【第4話】コーヒーフェアにつられて1
ここは、クウ星のとある街にある、少食さん向けの会員制隠れ家カフェ。
季節は11月。 こちらの地域では寒い冬の足音が聞こえてくる時期です。
──ああ、頬を叩くこの冷たい空気、そしてこの便り(メール)を見たとなれば、自然と足がこのカフェを目指すというもの。 既にもうドアを開ける前から香りが漂ってくるようだ。
そしてカララン、コロン、とドアを開けると、その香りは精霊のように舞い、私を迎え入れてくれる──。
「いらっしゃいませ! あ! テテノさん!!」
テテノさんはニッコリ笑い奥の外の見えるテーブルに腰掛けました。
「またまたコーヒーフェアにつられて来てしまいましたよ。 私は単純なクーマ星人だ」
「いえいえ! 是非何度でもお越しください!」
「ああ、ありがとうママさん」
テテノさんはメガネをクイッとなおしました。
そしてカスタードプリンとBR2310-tブレンドと書かれたコーヒー(もちろん両方ミニサイズ)を注文しました。
「ご注文、ありがとうございます! 少々お待ちくださいませ! もし……待てなかったら、試供品の個包装ではありますが、今日もそこにご用意してますのでご自由にお試しくださいね。 もちろん今日も3パックまでお持ち帰りできます! 感想も良かったらお願いします!」
そうしてマーチさんは注文の準備に取り掛かっていきました。
──まぁ、いつだって最初の一杯はママさんの淹れたてを楽しむのがセオリーというもの。
目を閉じて、軽く背筋を伸ばし、耳を澄ます。
店内に小さく流れるBGM、そして外を走る風の音……
静かに待つこの時がとても良──
ガシャシャ!!
お皿の音でハッと目を開いたテテノさん。
「おや? 君は……」
「す、すみません!!」
カウンターに座っていたサッゴさんがコーヒーを置く時にふいに力が入ってしまったようでした。
「なんだか凄い品の良さそうな方が入ってきたもので、き、緊張しちゃいました!」
「私のことかね? そんな凄いクゥ人ではないよ。 動揺させてしまってすまないね」
「わ、私はサッゴと申します。 最近このカフェの会員になりまして、コーヒーも好きだったものでついつられて……といっても、違いも分からないレベルなんですけど」
テテノさんの目がきらっと輝きました。
「ほぅ、私もコーヒーが好きでね。 良いと思いますよ。 違いも大切かもしれないが、何よりそれを楽しんでる時間と空間こそが一番大切というもの。 と、私はテテノという者です。 どうぞよろしく」
挨拶を受けたサッゴさん、その柔らかな雰囲気にとても幸せなひと時を感じました。
「こちらこそ、よろしくお願いいたします!」
(続く)
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