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桜の枝を折ったのは #みんなでポエム書いてみた

たおやかに桜が舞う カフェのテラス席
あなたがちょっと席を外した隙に
あなたの鞄からこっそりとり出した手帳
どうということのないスケジュールの先に
見慣れた手書きの文字

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        君との時間

黄金色の絨毯を踏みながら 忍び込んだ講堂
ぼくだけのために弾いてくれた モーツァルト
最後の3つの和音をわざと外して
エへ,村の音楽家よ と 舌を出した君
もしもヴァイオリンが弾けたなら
君のためのクライスラーで
最後の音を半音だけずらしてあげたのに

朝日が湖を銀色に輝かせた朝
霜柱の上で踊りながら
そのひとつまみを はいデザート と差し出した君
氷を拳骨で割って皿にして
融けていくのを見つめながら
君が歌ったシューベルト
菩提樹の一つ前よと ぼくが知らないと思って

福寿草の黄色から 薄紅色に花は移ろい


途中で終わっている
誰にあてて 書いた詩なの
あなたがまだ来ないのを確かめて
急いで繰った住所録
たったひとりだけ
住所のない 私の知らない女の人の名前
でも そのあとに
わたしの携帯の番号
いつまでたっても覚えなくて,と言っていた番号
メールくれればいいのに
それなら携帯が覚えるでしょって
いつも笑っていた,夏,秋,冬

紫陽花が雨と語らっている 古寺の庭
あなたの鞄からこっそりとり出した手帳
前より黒くなったスケジュールの先に
詩の続きが書いてある

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無造作に そのひと枝を君は折る
だめだよ というぼくに
いいのいいの ショパンのエチュードなんだからと
その花の色に君は笑った
弾けないヴァイオリンのかわりに
シューマンをフルートで返そう

ベランダに咲いた クレマチス
あなたは夏の雪なのと 君が問いかける 


また途中で終わってる

住所録のページが1枚
それとわからないように消えていた

そう 桜を折ったのは。


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ポエム・イン・ポエム

だいすーけさんの企画に乗りました。

これも,はじめは「ポエムかあ,小学生の時によく書いたけど,いまは無理か」と思っていたのですが・・・・
今回も火をつけたのは あのライターです。(^^)

なぜモーツァルトで村の音楽家なのか とか 菩提樹の前 とか,説明するだけ野暮ですね。気になる方は適当にググってください。