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番外編: 大晦日

『んー、あったかい!』
『そりゃーこたつでぬくぬくしていればね!』

『さぁ、準備をするのだわ』
『えー、今からいくのー、寒いよー』
『明日にしない?アバランチ姉ぇ』
『だめよ、今日行くから意味があるのよ』
『大晦日って日の意味、きちんと理解している?』
『わかっているよーー、でも、寒いのぉ』
『仕方ないわね』
『tx-avax to avax and evmos/heart26Celeius』
そういうとアバランチ姉ぇはトランザクション発動する。
エブモスを温かな空気が包み込む
『うわぁ、あったかい!』
『さぁ、それで寒くないでしょ』
『早く支度をするのだわ』
『うん!ありがとアバランチ姉ぇ』

暫くすると、準備を終えたエブモス、そしてアバランチ姉ぇが玄関に出そろった。
外は、暗いが雪も雨も降ってないようだ。

『さぁ、出かけましょう!』

厚着をして出かける2人
首をくるっとマフラーで巻いたおかげでトランザクションで出来た温かな空気が体表を循環する。
身に着けるエアコンが出来たみたいだった。

近所の神社、Toriさんが巫女さんをしている神社
境内に踏み込むと、絵馬が販売している。
それぞれ来年を象徴するような絵馬のNFTだ。
横にはお札と破魔矢、おみくじのコーナーがあった。
アバランチ姉ぇは、お札と破魔矢を購入していた。
『アバランチ姉ぇ、わたし、おみくじしたい!』
『いいわよ』
『よーっし、絶対大吉ひくぞ!!』
気力を込め、みくじ筒を良く振る。
勢いよく、引く。
『ってーい』
出てきた棒に記載された番号から、該当する紙を巫女のひとりが判別して渡してくれる。
『これって、えっ、大吉!!やったーー!』
詳細欄を読まないで喜ぶエブモス、もっとも、詳細欄に記載されていることは、
エブモスにとって素晴らしいことばかりだった。
自分が得るよりも、周りに与えたい。
ひとりよりも、みんなで。
そんな、彼女にふさわしい言葉が記載されていた。
ふと、アバランチ姉ぇがそれをみて、『エブ子らしくて、素敵ね』と言った。
『エブ子ちゃーーん、手を振りながら元気な巫女さんが現れる』
彼女の名前は、Toriさん。
この神社の宮司さんの娘さんだ。
今日は、神社の忙しい部署に赴いては手伝いをしていたのだ。
今もきっと、移動中のはずだ。
『Toriさん、お久しぶり!やっぱり、巫女服すごくかわいい!似合ってる』
『エブ子ちゃん、ありがとう』
『アバランチさん、こんばんは』
『いつも、エブ子ちゃんと良くさせて頂いてます』
『そんなに構えなくていいのよ』
『では、エブ子ちゃん楽しすぎて、毎日たのしいです!』
『今日は、ゆっくりしていってくださいね』
『あそこがお焚き上げを行っている区画です』
『甘酒を無料で振舞っていますので、飲んでゆっくりして頂けたらと思います』
『今日は、寒いですが、甘酒を飲めば温まります』
『えぇ、ご相伴にあずかろうかしら』
『でしたら、こちら』
そう引っ張るように案内してくれた。
境内の広い区画、そこに普段はない焚火が出現している。
横では、巫女さんが甘酒を提供している。
『甘酒を2つ頂けるかしら』
『はーい』
『そして、提供される熱い甘酒』
『じゃあ、二人ともゆっくりしていってください』
『Toriさんも頑張ってね!』
そうエブモスとToriが挨拶を交わすと、Toriが仕事へと戻る。
