不定期連載小説『YOU&I』3話
「……はぁ。いったい何だったんだ、さっきの時間は」
國立は一人で歩きながらため息をつく。今までの平穏だった生活からすると、先ほどの時間は異常なくらい國立を困惑させていた。
「……やっぱりもうあの授業は出ないでおこう。もともと授業はたくさんとっている方だから、単位的には問題ないし。それにあのグループはどうも居心地が悪いから、これから半期も一緒にやるなんて無理だな」
しかし、國立の頭には中野のあの笑顔がどうしても離れない。そして、あのとき自分に声をかけてきたのは”同情”なのか、それともそれ以外の何かなのか。
思い出すだけでも心がモヤモヤとしていた。
一方その頃、学食で昼食を食べている中野たちのグループは、國立の話題で持ち切りだった。
「ねぇ亜希、どうして國立くんに声をかけたの? 何か理由あるの?」
神田は改めて中野に聞いた。
「……うーん、特にこれっていう理由はないよ。ただ、國立くんがこの前うちのバイト先に来てたんだ。それで見かけたことがあって、いつか話したいなと思ってたからつい声かけちゃって」
「へぇー。バイト先って、あのカフェのこと?」
「うん! この前たまたま見かけて、そのとき声をかけようと思ってたんだけど、忙しくて話せなくてね」
中野のバイト先は、國立がよく行くカフェだった。
「……しかし、亜希って本当に突拍子もないことするよな。俺らに声をかけてきたときもそんな感じだったし」
市ヶ谷は学食のラーメンを食べながら会話に入っる。神田も市ヶ谷の意見にうなずきながら、
「そうそう。天真爛漫っていうか、無邪気っていうか天然っていうかね。でもまあ、亜希のおかげでこうしてみんな仲良くなれたってのもあるけど」
と笑顔で中野に話した。
「えー、私天然じゃないよ! 結構しっかりしてるんだから。でも、いきなり声かけるのはもうやめようかな。皆もびっくりしちゃうよね」
「それだけはそうかもな。そのペースで声かけていったら、勘違いする奴もいつか現れるかもしれないし」
「……勘違い? どんな?」
中野は市ヶ谷の顔を覗き込むようにして質問をする。
「ど、どんなって……。と、とにかく、色々なトラブルに巻き込まる可能性もあるわけだから、き、気をつけろってこと」
「……ふーん。まあ冬真が言うならそうするよ。心配してくれてありがとうね」
中野が笑顔でそう話すと、市ヶ谷は少し顔を赤らめてていた。
▶To be continued
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