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人事は、人のことを考えるのをやめなさい

いったん人のことを忘れよう、と私も自分自身に呼び掛けることがよくあります。

人のことを考える、というのはメンバーや関係者の個人個人の感情や反応を脳裏に浮かべるような状態です。

具体的には
・新しい戦略を打ち立てていこう。〇〇さんと〇〇さんは新しい戦略に賛同しそうだな
・今回の人事方針はざっくりこんな方針かな。でも、〇〇さんが、ネガティブな反応しそうだな
とかです。

この具体例の中には相手のポジティブな反応が入っていることにも注目してください。
「〇〇さんと〇〇さんは新しい戦略に賛同しそうだな」というのも相手の感情であり、反応です。

関係者やメンバーの感情と反応に振り回されていると、そもそもの戦略や人事方針がブレていきます。経営と人事が見るべきは感情と反応ではなく、ゴール(ミッション、ビジョン、バリュー、戦略的目標)です。
そうしないと、人に気に入られるような施策になったり、もといゴールそのものが人に気に入られるものになっていくからです。

何度も書いていますが、組織の中には階層性があります。メンバーレベルは高い理想、現状の外のゴール、組織全体が見えていません。市場も分かっていなければ、未来の予測も立てられません。
そういったメンバーの感情と反応ばかりに気を囚われると、経営や人事の思考が濁っていきます。
ノイズが入ると言ってもいいでしょう。

人事戦略や人事施策も同じで、ゴールばかりにフォーカスするべきです。

できるのか?誰が付いてくるのか?誰がどんな反応をするのか?は施策の選定や計画段階で考えるべきであり、戦略や施策そのものを考える際には放っておくべきことです。

人の上に立つ人はサイコパスに見えます。人事もサイコパスに見えます。
リーダーはフォロワーから見れば、サイコパスだからです。
理想に向かって現状を否定し、手段を選ばずに突き進む人はサイコパスです。(でもサイコパスはモテます。)

社会が優しくなり過ぎた現代においては尚更でしょう。

メンバーは現状に張り付きます。
メンバーはあなたにしがみつきます。
メンバーはあなたを引きずり下ろします。
メンバーはあなたに媚びます。
メンバーはあなたに感謝を表します。

行かないで。
変化は耐えられない。
私を見て。こんなに苦しいの。

その方針に私は賛同します。
私の価値観を受け止めてくれて、うれしいです。

全部ノイズです。

ポジティブな声でさえ、ノイズです。われわれが心の中に響かせるべき声は「お前のためにやっているのではない」「私がやりたいからやっている」「顧客と社会のためにやっている」です。相手の反応と感情を気にして戦略を立て、施策を実行するのであれば、組織は内向きになっていきます。

但し、相手が「子ども」であれば、です。
成人発達理論的に「大人」が多い組織はある程度メンバーの成熟度が高いので、耳を傾けてもいいでしょう。それでもあなたが思っている以上に相手は「子ども」です。それを認めましょう。

でも、そんなに極端な考えで人が付いてくるの?と思うかもしれませんが、経営がやりたくないことに付いてきてもらって何がうれしいのでしょうか?
付いてこなければ辞めてもらえばいいのです。
誰も付いてこなければ新しい会社を始めればいいのです。

経営と人事の悩みはほぼ人の事につきます。

経営も人事も、他人事(ひとごと)で考えればいいのです。

将棋の駒のように人を見て戦略を立てるのです。

こういった助言に「冷酷ですね」と言う人がいます。
いや、顧客に届ける価値の定義と戦略、会社が生き残る方法を考えることを放っておいて、メンバーが中途半端に満足するような会社を作る方が私は冷酷どころか残酷だと思います。

経営、人事が人の事を考えすぎていませんか?