二人はゆっくりと、甘酒を飲む
『あっつ!』
『エブ子、ゆっくり飲みなさいよ熱いのだから』
そういって、アバランチ姉ぇも飲み始める。
『熱いのだわ!』
『アバランチ姉ぇもゆっくり飲んだ方がよいよー』
『これは、そう、私が猫舌なだけであって、ゆっくり飲んでいるのだわ!』
その言い分は言い分で、大変な気がするがアバランチ姉ぇとエブモスはゆっくりと甘酒を飲む。
『そういえば、ポル兄ぃ達、今日来なかったね』
『ポルカドットとアス太君は、今日は、仕事』
そうとだけ、妙にそっけなく言った。
『Juno姉ぇもお仕事』
『シークレット君の家は、みんなで温泉旅行よ』
『温泉旅行!いいなぁー、わたしも行きたかったなぁー』
『ふふ、温泉旅行っていっても、発掘とセットよ』
『だから、エブ子はいっても楽しめないかもね』
『あー、オズモさん関係の』
『そうそう、学術的な調査、その後の温泉ってこと』
『じゃあ、パスね』
『エブ子はいつもそうねー』
『エブ子は、何か好きなことあるの?』
『私は、友達と一緒に遊ぶことが好き』
『友達と別の友達と一緒に遊ぶのはもっと好き!』
『そういうことじゃーなんだけどね』
『あとは、走ること!!』
『3つを網羅する仕事はあり、いずれも高給取りだけど、全部激務よ?』
『うへー』
『まぁ、そこはエブ子が決めることだしね』
『私は、何も言わないわ』
『んー私の事だけいってさー!アバランチ姉ぇはどうなの!?』
『私は、新しいトランザクションの研究してもいいし、ファッション関連の事業を起こしてもいいと思っているわ』
『そうじゃなくて、やりたいこと』
傍目には、ごまかしているように見えなくても、エブ子にはわかっていた。
それが本当に望んでいることではないことに。
『それは、目的じゃなくて手段なのだわ!』
エブモスがアバランチ姉ぇの口調を真似ていう。
『くっ』(今日に限って、妙に鋭いのだわ)
『さぁ、私だって言ったのだから、いってほしいのだわ!!(エブ子)』
『・よめさん』
『聞こえません事よ!(エブ子)』
『お嫁さんよ!!!何よ、そのへたくそなお嬢様もどきの言葉!!全然似合ってないのだわ!』
『凄みをだすために、使いました!』
『そんな料理に一工夫しましたみたいに言わないの!もう!どこで覚えるのかしらそういうの』
『手間暇かけて仕込みました(職人エブ子)』
『そのくだりはもういいわ』
『それよりびっくりしないのお嫁さんって、いったい何世紀前の回答よって感じでしょう』
『ううん、そんなことないよ。アバランチ姉ぇはいつでも恋する乙女だし、それにこれまでの流れからわかっていたよ』
『だって、ポル兄ぃのところだけ説明がそっけなかったじゃん』
『まるで、Juno姉ぇで違和感を消して、その後ごまかすようだったもの』
『』
『エブ子、本当にエブ子なの??』
まるっとあてられたアバランチ姉ぇは、驚きを隠せなかった。
『そうだよ。エブ子だよ!』
『わたしも、日々成長しているってことだよ!』
(まぁ、あれだけの事件を乗り越えれば、直観だって成長するわよね)
『わかったのだわ』
そういうと、アバランチ姉ぇはエブモスの頭を撫でた。
『あーー子ども扱いしてるー』
『なら、やめる?』
スッと手を引く。
『いやーもうちょっとやってー』
『はいはい』
妹の姉離れはまだのようだ。
しかし、それは遠くないうちに訪れるとわかっているのだからこそ、今この時間が愛おしとアバランチ姉ぇは思った。
((もう少しは、このままっね))

