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セキララ!精神科☆滝山さん篇

これまた私が最初に配属された部屋には保護室という分厚い扉の部屋がありました。
他人に対しての暴力や自傷行為などが目立って保護室に入る必要があると医者が判断した場合はこの保護室に入れます。
保護室内部は正直監獄のようでトイレも内部にあります。
その人の症状に応じてですが、ベッドも危険物になってしまうので入れられない場合があります。

私が配属された時すでに保護室にいた方がいました。

この人を滝山さん(仮名)とします。
この滝山さんは薬の調節が上手くいかないようで、状態が悪くなったり良くなったりを繰り返していたらしいのです。

私が配属された時はちょうど悪い時だったのでしょう。
うなずいたり反応はするけどあまり話は聞いていないというかわかっていないみたいで話しかけても全然違う返答が来たりしてました。

その後滝山さんは少しずつ意思疎通が取れるようになってきて保護室のお昼開放が始まりました。
お昼ご飯の少し前から一人スタッフがついて見守りをして徐々に集団生活に慣れようという作戦でした。

最初はお昼だけだったのが12時〜14時など時間が伸びてスタッフみんなで
「滝山さん頑張ってるね!」
「いい感じだよね!」
と話していたのですが、ある日突然行動がおかしくなり始めてその後、前の意思疎通の取れない滝山さんに戻ってしまいました。

意思疎通の取れていた頃の滝山さんは優しくて
「テーブル拭いていいですか?」
と仕事を手伝ってくれようとしたり気を遣ってくれる人でした。

それが状態が悪くなると
「ぁ絵hフォdk?」
と宇宙人のようで全く何を言っているのかわからなくなり、目も滝山さんの優しい目から大きく見開いて黒目がギラギラして今にも飛びかかってきそうな目に変わってしまいました。

滝山さんはあっという間に落ちていき自力でトイレに行けないほどになってしまいました。
おむつ交換も声掛けをしても

「キャアアアア!!他lこ$%mjしゅ!!」


と発狂して抵抗をするので複数人でおむつ交換を終わらせた後、ちょうど担当の先生が入ってきました。
先生は本人の様子を見て近くにいた資格者に最近の状態を聞いていました。

滝山さんはこんな状態だから先生のことも忘れてしまったんだろうか、と思っていると滝山さんは立ち上がり先生に向き直りました。

何もわかってないから攻撃に出る可能性もあると思い、私が隣で少し身構えていると……
滝山さんは先生の顔を指さして

「あ、ポンタだ。」

と言ったのです。

笑いを堪えていましたが少し吹き出してしまいました。
周りにいた他のスタッフ達も必死で笑いを堪えます。
確かにその先生は目が垂れ目で、ほっぺも垂れていてまさに「ポンタ」というあだ名がピッタリな顔をしていたのです。

クリアに戻ったのかと半笑いで
「滝山さん、こっちで座りましょうね!」
と言った時はやはり疎通は取れず、男性の先生なので気になるのか何度も先生のことを指さして何かいっていましたが、聞き取れるものではありませんでした。


その後私は移動になり違う病棟に行きました。
それからも何回か異動があって何年も過ぎました。
すると私のいる病棟に滝山さんが異動してくると聞きました。
その病棟は自立度の高い人が多いのでアップダウンの激しい滝山さんがきて大丈夫か?と思ったいたら、数年後に会った滝山さんは状態が良かった時よりもっとしっかりした人になっていました。

「滝山さん、私のこと覚えてますか?」
と聞いたら
「ああ〜、前〇〇病棟で一緒だった…。ごめんなさい、名前は忘れちゃった。」
と言われ
「曇月です。」
というと
「ああ!そうだそうだ!曇月さんだ!」
と言って普通に楽しい会話ができていました。

本人のメンタルもあるけど、ようやく合う薬も見つけられたんだなぁと安心しました。

相変わらず「テーブル拭きますよ!」と気を使ってくれる優しい滝山さんは大好きです。
当時何もわからず、まともに話せなかった滝山さんから出たあの「あ、ポンタだ。」はまさに奇跡です。

ちなみにこの出来事後少しの間、スタッフたちの間でこの先生のあだ名はポンタになりました。

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