洪水をうまく処理しその上で豊潤なアイディアやプロダクトを生み出すシステムやノウハウを指す点ではおおむね共通してると言えます。

「SECOND BRAIN」があればこんなに良いことがあるぜとまずそのメリットを紹介し、そしてその「SECOND BRAIN」とやらをどう導入、構築、運用したらいいかのノウハウを丁寧に解説しているのが本書です。
端的に言えば、PKM入門書という立ち位置ですね。

入門書という位置づけのためか、解説されてるPKMのノウハウは比較的シンプルでベーシックなものの印象です。
たとえば本書で紹介されるメモ整理法は基本的にフォルダ管理ベース(あとは検索)です。最近流行りのタグやfrontmatter、MOCや内部リンクでのネットワーク管理、AnkiのようなSpaced Repetitionシステムでの振り返りなどの派手で凝った手法はほとんど出てこず、プロジェクト進行に応じてメモの属するフォルダを移動させる手法を基本としています。このプロジェクト指向性はカンバンボード方式に近いかもしれません。

江草は、PKMに関する書籍や解説サイト、そして玄人の皆様をフォローしてきましたし、Obsidianみたいにわりと凝ったツールを使ってる身なので、本書で紹介されるノウハウは正直「意外と素朴だなあ」と感じました。

ただ、素朴であることは別に駄目というわけではありません。
本書のように、スマホに標準装備されてるようなメモツールでも実践できるような(ツールを選ばない)シンプルな手法から入門させることは、これから始める人たちへの敷居を低く保つことができますから、入門書としては正しい姿勢だと思います。

それに、多機能で複雑なことができる凝ったツールを使ってもそれに凝ることにばかり夢中になって肝心の本来のPKMの目的や実践を忘れるという本末転倒しぐさをするのが人間というものですから(まあ江草がまさにそうなんですけれど)、「そもそもどういう理由で何をしようとしているのか」が明確になりやすい素朴なノウハウというのはむしろ本質的なことを教えてくれていると言えるでしょう。

もはや古典とも言える梅棹忠夫『知的生産の技術』のカード方式のノウハウがデジタル全盛の今でもなお私たちの脳に響くものがあるように、「そもそも」に立ち返る原点回帰、温故知新というのは時折行う価値があることなのだと思います。

実際に、本書で紹介されている「CODE」と呼ばれる情報整理のステップの分析や、「PARA」の原則に基づくフォルダ整理方法は、確かに素朴でシンプルな話ではあるものの、「言われてみれば確かにそうだ」「こういう感覚を忘れてた」と読んで良い刺激がもらえました。「言われてみればそうだ」というのは逆に言えば言われるまでは分かっていなかったり忘れていたポイントなわけですから、それを補完してもらえるのは大変うれしくありがたいことと言えるでしょう。(ただ、本書の副題の「時間に追われない」というのは誇大広告気味ではと思いますが……)


というわけで、大変良い刺激を受けたので、混沌としてきた我がObsidian保管庫を大幅リニューアルすべく早速格闘しています。

うん、やっぱりPKMは面白い。



せっかくなので、おまけとして今までに読んだオススメPKM本を列挙しておきます。これらの本は本書『SECOND BRAIN』を読んでPKMに興味が湧いた方がさらにそれを深めるのに良いと思います。


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