『強い願望はあれど、それは変わっていく』
『変わらずに芯になっていくものもあれば』
『原型を止めず、次の願望を育てる為の栄養になる場合もある』
『まさに自然だね』
そんなくさいセリフを言いながら、目の前で甘酒を飲むエルフ耳の青年
『やぁ、またあったね、エブ子ちゃん。はじめまして、アバランチさん。僕の名前は、ピース。渡りの技術者さ』
そういって、彼は挨拶をした。
アバランチ姉ぇは、真っ赤になっていた。
(確かに彼は美形だけど、アバランチ姉ぇの好み、、、ドストライクだわ!!)
さながら、ポルカドットは、暴れ馬に乗って現れる武人の様な王子だ。
それとは対照的なピースもアバランチ姉ぇの好みだった。
とはいえ、あの夢の後に浮気が過ぎる。
『うわきものー』
そういうエブモスにアバランチ姉ぇは照れながら言う。
『しっ、今はだまって、しかも、こんな王子みたいな人どうやって知り合ったのよ』
『んー、私が』
『いいよ、エブ子ちゃん。僕から話そう』
そういうと、パチンと指を鳴らした。
あたりから人混みの音が消え、川辺に風景が変わる。
そこに人はいなく、自然とエブモス達のみだった。
『少し話しやすい場所に移動したよ』
そう、ピースは言いながら、話を始めいようとしていた。
(エブ子、この人何者???詠唱もなくトランザクションでもないのに世界に働きかけた)
(エルフのお兄さんだよ)
(エルフのお兄さん?)
『あれはね。一連の事件が始まる前、学校帰りのエブ子ちゃんに声をかけたのがきっかけかな』
『正直、怪しい人だと思ったよ。だって、自分の事、エルフのお兄さん、名前はピースだっていいながら満面の笑みでほほ笑むんだもの』
『確かに、それは、怪しいわね』とアバランチ姉ぇが続く。
『うんうん、それは、僕も思った』
『でもね。時間が無かったんだ』
『『時間が?』』
『そう、この世界に対するAFROっていったらいいのかな、FTXとアラメダリサーチを率いる彼とその一派、そして、FTTの進行があまりにも早すぎた』
『エブ子ちゃんに会うタイミングが少しでも遅かったら、僕はこの宙域の星に来ることはできなかった』
『きっと、AFROとFTTに追い返されて干渉できなかった』
『でも、その中でわたしを選んだ理由って何かあったの?』
『君は、聞いていないのかい?』
そういって、ピースはアバランチ姉ぇの方を向いて、話していいかどうか許可を取ろうとした。
『貴女は、特別な子なの』
そう口火を切り、話し始めるアバランチ姉ぇ
(そうか、君がこれは話した方がいいね)
決心するまで時間がかかったのか、彼女が少し自分を落ち着けた後、ゆっくりと話しを再開した。
『エブ子は、もちろん、私にとって妹って意味で特別よ!そこは譲れないは!』
『アバランチ姉ぇ』
『ただそれとは別にも特別だったのよ。変わっていたのだわ』
『貴女は、自分がいくつかのトランザクションが苦手っていっていたことあるでしょ?』
『発動まで時間がかかるとか、そもそも式が長くなる、その長い式じゃなきゃできないこと、多かったでしょ』
『うん。アバランチ姉ぇ、よく覚えているね』
『あんたの姉何年やっていると思っているのよ!!』
そう言いながら、エブモスの両ほっぺをつねった。
『いたたたあぁ、アバランチ姉ぇ乱暴だよぉ』
『でも、成長したのだわ』
『だって、貴女、人一倍練習していたのでしょ』
そういうと、アバランチ姉ぇがエブモスを抱きしめた。
そして、語り始める。
『貴女のコアがCOSMOS-SDKで出来ているEVMだからよ』
『??』
『簡単にいうわね。貴女の心臓を作るのはコスモスの力、でもそこから体を巡っているのはコスモスとイーサリアムなの』
『1つの体に2つの法則が同居している』
『それが貴女なの』
『だから、コスモスさんともノノちゃんとも仲良く出来たんだ!』
『そう、それが君のちからなんだ』
『コスモスの世界とイーサリアムの世界を結びつけることが出来る両界の嗣子、それが君なんだ』
『そんな大したものじゃないよ』
『でもね。色んな人と仲良くなるちから、くれたことに感謝だね!』
『前向きなんだね。やっぱり、君に力を貸してよかった』
『じゃあ、あのネイルも?』
『僕が施した』
『ただ、あの場所ではあの程度しかできなかったけどね』
『そんな!!あのおかげで、どんなに助かったか!!』
『あれはね。それなりに固まった無の力を閉じ込めて君のEVMで動くようにしただけだから、大したことはしていないよ』
『もし、大したことが出来たとしたのなら、それは、君の意思のちから!そこが一番大きいんだ』
『強力な技術やちからこそ、使うものの心が大切になる』
『実をいうと、今日は、提案に来た』
『提案を受けるもよし、蹴るもよし』
『すべては、君の自由だ』


