30日間の革命 #毎日小説4日目
坂本と加賀は、昼休みに屋上へと向かった。
通常、屋上は一部のスペースしか開放されていないが、坂本は特別な場所を知っていた。通常の学生では入ることのできない、もしくは存在すら知らないであろう屋上のベンチである。
屋上のベンチへは、開放スペースからさらに一つ上の階へ上がらなければならない。もちろんその階段の前には施錠された扉があり常に閉まっている。一般学生には入ることも出来なければ、中に階段があることも知る由もない。そんな場所をどうやって坂本が知ったのか、そして、なぜ扉の鍵を持っているのか、加賀は坂本の後を追いながら、不安の半面、少しワクワクしていた。
「ここが屋上のベンチだよ」
「へー。こんな場所あったんだ。てか、なんでこんなところ知ってるの?」
「みんな知らないの?」
「知るわけないじゃん!あと、なんで鍵なんか持ってるんだよ?」
「みんなが知ろうとしないだけだよ。当たり前の日常を当たり前のように過ごしていると、見逃していることも案外多いんだよ」
「だからって、なんで鍵持ってるんだよ?」
坂本はいつも通り、ニコッと笑みを浮かべ答えをはぐらかした。
「加賀君さ、あと1年で私たちはこの学校を卒業するけど、どう感じてる?」
「え?まだ3年になったばっかだから、卒業なんて考えてないよ」
坂本の質問には、いつも翻弄される。そして、いつもその質問にうまく答えられず、悔しかった。
「そっか。だったらさ、少しだけ私のことを話してもいい?」
いつも質問ばかりされる加賀にとって、ふいに、そして初めて坂本から自分のことを話すという提案をうけ動揺した。
「いいよ」
出てきた言葉はそれだけだった。
「私ね、卒業までにやりたいことがあるんだ」
「やりたいこと?」
「そう、やりたいこと!まだ誰にも話したことがないけど、この学校に入学してからずーっと考えてたことなんだ。それをどうしてもやりたくてやりたくて、たまに夜も眠れなくなっちゃうんだよね」
いつになく、無邪気に話す坂本に、加賀は初めて人間を感じることができた。
「なんか意外だな。坂本さんってロボットみたいに真面目に勉強して、真面目に学校生活を送りたい人なんだと思ってたよ」
「やっぱりロボットみたいって思ってたんじゃない!」
二人は少しはしゃぎながら、笑って会話を進めた。こんな自然のやり取りを坂本と出来ると思っていなかった加賀は、坂本のやりたいことに興味を持った。
「ごめんごめん。でさ、そのどうしてもやりたいことって何なの?」
坂本は、ほんの少し間をおいて、そして少しだけ鼻で息を吸い込んでから答えた。その一瞬の間が、今までの空気を一変させることを加賀は感じとった。
「私ね、この学校で”革命”を起こしたいのーー」
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