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【感想】落下の解剖学

2023年 フランス
監督 ジュスティーヌ・トリエ
出演 サンドラ・ヒュラー
   スワン・アルロー
   ミロ・マシャド・グラネール

あらすじ

これは事故か、自殺か、殺人かー。

人里離れた雪山の山荘で、男が転落死した。
はじめは事故と思われたが、
次第にベストセラー作家である
妻サンドラに殺人容疑が向けられる。
現場に居合わせたのは、
視覚障がいのある11歳の息子だけ。
証人や検事により、
夫婦の秘密や嘘が暴露され、
登場人物の数だけ<真実>が現れるが──。

公式サイトより

感想
フランス映画+法廷ものといえば、前に視聴した『私は確信する』がかなりツボだったので、大いなる希望と共に、私は劇場へと足を運んだ。なんか最近このパターンで失敗してばかりなのだが、もうそろそろ満足させてくれる映画が登場してもいいんではなかろうか。

ちな、『私は確信する』の感想↓


結果としては、うーんなんじゃこりゃ? ってのが正直なところさんです。真実が二転三転するミステリーを見に来たのに、中身はそんなもんそっちのけで人間のいやーな部分をこねくり回す暗いドラマが詰まっていました。

上にあげた『私は確信する』とはびっくりするくらい対極的な作品になっていて、あっちは実話ベースなのに謎解きがメインになっているのに対し、こちらはフィクションなのにドラマ部分がメインになっている。普通逆じゃね?

もうネタバレになっちゃうんですけど、この映画内で夫がなぜ死んだのかについて真相が明かされることはありません。夫婦喧嘩がエスカレートして殺されたのか、患っていたうつ病によって自殺したのか、断熱材を貼り替えようとして転落したのか。裁判官が判決を下したのと同じく、私たち視聴者もどれが真実なのか選ばないといけない。

悪くいってしまえば、これって『あとは皆さんのご想像にお任せします』パターンなわけです。大部分の日本人が嫌いなやつ。ある程度考察できる余地があれば受け入れられやすいと思うんですけど、今作にはそれがない。はい、真実を3つ用意したので好きなの選んでね、って感じ。これは日本ではヒットしないなーと感じました。

あえて主人公へと感情移入させない作りになっているのも日本向けではないポイントとして挙げられます。最初は冤罪に巻き込まれ系の可哀想な主人公かと思えば、浮気を繰り返してたり、夫を見下してたりするところが、どんどん法廷で暴かれていく。人間ドラマが主体のはずなのに主人公から心が離れていくので、なんか必死にセリフを喋っていても上滑りしていくような印象を受けてしまいます。

狙ってやってることは分かるんだけど、それが面白いかと言われれば、個人的にはあんまりでした。物語の構成上、主人公の口から本当に思っていることを吐露させることができないので、中途半端な立ち位置になり、結果として魅力が無くなってしまったように思います。

キャラクターで他に印象的なのは、やっぱりあのハゲた検事です。憎たらしいことこの上ない。ただ、やり手と思えるほど賢いことはしないので、こっちも面白みのない悪役だなぁと感じました。唯一好印象なのはやっぱり息子くんでしょうか。彼の苦悩と決意だけはかなりリアリティがあり、この映画の評価ほとんどを支えている気がします。

あとは映像面。何というか独特な視点からの映像が多かったなぁと感じました。普通はこっち撮るのにそっちズームするの?とか、何でここで手ブレが酷い一人称視点なの?とか。斬新ではあるんですが、すみません、素人にはちぃとばかし難しいです。

はいまとめます。法廷劇=ミステリーという概念をぶち壊した作品。客観的に人間関係を見て楽しめる人には、まぁ、おもしろいのかなぁ、な映画でした。

以上、久しぶりに長時間の映画。お疲れ様でした。

視聴:劇場

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