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育休中に自己研鑽や副業をしようとする人が出る理由

育休中に副業や自己研鑽をするトレンドへの批判のツイートを拝見しまして。

確かに「育休中に副業や自己研鑽をしよう!」的な発信をしばしば見かけるようになった気がします。
おっしゃる通り、育休中は育児と家事をするのが本分のはずですから、そうした育児や家事以外の活動に注力する様を声高に叫ばれるのをおかしいと感じるのは至極もっともです。

ただ、こうした育休中に副業や自己研鑽をしようとする人が出てくる背景には社会の構造的な問題があるのではないかと思うのです。


パピートラック(マミートラック)への不安

ちゃんと統計を取ったわけではないですが、育休中に副業や自己研鑽をしようという意欲を見せる人は男性が多いように見えます。つまりパパですね。

で、彼らがなぜそうした活動に手を出そうとするかといえば、端的に言ってキャリアへの不安があるからだと思います。

母親になった途端に王道のキャリアコースから外され、時短勤務でも可能な業務ではあるがその反面昇給や大きな仕事は望めない部署に誘導される「マミートラック」の問題は有名ですが、最近ではそのパパ版の「パピートラック」も指摘されるようになってきています。



もちろん、育休を取得したからといって、それを理由に仕事上で差別をしてはいけないことにはなっています。
しかし、現実、育児に携わることによって融通が効かなくなることは増えますし、それこそ上司側も「良かれと思って」パピートラック(マミートラック)を勧めてしまいがちです。

これまでのマミートラック問題も解決の糸口が見えてない中、いかにパタハラはしませんよと言われていても、育休パパたちに「パピートラック行き」への疑心暗鬼や不安な気持ちが湧いてくるのは仕方ない面があります。
実際、育休を取らない(取れない)男性陣の多くが、その理由として「キャリアへの支障を来たす(来しそう)」を挙げます。



それもあって、男性の育休取得はまだまだ少数派です。もはや異端児と言っても過言ではないぐらいです。

それでもなお育休を取得しようとする父親は、どちらかというと意欲的な人物、進歩的な人物、あえてスラング的に言えば「意識高い系」が多いはずです。

そういう人にとって、パピートラック行きへの不安や不満はより強いものになりえます。また、場合によっては、その強い意志により育休取得を強行したために上司や会社との間に溝が生まれてしまった方さえいるでしょう。

だから、会社のキャリアはもうあてにならないから、いっそのことこの育休期間を使って、自分の新たな可能性を切り開いてみようなどと、「意識が高い」からこそ思いついてしまうのだと思われるのです。
(最近ではYouTubeで両学長のリベラル・アーツ大学も流行っていますし)


もちろんだからといって、「意欲が高いパパなのだから育休中の副業や自己研鑽も大目に見ろ」と言いたいわけではありません。

これは男性だけの問題ではないからです。
いえ、むしろある意味女性の方が重い問題かもしれません。

非常に悲しいことに、「当然母親が育児家事の主担当でしょ」という社会の空気の圧力のせいで、意欲が高いにもかかわらずキャリアを断念してマミートラックに行かざるを得なかったママたちはこれまでにたくさんいるはずです。

彼女たちは「母親失格」の烙印を恐れ、そんな大っぴらに「副業しよう」「自己研鑽しよう」とさえ言えなかったわけで、そういう意味ではそれを軽々しく喧伝する育休パパたちはずいぶんと無邪気に映ると思います。
それについて怒りや不満の気持ちが湧くのは確かに当然です。


ただ、ママにせよ、パパにせよ「育休を取得することでのキャリアへの不安」という同根の問題を抱えているわけです。

ママはママになることで半強制的にキャリアを抑制させられる辛い仕打ちに会い続けています。
そして、パパはパパで「やっぱり俺が家計を支えなくては」という社会的呪縛があるゆえに、育休取得に伴うキャリア不安がより強くなり、自己研鑽なり副業なりに手を出さざるを得なくなってます。


まだまだ途上ではあるもののパパ育休が普及し始めたからこそ、こうした共通の「キャリア問題」や「男女の役割分担の固定観念の問題」がよりあらわになり、社会に問題提起しやすくなったと言えます。

これで初めて「育児に伴うキャリア不安」が、「育児にフルコミットしない母親のワガママ」と差別的に片付けられることなく、「男女共通の社会問題」として認識しうるようになったわけです。

これを良い機会にマミートラック、パピートラック問題をどうするか、社会的な議論が進むことを期待します。



(このテーマではもっと書き足りないことがあるのですが、今日はこの辺で。いつものごとく、続きはあるかもしれないしないかもしれませんが)

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