『端的に言おう、留学をしないか?』
『留学先は、外宇宙、ヒトという生命体の通っているXXX大学だ』
『僕もかつて、通っていた母校だ』
『君をマテリアライズし、戸籍と名前、つまり居場所を与える』
『この世界の理を理解し、真の意味で全てを繋げてくれないか』

それは、過剰ともいわれる期待。
神とも思える存在からの、自らと同じ存在になり、学んで欲しいという誘い。
エブ子の頭は、しかし、考えを止めない。
これまでの危機。
エブ子が生まれる前に発生した過去に発生した問題。
すべてが紙一重で、解決した問題。
いずれかのIFがあっただけでも成り立たなかった平和。
それは、氷山の上にあるのだという事もどこか理解していた。
いつ裂けるかわからない不確かな氷の上で謳歌される平和。
それをどうにか出来るかもしれないという提案だ。
エブモスは真剣に考えていた。

『そんな考えこまなくていい、重大なことを君にすぐ頼むというわけではないんだ』
『だから、留学する。くらいのレベルで考えてくれないかなー』
そう、ピースは付け加える。
『そんなの、そんな重責をエブ子一人に押し付けるなんて出来るわけないのだわ!!』
『そんなことをしたら、私、姉失格なのだわ!!!』
『だから、この話は、断ることにします』
『エブ子もそれでいいわよね!』

『んー、だったら君も来たらいいんじゃないかな?』
『それに前例がないわけじゃーないんだ』
こともなげに、とんでもないワードを打ち込むピース
『まず、マテリアライズの定員は2人、僕は人数に含まない。だから問題ないでしょ』
『連絡は、意思達のアドレスに直接プログラミングすれば届くし』
『前例は、コスモス、あの子の前世は、コスモスに入れ込んだ一人の科学者なんだ』
『『なっっーーー』』
『『コスモスの前世って!!』』
『うん、そうなるよね。でも、これはコスモスから聞いた方がいいかな』
『だから、向こうの人間がこちらに来た例があるんだから、逆だって大丈夫なんだ』
『なぁに、サポートは僕がするよ』

『いったいどの位の期間になるの?』
『4年間』
『4年でドクターの知識まで詰め込んで、全て出来るようにする!!僕がね』
『えっーーーーーー』

『旅費は?』
『いらないよ。僕が用意するからね』
まさに至れり尽くせり。
というのも、ピースが弟子を作り、チェーン間の平和を調停したいという思いがこれを加速させていた。
『すぐに返事は、できないわ』
『いつまで待ってくれるの?』
エブ子は、強くそう聞いた。
そこには、周りを説得して自分の道を歩み始めようとするもの特有の目の光が見えた。

『3か月後の2023/03/01 その日、僕はもう一度君の前に現れる。その時に答えを聞かせてくれたらいい』
『わかったわ』
『チャンスをありがとう、ピースさん』
『うん、そういう素直に感謝できるところやっぱりいいね』

『じゃあ、僕の話は終わり』
『せっかくの大晦日に邪魔してわるかったね』
『これ、お土産』
そういって、ピースは大きなりんご飴を二人に渡す。
そして、パチンと音を鳴らすと、元の境内にいた。
人混みもそのまま。
ただ、ピースの姿はなかった。
『あっ、草笛わすれちゃった』
物陰から、出てくるピース
『これ、いい出来なんだよねー』
そういうと、彼は草笛を吹き始める
『プピー』
周りの参拝客が着目する。
『んーいい音!!まさに自然だね』
『おっと、じゃあ、僕は行くね』
そういって、徒歩で帰っていくピース
『天然なのかしら』とアバランチ姉ぇ
きっと『天然なのよ』と天然の2人に天然認定されるピース
いや、まぁ自然が好きだからねピースは、だから、天然って響きはある意味ただしいのかも。
天然ボケという意味でも正しい。
しかし、間違いなく天才であることには変わりなかった。
なぜなら、あの会話の時間で、エブモスのネイルを再チャージしていたのだから。
2人に気付かれずに。
その上で、エブモスとは正反対のアバランチ姉ぇの手に同じように3つのネイルを仕掛けたのだから。
まぎれもない天才の技だった。
それは、後に気付く問題として、エブモスとアバランチ姉ぇは岐路に着いた。
いくつもの、自分たちには負えない様な課題、関係のないと思っていた世界の話し、責任、技術
つまりは、重たい話しを持ち帰ったのだ。

家には、何故か電気がついていて、急いで今に向かうと、そこでは。
『『『『ハッピーニューイアー』』』
12時の音を時計が伝えたと同時に、そう、声が発せられた。
ポルカドット、JUNO姉、アス太君
『わぁーーーん』
懐かしくなったのか、さっきまでの重荷が降りたのか、エブモスがポルカドットに抱き着く。
『おう!どうした久しぶりに会えて、さみしかったか!』
そんなことを冗談めいた口調でいうポルカドット
『うん、うん』と抱き着きながら頷くエブモス
目じりを拭う、アバランチ姉ぇ
『ほんとうにどうしたんだお前たち?』
JUNO姉ぇが心配するように二人を見やる。
『なんでもない、でも、ちゃんと整理出来たらみんなに説明するわ』
『私とエブ子で』
そうアバランチ姉ぇが力強く答えると、皆は頷いた。
それで、この話はお終い。
後は、みんなで新年のお祝いをいって解散した。
そこには、来年は、比較にならないくらい良い年になると書かれたおみくじがテーブルに置かれたままになっていた。
全ては、進むべき方向へ。
自然の方向へ。
良い方向へ。
物語は、まだまだ続いていく。

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