不定期連載小説『YOU&I』6話

結局その日、國立の頭の中は中野のことで一杯だった。

なぜ突然声をかけてきたのか、いつからあのカフェでバイトをしていたのかなど、疑問がどんどん頭に思い浮かぶ。

そして翌日、國立にとっては珍しく寝不足の状態で学校へと登校した。午前の授業を終えた國立は、昼食を買うためにコンビニへと向かう。

(寝不足だから目が覚めるように炭酸でも買うか)

そうして炭酸飲料を棚から取り出そうとしたとき、たまたま横にいた人とタイミングが重なってしまう。

「あ、すいません。どうぞお先に」

國立はそう言って相手の顔を見ると、そこにいたのはまたも見た顔の人物だった。

「あ、どうも……って、あれ? 國立くんだっけ?」

そう言ってきたのは市ヶ谷だった。昨日の授業で中野のグループにいたあのイケメンである。自分と対称的な市ヶ谷を見て、どうも苦手だと感じていた國立。

(何で昨日からあのグループの人たちとこんな頻繁に出くわすんだよ)

心の中でそう思ったが、昨日の授業をもう出ないことを言える機会だと思い、話しかけることにした。

「あ、あのさ、ちょっといいかな」

「うん? いいよ。あ、お昼まだ? せっかくなら一緒に食わない?」

市ヶ谷は爽やかな笑顔で國立を誘う。

「え? それって、昨日のみんなも一緒にってこと?」

「いや、昨日のみんなは別の授業とってるからさ、今一人なんだわ。ちょうど寂しいなーって思ってたから、一緒に食べようぜ」

「そ、そっか。それならそうしよっか」

國立はほっと胸を撫でおろす。今日は中野とは会いたくなかったので、市ヶ谷と二人ということに安心をした。そうして二人はコンビニで昼食を買い、校内のベンチに座る。

(……いざ話すってなったら、結構気まずいな)

これまで人とあまり関わって来なかった國立は、例え男性であれ二人きりで話すことにも慣れていない。ただただコンビニで買ったパンをかじることしか國立は出来ずにいた。

すると、

「昨日は急にごめんな。いきなりグループに入れられて気まずかったよね」

と市ヶ谷から話を振ってきたのだ。

「い、いやいや、全然大丈夫。こっちも何か気まずくさせちゃってごめん」

「ほんとに突拍子もないことするよな。てかさ、あの授業の課題結構めんどくない?」

「そうだね。グループの課題はちょっとめんどいかも……」

「だよね? あの教授の話し方もなーんか嫌なんだよなぁ」

「あ、それわかるかも。何かちょっと鼻につくような言い方するよね」

「そうそう! やっぱりそうだよなぁ」

市ヶ谷と國立はそのまましばらく話を続けた。時折冗談なども言いながら、とにかく楽しい時間が過ぎていく。

國立にとって、ほぼ初対面の人とこんなにも長く、そして楽しく話したのは生まれて初めてのこと。それも苦手意識を持っていた市ヶ谷と、こんなにも楽しく話せるとは思ってもみなかった。

「今度さ、帰りにどっか飯でも食いに行こうよ。俺けっこうこの辺の上手い店知ってるんだ」

「本当に? うん、行きたいかも。……あ、それって昨日の皆と一緒にってことかな?」

「うん? ああ、別にそれでもいいけど、二人でどうかなって思ってた」

「そうしよう! 俺も二人の方がいいよ」

國立が食い気味にそう答えると、市ヶ谷は笑いながら

「國立くんってさ、あれだよね。もしかしたら人見知り?」

と質問をした。

「……人見知りっていうか、あんまり人と関わることに慣れてないっていうか、得意じゃないって感じかな」

「そっかぁ。今日話した感じ、全然そんなことなかったけどな」

「市ヶ谷くんだからだよ。俺もこんなに話せるとは思ってもなかった」

「何かそうやってストレートに言われると照れるけどな。ま、これからもよろしくってことで、もうすぐ次の授業だからそろそろ行こっか。あ、そういえば俺に話があるんだっけ?」

「……い、いや。特に大したことじゃないから大丈夫だよ」

國立は授業のことは話さなかった。市ヶ谷と少し仲良くなることが出来たので、少しでもつながりを持ちたいと思ったからだ。他のメンバーがいるのは少し不安に感じたが、國立は来週からもあの授業に出席することに決めた。

▶To be continued

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