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維新の会と『信長の野望』 

     


 戦国時代のシミュレーションゲームである『信長の野望』をプレイしたことがあるだろうか。このゲームは尾張国の領主としてスタートする織田信長が、領国経営して豊かにする一方で他国を攻撃して占領し、領土を増やしていき最終的に天下統一を目指すという内容である。領国経営しつつ戦争もしないといけないわけでそのバランスがなかなか難しいのである。




 維新の会が地方の首長選挙で次々と勝利を収めている。そのパターンはいつも同じなのだが、大阪で自民党を分裂させて維新の会を誕生させたことと同じく、その土地の自民党県連を切り崩して分裂させ、そこに維新的な新自由主義の考え方を持ったロボットを送り込むという手法である。まず首長を取り込み、地方議会を支配し、最終的にその地域の衆議院議員すべてを自党の議員にしてしまうというのが維新の会の戦略である。大阪で成功したやり方を他でも実践しているのだ。つい先ごろ、維新推薦の知事が長崎県で当選したと思ったら、今度は石川県で維新推薦の馳浩が知事になった。いずれ地方議会の定数をどんどん減らして支配下に置き、中味の全くない「身を切る改革」を」宣伝して行政サービスを削減して住民に身を切らせ、日本中を竹中平蔵王国にしようというのが維新の会の野望である。 


 たいした問題がなかった地方自治体の行政に突然ケチをつけ、「改革」と称して乗り込んでくる維新の会の手法は、私から言わせれば「悪質なリフォーム詐欺」みたいなものである。「シロアリがいました」と言って用意したシロアリを出して見せて、そうして法外な駆除費用を要求するのと全く同じものである。ところが有権者は簡単にこれにだまされるのである。一度支配を受ければどうなるか。兵庫県の医療行政が破壊されて「大阪モデル」に近づきつつあることからもよくわかるだろう。




 大阪はもう完全に維新の支配下になった。その結果として「公」の部分が大幅削減されつつある。大阪市や大阪府の資産が維新とつながりのある業者に叩き売られ、行政サービスは大幅にカットされ、国保料や介護保険料は値上げされる。私立高校に通う生徒の授業料の一部を補助する制度を作った結果、公立高校の志願者が減り、結果的に多くの公立高校が統廃合に追い込まれ、公務員数を削減するという政治目標が達成された。そうして公の部分をどんどん削っていった先には何があるのか。弱肉強食の殺伐とした荒野が広がっているのである。家庭の貧困などが原因で学習機会が保障されず、結果として学力が低い生徒の受け皿となる地元の公立高校がなくなるということは、社会の中で貧富の差がさらに拡大するということにつながる。




 知事→府県議会→市町村議会という流れで上から下まで支配を完了すれば、小選挙区制のメリットと組織力、そしておなじみの小銭バラマキ政策を通じて集票し、衆議院議員を当選させていく。昨年秋の衆議院選挙では大阪でその作戦が見事に当たって大勝した。一県ずつ着実に支配地域を拡大していくその維新の手法は、まさに現代版の『信長の野望』なのである。こんな連中を絶対に首長にしてはならないのである。単なる勢力拡大だけが目的である維新の会は、政治に対する立派な理想も持たず、行政能力はまるでなく、大阪では日本一の死者を出してるのに有効な対策を何一つ打てず、その一方でテレビに出ては「頑張ってるアピール」を繰り返すのだ。




 こんなひどいペテンに引っかかって維新に投票するのは何も考えてない馬鹿な大阪の住民だけだと思っていたら、なんと長崎県でも石川県でも維新知事が誕生してしまった。どちらも自民党の県連が維新の怖さを知らずに連携している。これは実に恐ろしいことである。参院選に向かって維新の会の連中の悪だくみがますます加速して暴走したらもう止められない。ナチスが最初はドイツ南部の一地方勢力でしかなかったように、維新の会も大阪の地域政党だとい思われてその恐ろしさは過小評価されていたような気がする。大阪、兵庫、長崎、石川とすでに4つの府県が維新の会の勢力下になったのである。兵庫ではさっそく「身を切る改革」ならぬ「明石公園の木を伐る改革」が実行されようとしている。明石市の泉房穂市長の会談申し入れに対して、なんと斎藤元彦知事は「着信拒否」しているのだという。筋金入りの政治家である泉市長に対して、ただの操り人形の斎藤元彦はサシで勝負する自信がないので逃げ回っているのである。




 維新の支配地域をこれ以上増やせば取り返しのつかないことになる。自治体の財産で金になるものはじゃんじゃん売り飛ばされ、後は焼け野原になってしまうのである。大阪市立の高校はすべて松井一郎市長の専決処分で大阪府に無償譲渡されてしまった。府は独自のルールに基づいてその高校を廃校にしてから民間の不動産業者に売り飛ばすのである。大阪市内の学校跡地にはいずれタワマンが乱立するのだろう。




 大阪の悲劇は橋下徹を知事にしたときにはじまった。維新の会の連中が行政を牛耳って公金をパソナなどのお仲間企業に還流させ、カジノに1兆円つぎ込むという流れは橋下知事からスタートしたのである。松井一郎の下僕である斎藤元彦が兵庫県知事となって県民の身を切る改革を進め、維新は地方の自民党組織を次々と切り崩して長崎県、石川県で知事選挙に勝って勢力圏を広げた。




 維新の会の野望を阻止し、この連中がこれ以上増殖しないように与党も野党も結束しないといけない。大阪だけの悲劇ではない。維新は2軍の地位で満足する気はない。いずれ自民党をのっとって政権政党になろうとしている。その危険性に早くみんな気づいて欲しいのである。



モノ書きになることを目指して40年・・・・ いつのまにか老人と呼ばれるようになってしまいました。