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ヨーロッパ的なるもの:小話21 体温の話

【体温の話】
 フランス人と結婚している日本人女性が言いました「旦那はあったかい」。それはそれはごちそうさま。一緒にいた英国人と結婚している女性も「そうそう」。優しいヨーロッパ人男性に大満足の様子。
 
 ところがこれは心の話ではありませんでした。ボディー・テンパラチャー、即ち体温が違うと言うのです。初めの女性が繰り返します。「本当に触ると温かいのよ」
 
 ヨーロッパ人の平熱は大体37℃ぐらいです。英国の国民健康サービス(NHS)のサイトによると:
 ・平熱は37℃(耳、わきの下、額)
 ・37.8℃(38℃としていることも)以上だと熱がある
 となっています。

 英国の薬局で売っている耳で測るタイプの体温計の説明書には、38℃以上になると警告音とともにへの字マーク☹が現れ、37.9℃以下の場合は笑顔マーク☺が表示されるとあります。
 
 これはCOVIDで英国がロックダウンになったときも、繰り返しBBCで紹介されました。この体温以上なら解熱剤を飲め。但し医者に行ってはいけない(病院がパンクするから)。1週間しても治らなかったら、医者にコンタクトするべし。
 
 ヨーロッパ人男性は、ワイシャツの下に下着のシャツを着ず、直接ワイシャツを着ていることが多いと思います。それに総じて薄着です。体温が高いから、それで十分なのです。気温も、英国人なんかは20℃を超えると暑いと言う人がいます。日本人の多いオフィスで、年配の英国人女性秘書が、冬に直ぐに窓を開け放つので、日本人たちは閉口していました。ノルウェー人には、冬でも窓を開けて寝ると言う人さえいます。「フレッシュ・エアー」で健康によいのだとか。但し、これは南欧人は違うかもしれません。
 
 別にヨーロッパ人の体温が高かろうが関係ないーと言うわけではありません。困るのは熱が出て医者に行った時です。37.5℃ぐらいは、身体がだるくて辛いものです。しかし、ヨーロッパ人の医者は体温を見て「平熱、問題なし」となってしまいます。それが風邪ならなおさら。「ウイルスに効く薬はない、帰れ」と追い返されます。もっとも英国の都会ではGP(家庭医)の予約は1週間先ぐらいしかとれないので、風邪は自分で直すしかないのですが。
 
 それはともかく、真剣に診察してもらう必要がある時は、自分の平熱をきちんと説明する必要があります。多くの人種を診ていて柔軟な医者なら理解してくれるでしょう。もし頭の固い医者なら、「帰れ」。
 
 ということは、ヨーロッパ人は日本人と握手すると、口には出さなくても「手が冷たい」と感じている可能性があります。そこですかさず『「手が冷たい者は心が温かい」とハンガリーのことわざに言いますね』と笑顔を見せれば、その後の話は和やかに進むでしょう(たぶん)。
 
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