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『三体0【ゼロ】球状閃電』読んだよ

疲れてる時は人は空想世界に旅立ちたくなる。ちょうどそんな気分に最適なのがSFですね。

コロナにかかったりやらなんやらで、現実世界の社会問題を考える気力も湧かなかった頃合に、そういえば積んだままだったなと引っ張り出したのがこちらの『三体0 球状閃電』でした。

世界的ベストセラーSFとなった三体シリーズの劉氏が著者で「ゼロ」と銘打ってはありますが、ぶっちゃけほとんど三体とは関係はありません。多少、匂わせ的な繋がりや、同じ人物が登場するぐらいで、全く別のストーリーです。あとがきによると、なんでもマーケティング的な狙いで「三体0」という邦題になったんだとか。

江草自身、「三体」ブランドによってタイトル買いをしたものなので、完全にマーケティングにしてやられたわけですが、SF小説としては十二分に面白く、非常に満足しています。

タイトルにある球状閃電とはいわゆるball lightningのこと。球体をしている雷みたいなので、なんかフワフワと空中を漂い動くらしいです。架空のものではなく、稀ながら現実に報告されてる自然現象なんだそう。もちろん、流石に江草は遭遇したことはないです(すぐ目の前に落雷して腰を抜かした経験はありますが)。

この球状閃電の正体を解明することに執念を燃やす科学者と、それを兵器として活用したい軍人が主人公です。

もちろんこれはノンフィクションの科学読み物ドキュメンタリーではなく、現実世界では依然として正体不明なままです。しかし、本作はフィクションなので、その正体がなんと見事に判明します。

この「球状閃電とは何であるのか」の解釈がまさにフィクションらしい斬新すぎる発想で度肝を抜かれます。あまりに予想外かつ面白すぎる視点に、「うはー、そう来るか!」と膝を打ちました。

三体シリーズの時からも感じてましたが、ほんと作者の頭どうなってるんですかね(褒めてます)。どうやったらこんな解釈が思いつくのか。

しかも、ただ解釈が斬新であるだけでなく、ちゃんとその解釈に基づいてストーリーがガンガンに動くのが凄まじいのです。設定だけは面白いけど、そこからのストーリー展開は面白くない作品は世の中そこそこありますが、本作は違います。

斬新な設定から生まれるストーリー展開もまたあまりに想像力豊か、かつ読者を刺激するエンタメ性溢れるもので、いやほんと圧巻です。最後まで次どうなるのかワクワクさせられます。
作者、天才ですわ。

稀ながらも現実に存在する自然のミステリーを、大胆なストーリーに仕上げた手腕はまさにSFの真骨頂と言え、素晴らしい読書体験となりました。

球状閃電とは何であるのか。
気になっちゃった人はぜひ読んでみてください。(ま、あくまでフィクションですが)

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