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第9話 不思議の扉と嵐の夜(後編)

これは、クウ星のとある街にある、少食さん向けの会員制隠れ家カフェのお話。
2月のある日。 夜になって予報には無かった突風が続き、マーチさんとカフェの常連のクウ星人たちは帰る事が出来ずにいます。
そんな中、カフェの入り口の扉が不気味に大きく揺れ出しました。
 
その音に全員が扉に視線を向けました。 ウヴ……ウヴ……と妙な唸り声も聞こえます。
そして、誰かが言葉を発しようとした時です。 扉が勢いよく開き、強い風がカフェにビュオっと入り込みました。
『わあぁ……!!』
全員が身構えた後、サッゴさんがその巨大な黒い影を認識し青ざめました。
「ま……そ、そんな……妖怪ビビビ、ビッグフット!!!」
「え?」
恐らくローミニさんがその言葉に反応しました。
巨大な黒い影はズシンズシンとカフェに入り込み、そこで止まりました。
「ぼっ僕たちの大事な場所は壊させなぁあーい!!」
その隙をついて、サッゴさんは恐怖をグッとこらえ、その巨大な陰に飛び出しました。
モ……だ……め……
しかし、その巨大な影は意識を失い、いまにも倒れこむ寸前。
それに気づかないサッゴさんは、そのままその巨大な影に押しつぶされる──かと思いきや間一髪、ローミニさんが火事場のバカぢからを発揮してサッゴさんを引き込んでなんとか難を逃れました。
 
ズシーン!! その巨体が倒れると、カフェが揺れ、食器たちもカシャカシャと音を鳴らしました。
ローミニさんとテテノさんがその巨体に急いで駆け寄ります。
「ラシュイさん!!」
尻もちをついていたサッゴさんはこの時、その巨体が大きなクゥ星人だと気づきました。
マーチさんは急いであの《不思議の扉》を開け、ラシュイさんの元に駆け寄りました。
その間にテテノさんがローミニさんと協力し、ラシュイさんをひっくり返し、手際よく指示します。
「あの部屋に運びますよ! ローミニさんとママさんはラシュイさんの両足を、私がこっちを支えるのでサッゴさんはラシュイさんの右上半身を担当で!」
サッゴさんは言われるがまま皆でラシュイさんをあの不思議の部屋へ運び入れました。
 
その部屋は途中から畳が敷かれ、少し高くなっていました。 カンポウ(漢方)や様々な薬草が混ざった匂いもします。 さらに見渡すと薬草類の他に、それらの本やスパイス、紅茶の本なんかも棚に置かれていました。
 
「う……ん…… 驚かせて、すまなかった……君が新しい会員の……」
マーチさんの薬草茶を飲んだ後、横になったラシュイさんはそのまま気を失いました。
 
皆の話によると、大きな体のラシュイさんですが、今は色々あって少食のクゥ星人なんだそうです。 取引先の人が食事会の度に彼にいっぱい食べさせようとするので、こうしてよく倒れてしまうんだとか。
(しかも、そこにさらに恋も絡んでいるとか……?)
 
「サッゴさんも食べ過ぎて苦しい時はこの部屋を使ってくださいね。 雑多な部屋ですけど……! あと、薬は出せませんが、ちょっとした薬草茶はお出し出来ますので、遠慮なく……!」
サッゴさんは返事を返しながらも、先ほどの自分の行動を思い出し、ちょっと恥ずかしくなったのでした。


当作品は架空の宇宙(星)のお話です。
登場するキャラクター・名称・店名・イベント等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
色んな感覚の方がいらっしゃるので、合わないなと思った方は閲覧を控えてください。

●作者コメント●
サッゴさん、勇気がありますね!
後編はちょっと少食要素がほぼありませんでしたが、新しい人物登場と言う事で……! でもこの先の活躍はイメージしきれておらず未知数です……汗
取引先が原因で……と言う部分だけだと今の時代、あまり良くないかなと思い、恋という要素を入れてみました。 けど、恋がどう絡んでいるのか、それはそれで面白い設定かもしれませんね。 先の事は分からないけど、少食がテーマなので、描くとしても、折に触れてふんわりと……かな?
それでは次回もご来店お待ちしております!

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