見出し画像

眼差しが物語を推し進める凄いドラマ/『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』レビュー

マーガレット・アトウッドの原作は未読。
ほぼ1年前に本国huluで公開されるや、絶賛に包まれhuluの会員数を激増させ、エミー賞も受賞した本作がやっとのことで日本huluで配信開始になりました。第5話までの感想です。

『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』ーーーーーーーーーーーー
あらすじ:
不妊が蔓延し出生率が激減、キリスト教再建主義がクーデターを起こし体制が転覆した“アメリカだった”国、ギレアド共和国。
女は抑圧され、生殖能力を持つ者は侍女として政府高官の自宅に住まわされ、名を取り上げられ、毎月“儀式”の日を待つ。
そんなディストピアを生きるジューン=侍女オブフレッドの物語。

少しづつ話数を重ねる毎にギレアド共和国の規則や体制の一片が分かってくるのでまだ全貌は見えないけれど、この5話時点で既にかなりヘビーなディストピアだとわかります。女性は産む器械、歩く生殖器の扱い。
その点についての考察などは他のブログなどで多々出ているのでそちらに譲ります。恐ろしい世界ですが、それなりに現実的だし過去の歴史上遠からずな時代を経ている設定だと思います。

でもそんなショッキングなディストピア世界のドラマなのに重すぎず、この設定なのに希望や自由が見える、なんとも魅力的な作品なのが凄い!

まず、提示されるヴィジュアルがとにかく美しい。
特に衣装。赤いケープと白いマントの侍女、緑の衣装のマーサ(家事)、青い衣装の妻たち。その識別され均一化された色彩とフォルムの美しさ、不気味さ。
高官であり家長のフレッドを演じるジョセフ・ファインズの着こなす、いかにも仕立ての良いスーツ。
レトロな内装を持つ格調高いお屋敷と、異様に整頓されたスーパーマーケットの陳列。物語全体の色調。
そのコントロールされた配色や配置の効果に、目が離せない。

そして、実はとてもユーモアに溢れた作品であるということ。
現在をベースに、この世界になる前の過去のジューンのエピソードが巧みに挟まれる脚本。
様式美といっていいほどに構図化され固定化したカメラワークで描く現在の描写と、ハンディカムのように自由に表情をとらえ動きを追う過去場面のカメラワークの対比、そして過去場面での敢えて外しに来ているとしか思えない絶妙に気を緩めるチョイスの音楽。
時折かぶさるオブフレッドの心の声も毒っけがあり、第2話ラストの
「・・・Fuck」
への流れは特に最高です。

そんな主人公ジューン/オブフレッドのキャラクター造形。
この世界で、「生きる」ことへのまっすぐな眼差しを持つ力強さもさることながら、エピソードとともに徐々に見えてきた「したたかさ」。
5話はかなり大きな進展があって、実は彼女は人の旦那を寝取って結婚していたことが視聴者に提示される。
そしてそのエピソードでは、フレッドとの“儀式”の変容、そしてフレッドの運転手であるニックへのアプローチも描かれて、彼女の一筋縄ではいかなさが全開!

それもすべて、ジューン/オブフレッドを演じるエリザベス・モスの演技が最高だという事に尽きる。
彼女の意志的な眼差しは、何よりも雄弁。
そしてその眼差しの交わりの変化が、物語を推し進める。
過去の世界で、彼女は偶然知りあった未来の夫とのランチで、とにかく彼をまっすぐ見つめる。何かを伝えるように。
1話の“儀式”では妻と視線を交わしていたはずのフレッドが、彼女との秘密のボードゲームの時間を経て、5話の“儀式”では彼女に刺さるような視線を向けながら腰をふる。
本能的なセックスの無い世界で、ニックとオブフレッドはその最中に視線が交わったことに何かを感じる。

抑圧された世界だからこそ、強く生きる眼差しは強力な引力をもち、周囲に少しづつ変化を生じさせる。
その眼差しが、本作のメッセージである「希望」を体現しているんだろうな。
それが、生き残りたい!ではなくて、自分の人生は自分で主導権を持って自由に生きる、という事に向いているのが逞しくて大好きです。

あー、早く後半が見たい!!
オブグレン役のアレクシス・ブレデル、高官の妻セリーナ・ジョイ役のイヴォンヌ・ストラホフスキーの美しさ、そして今後の展開も気になります。
huluにて配信中。

#ドラマ #海外ドラマ #ハンドメイズテイル #コンテンツ会議
#note海外ドラマ部

この記事が参加している募集

コンテンツ会議

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?