30日間の革命 #毎日小説18日目
「単純にさ、革命軍とかどうかな?」
「軍じゃないわよ。それに何かその名前、漫画で聞いたことあるよ」
「そうだっけ? うーん。なんかカッコいいのがいいよね」
「もちろんカッコよさも必要だけど、自分たちにピッタリくる感覚も大事だよ。カッコつけすぎて、名前負けしちゃってもダメだし」
「じゃあ、主要メンバーの頭文字をとって、SKMか、KSYとか」
「アイドルグループじゃないんだから。もうちょっと真面目に考えてよ」
二人は頭を悩ませていた。
「名前って、凄く大切だと思うの。この名前次第で、私たちの本気度も伝わると思うし、この革命の成否にもか関わってくると思う。覚えやすくて、私たちを表わす最適な名前がきっとあるはずよ」
いつになく真剣な表情の坂本を見て、加賀は少し気を引き締めた。それから、午後の授業が始まる直前まで二人で考えたが、納得するものは思いつかなかった。
「急いで決めるものでもないから、今度森下君も含めてもう一度しっかり考えよう。もしかしたら、その時には最後のメンバーも加わってるかもしれないしね」
「そうだな。なるべくその時に間に合うように、スカウトしてくるよ」
そうして二人は午後の授業へと向かった。放課後は、各自で動くことが多くなった。坂本は第二視聴覚室で計画を練っており、加賀はメンバーを集めるため聞き込みを行い、森下は部活に参加している。そして、加賀はいつしか手崎と図書室で将棋を指すことが日課になっていた。
「なんでさ、俺がここに駒を動かすって読めるの?」
「そうなるように誘導しているからですよ。先輩は結構単純なので、誘導しやすいですよ」
(相変わらずズバッと言うね、この子は)
加賀はあれから一度も手崎に勝つことが出来ずにいた。むしろ、勝負にならないほど、圧倒的大差をつけて負かされていた。
「将棋ってさ、考えること多すぎるよね」
「はい。将棋には数えきれないほどの指し手がありますから。その組み合わせのパターンは宇宙の原子の総数よりも多いって言われているほどです」
「宇宙よりもねぇ。そんな広大なことが、この小さな盤で行われてるって考えると、何か感慨深いよね」
「まあ先輩の指し手は、せいぜいこの図書室くらいの広さですけどね」
「そりゃどうもすいませんね」
相変わらず手崎の口ぶりには苦戦していたが、それでも彼女の思考の深さや、徹底された戦略など目を見張るものがあった。
「なら、今日はこの辺で失礼するよ。ちょっとこの後用事があってね」
「わかりました。それではまた良かったら遊びにきてください」
そうして図書室を後にすると、神原のいる情報処理部の部室へと向かった。先日、神原と話すことが出来なかったので、部活が休みの日を狙って神原に会いに行った。加賀は神原と話したことはなかったので、今日が初めての接触となる。
「すいませーん。神原君います?」
部室のドアをノックし、中へ呼びかけた。
すると、ドアが半分だけ開き、中から神原が顔をのぞかせた。
「はい。神原ですけど。何か用ですか?」
「いやあ、ちょっとパソコンについて聞きたくてさ、良かったら今ちょっとだけ時間ある?」
「……ていうか、まず君は誰ですか?」
「ああ、急にごめん。1組の加賀だよ。友達から、神原君がパソコンに凄い詳しいって聞いたからさ」
「……友達って誰ですか?」
「え? えーと、誰ってわけでもないけど、ほら何というか風の噂でね」
「……噂? どんな噂ですか?」
「いやだから、神原君がパソコンに詳しいって」
「……そりゃ情報処理部ですからね。パソコンの知識は多少ありますよ。でも、それだけでわざわざ部室まで来ますか? そんな重大なことなんですか?」
(コイツ、かなり疑り深いな。そして少しめんどくさい)
いまだ、ドアから顔だけをのぞかせて話す神原に、加賀はそう思った。
「いや、そんな重大なことではないけど。ま、まあ急ぎじゃないから、また出直すよ。忙しいところごめんね」
「……いや、忙しくないですよ。今日は部活も休みですし、話しくらいなら聞きますから、どうぞお入りください」
立ち去ろうとする加賀を止めて、神原はようやく部室から全身を表わした。
「そ、そう。ありがとう。なら少しだけお邪魔するよ」
こうして加賀は情報処理部の部室へと入っていったーー
▼30日間の革命 1日目~15日目
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takuma.o
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