『持続可能な魂の利用』を読み終えた。

昨日『持続可能な魂の利用』という松田青子さんの本を読み終えた。

これまでに私が考えていたこと感じていたことがうまく言語化されていて非常に面白い本だった。

また私の想像を超えるものも多く、作者にはそのような見え方をしているのかと勉強になった。

日本では古くから男性が強い立場にあり女性が弱い立場にあるということが当たり前とされてきた。

しかし現在では女性の社会進出も進んできてそうだし、結構差別は減ってきているんじゃないか。と思うこともある。

私は男で女性の立場じゃないからそう思うんだという人も沢山いるだろう。

確かにそれはその通りだと思うし、今回『持続可能な魂の利用』を読んで、今現在の日本社会の女性の生きにくさや男からのイメージの押し付けや差別について感じたことがある。

アイドルから見える日本社会

私はなんでアイドルをしたいと思う人がいるのだろうと何度か思ったことがある。

これはアイドルを批判しているわけではなくて、アイドルに対する周りの見方が関係している。

キラキラした世界の裏側で性的搾取が行われていると感じる。

短いスカートをはいて踊ったり、水着を着て踊ったり、時にはグラビアアイドルのような写真集を出したり、それでいて控えめで弱い女性を演じないといけない。

「もうなんでいきなりそんなのにはまってるの。お姉ちゃん、知らないの。日本のアイドル文化は、ロリコン文化だって、性的搾取だって、海外じゃ評判悪いよ」

『持続可能な魂の利用』

アイドルのそのような側面を見てしまうとアイドルは危険は職業のように見えてしまい、なぜアイドルをしたいと思うのだろうという思考になる。

しかし、問題があるのはアイドルではなくその周りであるという事に目を向けないといけない。

性の対象

小学生の頃、敬子が一人でとんぼを捕まえていると、見知らぬ若い男が近づいてきて、向こうにもっととんぼがたくさんいるから、一緒に行こうと声をかけてきた。「おじさん」は、高校生か大学生ぐらいに見えた。もしかすると中学生だった可能性もある。
淡々と、当たり前のように敬子を見つめてくる相手の眼差しに体が動かなくなり、なんとか首を横に振ると、そう?と「おじさん」はまた何事もなかったように去っていった。
敬子は「おじさん」がいなくなったので安堵し、もしついていっていたらどんな目に遭っていたかまでは意識が及ばず、とんぼはどうなっただろうとすぐに気持ちを切り替えた。
声をかけられたことで手元が狂ったらしく、敬子が下ろした網はとんぼの柔らかいしましまの下半身をちょうど半分あたりで貫いており、網をあげると、かたい葉っぱの上には上下二つに切断されたとんぼの姿があった。敬子はようやく悲鳴を上げた。
中学生の下校時、いつも通り裏門から出て、短い横断歩道を渡ると、其処にはシャツにチノパン姿の「おじさん」が立っていた。今思い返してみると三十代くらいだったのかもしれない。
首からカメラを提げている「おじさん」は、通り過ぎようとしている敬子の行く手を遮るように横から出てくると、写真を撮らせて欲しいと請うた。
再び、なんとか首を振って敬子が断ると、「おじさん」は静かに持ち場に戻った。また裏門から女子生徒が出てくるのを待ち構えるために。
数年前、素人カメラマンが講演や様々な場所で声をかけて被写体にした少女たちの写真を展示する『声かけ展覧会』が開催され、SNS上で問題視されてはじめて、かつての自分と同じように声をかけられた少女が無数にいるのだと敬子は知った。少女時代の自分の写真が、今になって無断で展示されていることを知らない女性も沢山いるはずだった。
こういった「おじさん」による被害に、思えば、敬子は、日本の女性たちは幼い頃から対峙してきた。
自分たちをなめるように見る視線、あわよくば何かできるのではないかと近づいてくる大きな体、突如として発せられるグロテスクな言葉、そしてそのすぐ延長線上にある痴漢や盗撮といった犯罪。犯罪であるはずなのに、十分な対策が取られないまま何十年も経った。

『持続可能な魂の利用』


「URLIFESTYLE COLLEGE」という吉岡里穂さんのラジオ番組で吉岡里穂さんが

「なんで日本って肌の露出が多い服を着るとえろいとかそんな目で見られるんですかねー。ファッションなのに」

と言っていた。

本文にも吉岡里穂さんの言葉にもあるように女性は日常の中で性的にみられている瞬間があるのだと思う。

それは私にも思い当たる節がある。

常日頃、女性は男性からどれだけのストレスにさらされているのだろうか。

脅威から逃れるために

この前仲のいい女の子とカラオケの話をした。

「最近カラオケ行ってないしめっちゃ行きたいねんなー」

「カラオケっていいよな」

「一人カラオケ行こかな」

「私も一人カラオケ行ってみたい。けど行ったらあかんって言われてるねん」

「なんでなん」

「危ないって言われる。私友達と行くときも二人やったらトイレ行くときとかケータイ持って行ってやって言うし」

女性はそんな身近なところにも危険があるのだと知り驚いた。

考えてみればわかるけれどこのような悩みは女性じゃないとないと思う。

歩はいつも小さなピンク色のスタンガンを持ち歩いていた。
エレベーターホールでバッグから転げ落ちたそれは、運悪く隣のチームの吉田に拾われた。その場ではすぐに返してくれたくせに、吉田はオフィスに入り、歩が席についたと見ると、茶化しにきた。
「ローターかと思って、びっくりしてさあ」
わざと大きな声で輪を広げようと周囲を見回すようにして話す、同じ島の数人が、どっと笑い声を上げ、見せろ見せてと歩に手を伸ばした。
「いやもう、叔父さんには刺激が強いですわ」
吉田がにやにやしている。
仕方なく、バッグの奥底に片づけたばかりのピンクの物体を一番近くにあった手のひらにぽんと置くと、歩は渋々お遊びに付き合った。
「だって、いろいろ物騒な世の中じゃないですかぁ。駅からアパートまで離れてるし、住宅街に該当も少ないあら心配なんですよね~」
いつもより高いトーンで言うと、
「わかるわかる」
「わかるけどさすがにスタンガンはやばいでしょ」
というわいわいした声に混じって、
「女ってこえーな」
「自意識過剰だろ」
と半笑いの男たちの声が離れたところから聞こえてきて、歩は内心ムッとした。
どんだけテンプレの反応だよ。私は真剣なのに。
こわい思いをしたいくつかの記憶が蘇った。

『持続可能な魂の利用』

女性にとっておじさんは脅威であって、そのことに気づいていないおじさんが滑稽に思えた。

なぜかわからないが「女は怖い」と言う男がいるけれど、女からすれば男の方がよっぽど怖いんじゃないかな。

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