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イヴ 16歳の夏     ~スピリチュアル~


毎年夏休みになると、電車とハイウェイバスを乗り継いで、ひとりで祖父母の家に遊びに行っていた。

もう祖父も祖母もいなかったけれど、
従兄姉たちに会いに行っていたのだ。


高校生になって初めての夏、
いつものようにハイウェイバスに乗っていた。

私はなぜか、高速道路が好きだった。

日常を離れ、遠くに行ける気がするからか。

それを言うなら飛行機でしょ?と思うのだが、私にとってそれはたぶん、現実味がなかったからかもしれない。


幼い頃、祖父母に預けられていた頃の…
遠くに聞こえる高速道路を走る車の音を、子守唄代わりに聞いていた記憶。

私にとって特別だった日々…。



バスはたまに、驚くほど混雑していることもあるけれど、今日は乗客もまばらだ。

空いていれば、必ずお気に入りの席に座ることに決めている。

左側の…後ろから二番目の窓側の席

高速の防音壁の切れ目から、時折のぞく景色を見るとわくわくする。

酔いやすい車内で本を読むことはしないので、バス停に止まるたびに、乗り降りする人たちをただぼんやりと見ていた。

たまに興味を引かれる人がいると、この人は仕事だろうかとか、今から誰に会いに行くのだろうかとか、想像することはあったけれど。


あるバス停に止まった時、窓の外に大勢の男女がいて驚いた。

大学生だろうか?
こんなに一度に乗ってくるのは珍しい。

そんなことを考えながら眺めていたら、私は不意に、その中のひとりの男性から目が離せなくなってしまった。

と言うよりも、その人から出ている…金色なのか銀色なのか何とも形容し難い…びかびかしたオーラで、周りの人が見えなくなってしまっていたのだ。

見たことのない、神々しいとさえ言える光景だった。


あ、目があった!


一瞬意識が飛んだ気がした。


次に覚えているのは、彼が私の席まで来ていて、「となり、いいですか?」と聞いてきたこと。

私は「はい…。」と答えるのが精一杯だった。

涼しげなホワイトのシャツに、ブルージーンズの着こなしが、シンプルでかっこ良かった。
スポーツバッグを棚に上げると、隣に座った。


単なる一目惚れとは、違っていたと思う。

あんなに大勢いたのに、乗ってきたのが彼だけだったというのも、不思議な話だ。

他の人たちは、見送りに来ていただけなのか。


彼は私に「高校生?」と聞いた。

なぜだろう? その声が、さわさわと心を揺さぶる。

私が「高校一年生です。」と答えたら、
「なんだ、一年生か…。」と、少し困ったような声が返ってきた。

私はいつも、年齢より少し上に見られていた。

一年生だったから、がっかりされたのか。

なぜか申し訳ない気がしてきて、そしてずっとドキドキもしていたので、話しかけてくれていたのに、何を話したのか全く覚えていない。

気まずくなったのか、そのうち彼はヘッドフォンをつけて音楽を聴き始めた。


腕が触れそうで、触れなくて…
私は全神経を、右腕に集中させることになってしまった。

とても居心地のいいような、くすぐったいような…とにかく幸せな空間だった。


途中、サービスエリアに止まった。

休憩は七分ほどしかないから、私はめったに降りることはない。

彼が私に「降りる?」と聞いてくれたけれど、私は「いいえ。」と首を横に振った。

後ろ姿を見送った時、一緒に降りれば良かったかなとちょっと後悔して、なんだか急に寂しくなった。

初めて会った人なのに、その全てが懐かしいような気がして、置いて行かないでという思いが沸き上がり…なぜか、うるっときたのだ。

そのあと、彼が戻ってくるのを今か今かと待ちわびている自分に、クスッと笑ってしまった。

少しだけ余裕が出てきたかな。

これなら、話ができそうだ。


席に戻ってきた彼が「はい!」とジュースを渡してくれた。

思いがけない行動に、「あ…ありがとうございます!」と言ったきり、やっぱり恥ずかしくなって、しばらくジュースを膝の上で握りしめていた。

彼が「オレンジ嫌いだった?」と聞いてきた。

「いえ。好きです!」と言うと

彼は更に優しい声で「お飲み…。」と言った。


そもそも彼の話し方には、育ちの良さがにじみ出ていた。

でも、「お飲み」だなんて、子供扱いされている気がして。

その時感じた気後れが、ほんの少しの勇気をも私から奪っていった。

彼が戻ってきたら、今度こそ話をしようと決めていたのに。

そして、彼はまた音楽を聴き始めた。


名前も聞けなかった後悔を抱えたまま、私が先にバスを降りたので、その後彼がどこまで行ったのかはわからない。

土地勘もなかったため、乗車してきたバス停すら全く覚えていなかった。

それでも、私はその日から、いつか彼が迎えに来てくれると、深く深く信じることになったのである。


だから、結婚が決まるまでは、私は心のどこかでずっと一途に待ち続けていた。

それなりに、恋愛はしてきたけれど。

結婚相手は彼しか考えられない!と思っていたのだ。モラハラオットにつかまるまでは。


結婚してからも、たまに思い出すことはあった。

あの人は、今どこにいるのだろう。

結婚して、きっと素敵なパパになっているに違いない、と。


どこかの夜景を見るたびに、あの灯りのどれかに、彼の暮らしがあるかもしれないと思うと、きゅっと胸が熱くなり、同時に切なくなったりもした。

まるでジブリ映画の…「天空の城ラピュタ」の主題歌のようだ。

「君をのせて」は、ツインソウルの歌だと言われている。

わかる、わかるよ! その気持ち。



今から三年ぐらい前に、友人に誘われて、過去世リーディングをしてもらったことがある。

私は元々、生まれ変わりを信じているから。

やはり、彼とは前世にも出逢っていた❗

ヨーロッパのどこかで。

結婚の約束をした、恋人同士だったらしい。

でも、彼が戦争に行ってしまい、二度と戻らなかったのだと。

だから、お互いに

「来世で、もう一度会いたい!」

と強く願っていたらしい。

その時ようやく、全てが腑に落ちた気がした。


あの時の不思議な感覚はそれだったのね。

そして、サービスエリアで、彼の後ろ姿を見送りながら心がざわついたのは、前世で彼を戦争に送り出していたからなのか。

でも彼の魂は、今世あのハイウェイバスの中で私と会話をしたことで、納得したのだと言われた。

と、言うことは…

あの時の出来事は、新たな出逢いではなく、時を越えた再会だったということか⁉️


私はずっと、運命の出逢いだと信じて、
またいつか逢える日を心待ちにしていたのに。

更には、彼は納得済みですと…?



それにしても、出逢うのが早すぎた…。

20代で出逢う約束をしていたら…。

年齢差を気にすることなく、今世こそ一緒にいられたかもしれないのに。



こんにちは!イヴです。         最後までお付き合いくださり嬉しいです♪ 今日は、モラハラオットの話をお休みして、 スピリチュアルな話をしてみました。   この話には、まだ少しだけ続きがあります。 そのうち書きます。拙い文章で恐縮ですが… これからもよろしくおねがいします!


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