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30日間の革命 #毎日小説6日目

 まず坂本と加賀が行ったのは、仲間を増やすことである。いくら二人に力があれど、革命ともなればもっと大勢の力が必要となる。坂本の構想では、自分たちを含めてあと4人を主要のメンバーとして集めるというものだった。

 まず目をつけたのは、部活動である。進学校ではあるものの、部活動も盛んに行われているので、部長やリーダーといった存在の影響力は大きいと判断したのだ。そして、その中でも最も人気の高いのが「野球部」である。

 我が校の野球部は強さはないものの、厳しいことで有名であり毎日かなりハードなトレーニングを積んでいる。毎年数十名が入部し、現在も40名を超える学生が所属している。また練習以外でも、日常のあいさつや身だしなみなども、他の生徒よりも厳しくチェックされ、少しでも乱れようものなら、監督から激しく叱責される。昔ながらの軍隊式で鍛えられているのだ。そんな野球部でキャプテンを務めるためには、厳しい練習にもついていく体力が、メンバーをまとめることが出来る強い統率力が求められる。だからこそ、坂本はそこに目をつけたのである。

 現在の野球部キャプテンは、3年3組の「森下 雄二」である。森下は1年生のころからベンチ入りをし、2年生でレギュラーを掴むほどの実力の持ち主である。基本的には優しい性格をしているものの、いざ野球のことになればその優しさは一切捨て、まさに軍隊のごとくメンバーを率いている。

 加賀は1年生のころにクラスが一緒だったため、面識はあるものの、森下を引き入れることに対しては懐疑的だった。

 「森下は確かにリーダーシップもあるし、野球部でも慕われてるけどさ、どうなんだろ」

 「なにか引っかかるの?」

 「単純にさ、野球部って監督に絶対服従じゃん。極端な話、監督が誰かを殺せって言ったら、本当に実行しそうなくらいな感じだよ」

 「ひどい例えだね」

 「いや冗談じゃなくてさ、そんな部活のキャプテンが監督に逆らって革命なんて起こそうと思うのかなって」

 「確かにね。でもそこは、こちらの交渉次第かなって思ってる」

 「交渉ねー。なんか本当にすごい話になってきたね」

 「セトはまだ、革命を起こそうって実感ないでしょ」

 「話にはのったものの、いざやろうってなると、目標が果てしなさ過ぎて現実味が帯びないというか」

 「大丈夫だよ。そんなこと言ってられなくなるから」

 「小春が言うとなんか怖いな」

 「そうかしら? まあどちらにせよ、文化祭までそんなに時間がないから、とにかく森下君を引っ張り込まなきゃね」

 「そうだな。じゃあ交渉といきますか」

 二人は屋上から野球部が練習をしているグラウンドを見下ろしながら話した。

 そして、森下勧誘計画が始まったーー

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